そんな日々が続いた結果、どこまでも自分を愛してあげられなくなった状況が描かれています。
自分が自分であることに自信を持ちすぎていた主人公は、いつしか自分を恥だとすら感じるようになる。
想っていることを胸に秘めたまま、誰にも干渉せずに生きていくことは楽であるかもしれません。
しかし、主人公にとって、その姿は本来の自分自身では無いといっているのです。
己すらも騙してまで生きていかないと、何故息をしているのかが分からなくなる。
決して、幸せとは形容し難い状況が綴られている歌詞。
これは、過去の山中拓也、THE ORAL CIGARETTESの弱みだったのではないでしょうか。
一切隠すことなく、ありのままを歌にしているのです。
その姿は、明らかに前へと進んでいるたくましい背中を感じられます。
いつになれば変われる?
死すら過ぎる朝
朝目覚めて息を吸い込んだ
終わることを少し望んでた
仲間や恋人の話にも
笑って応えれたかな
出典: Slowly but surely I go on/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也,板井直樹
歌詞2行目には人生をこの手で終わらせようという感情を抱いていた心情が感じ取れます。
それほどに自分であることを拒んでいたのです。
周りからの評価すらも気にして、更に自分を繕って生きている姿が描かれている歌詞。
自分の傍にいてくれる人々を悲しませないように、という優しさ。
それがまた肥大して、自分自身を苦しめることになっているのではないでしょうか。
それでも呼吸は続いていて、今日もまた自分を生きていくのです。
号哭は鳴り止まない
あぁ 時に僕は他人を傷つけ
痛み嘆いてるのに
繰り返した 叫んでいた
出典: Slowly but surely I go on/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也,板井直樹
苦しみから解放されることは無く、矛先は自分の大切な人達にまでも向かってしまいます。
自分でも分かり得ない憂いの数々で、幾度と経験してきた悲しみの夜。
誰に話すことも出来ず、そして自分自身では解決することが出来ない、追い込まれた状況。
それでも心に蔓延るのは「何か成し遂げなくてはいけない」という焦燥感なのです。
だからこそ、自分が自分でないままに生きてしまい、空回りを繰り返す日々。
弱さが強さへと変わる
見つけたもの
どんな言葉の
奥を辿っても
Love is everything,I found
I always tried to seek a fault
出典: Slowly but surely I go on/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也,板井直樹
ここでは山中拓也の巧みな言葉遣いに注目です。
冒頭でも述べたアルバムの最終曲のタイトルが用いられている歌詞3行目。
自分の欠点を必死に粗探ししていた日々に光が差したのです。
周りから感じる愛情や自分を愛すること、それらこそが自分を形作る全てだといっているのです。
それに気づかせてくれたのは、過去の自分でもある。
盲目になって、自分の姿すらも見失っていた青年は、愛を受け入れて変化していったのです。
それは紛いも無く愛
結局僕は
愛を探していた
Slowly but surely I go on
こんな弱い僕を
許してほしい
出典: Slowly but surely I go on/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也,板井直樹
自身の嫌っていた部分を隠すことなく曝け出している歌詞。
そうすることが出来るのは、主人公自身も、自分の嫌いな部分を受け入れられたからでしょう。
ずっとわからなかった答えをようやく見つけることが出来たのです。
それは決して単純なものでは無く、数多の悲しみの夜を繰り返した先に見つけられるもの。
弱い自分を受け入れて、それが強さへと変わった青年は、今日も歌い続けていくのです。