2005年5月18日発表、ゆらゆら帝国の通算10作目のアルバムSweet Spot」。

このアルバムの白眉ともいえるのが楽曲タコ物語」です。

形容するのが難しい楽曲になっていてソニー時代のゆらゆら帝国がたどり着いた地点の高さがうかがえます。

かつてニューヨークにあったESPレーベルから出されていたサイケロックの雰囲気が漂う感じです。

しかしたとえばTHE GODZのようなバンドと書いてどれだけの人の理解を得られるでしょうか。

少なくとも日本語のロックでこの脱力感を伴うサウンドに到達したバンドゆらゆら帝国だけです。

ゆらゆら帝国のフォロワーはライブシーンにたくさん登場しました。

しかし彼らが手本とするゆらゆら帝国自体がひと足飛びでとんでもない音楽的挑戦を遂げます

結果、どのフォロワーもゆらゆら帝国には追いつけませんでした。

宇宙を探してもこんな音楽は唯一無二だといえそうです。

坂本慎太郎の生きものへの愛

ぼくは磯に住むタコだよ
君の背後にそっと近づいてポツリ
「ラヴ」君は逃げだね 君は敏感な二枚貝だなあ だけど
ぼくは君に恋してる ゆれるワカメを分けて近づいて ポツリ
「ラヴ」君に恋してる とても織細なぼくの吸盤で
君の真珠をなでてあげたい
うそ ほんとは 食べてみたい エイ
生き物さ
生き物さ
生き物さ
生き物さ

出典: タコ物語/作詞:坂本慎太郎 作曲:ゆらゆら帝国

「タコ物語」というタイトルでまさにタコが主人公という着想を捻らない辺りのセンスが最高です。

ここで歌われる愛についても高尚な哲学がどれほど潜んでいるのか不明でしょう。

サイケデリック・ロックというものには特に「定形」というものがありません。

思考を枠にはめ込むようなものそのものを排斥して知覚の扉を開こうとします。

とはいえタコの物語から何を学ぶべきなのか。

サイケデリック・ロックの始祖であるピンク・フロイドのシド・バレットにヒントが有るのかもしれません。

シド・バレットはソロ・アルバムを2枚発表しています。

彼の1枚目のアルバム「帽子が笑う 不気味に」に「タコに捧げる詩」という超名曲があるのです。

ふにゃふにゃな音楽で腰もなく地上では真っ直ぐ立てないような楽曲であります。

ゆらゆら帝国の「タコの物語」には祖先がきちんといるのだということだけは理解できるでしょう。

サイケデリック・ロックのマニアにとってシド・バレットは神のごとき存在です。

坂本慎太郎にしてもシド・バレットからの影響を受けています。

そうした背景があるにも関わらず、なおかつ謎が多いのが「タコ物語」の魅力です。

いずれにしてもアルバム「Sweet Spot」はゆらゆら帝国がリスナーの予想を大きく超えた作品でした。

7位 「発光体」

記念すべき最初のシングル

【ゆらゆら帝国】おすすめ人気曲ランキングTOP10!ゆら帝の世界に酔いしれる曲をファンが厳選して紹介の画像

1998年7月8日発表、ゆらゆら帝国の最初のシングル発光体」。

すでにアルバム「3×3×3」で発表されていましたがシングルとしてリカットされました。

レコード発売ライブなどでの大盛況ぶりが話題になっていた頃です。

上述のとおりにこの頃の彼らはアルバム「3×3×3」をそのままライブで再現します。

間に「グレープフルーツちょうだい」を特別に加えることがあるくらいでストイックなセットリストです。

しかしCD音源での素晴らしさはライブだとさらに勢いが増してゆく感じがしました。

特に「発光体」はこれぞガレージサイケという感じがして客席も盛り上がります。

ゆらゆら帝国のメンバーのアクションはオーバーではありません。

どちらかというと坂本慎太郎以外のメンバーのステージングは静謐ささえあります。

こうしたストイックさにかっこ悪いことはしないよというオーラが漂っていたのです。

それでもロックの醍醐味が全編にあふれていたのが当時のゆらゆら帝国でしょう。

「発光体」はこの当時を象徴する楽曲であり、最初のシングルに選ばれたのもうなずけます。

かけてゆくというアイディア

搾って ぼくの真っ赤な血を全部
飲み干して君はうっとりしたような目で
ゆるんだ頭ゆらしてる だけどリズムを倍の倍できざめ
バカだね

耳の中では光るちっちゃな粒が増え続けてゆく
凄い速さで倍が倍になって また倍になって また、、、、、

出典: 発光体/作詞:坂本慎太郎 作曲:ゆらゆら帝国

アルバム・タイトルの「3×3×3」にしてもそうですが倍にしてかけてゆくという発想が素敵です。

何を倍にするかというとリズムのテンポだといいます。

実際にはこのようにうまくはいきません。

「発光体」のテンポを倍にしてさらに倍にしてもっと倍にすると10秒程度で曲が終わるでしょう

もしくはスローテンポの曲のリズムを倍にしてという結果が「発光体」だとしたら原曲は超大作でしょう。

ゆらゆら帝国というか坂本慎太郎が書く歌詞はこのように整合性は端から期待できません。

それこそがサイケデリック・ロックの歌詞に相応しくて答えなどないのです。

ゆらゆら帝国の歌詞を解釈しようとすると具体的なものは何も指摘できません。

ただナンセンスな歌詞にもそれなりの理由があるということを仄めかすことしかできません。

象徴性や神秘性に訴えるところが多いのがサイケデリック・ロックの歌詞です。

神秘のベールはそのままにして鑑賞した方が美しいでしょう。

ただただこの歌詞のような曖昧さに熱中した日々を思い出させます。

6位 「夜行性の生き物3匹」

阿波おどりをロックにしました

【ゆらゆら帝国】おすすめ人気曲ランキングTOP10!ゆら帝の世界に酔いしれる曲をファンが厳選して紹介の画像

2003年2月26日発表、ゆらゆら帝国の通算8作目のアルバム「ゆらゆら帝国のしびれ」。

ゆらゆら帝国のめまい」と2枚同時リリースで話題になったアルバムです。

このアルバムに収録された「夜行性の生き物3匹」を6位に推します。

阿波おどりのリズムで演奏される楽曲ですがきちんとロックになっているのが流石です。

この2枚のアルバム辺りからゆらゆら帝国の歩みはさらにひと足飛びになります。

音楽性を極限まで変化させようとする強い意識がうかがえるのです。

ただしサイケデリック・ロックというものへのこだわりのようなものは一貫していました。

もともとサイケロックには「定形」などないことはすでに述べたとおりです。

ただ、アーティストの意識の中に何となくこういうのがサイケでしょみたいな固定観念が生まれます。

ゆらゆら帝国はこうした固定観念も含めて刷新してゆこうと願うのです。

道なき道をゆくというような開拓者の姿がゆらゆら帝国のイメージに相応しいでしょう。

「夜行性の生き物3匹」は阿波おどりとロックを融合させました。

無条件で飛び跳ねたくなる楽曲に仕上がったのです。

3人のメンバーは真夜中も一緒

交差点 繁華街 公園 だれかのアパート
夜行性の生き物がおよそ3匹
線路沿い 映画館 公衆電話のゴミ箱
夜行性の生き物がおよそ3匹
3分間の この曲が
最先端の 君の感性を
3分間で 錆びつかせる

出典: 夜行性の生き物3匹/作詞:坂本慎太郎 作曲:ゆらゆら帝国

タイトルの「夜行性の生き物3匹」のモチーフはゆらゆら帝国のメンバーでしょう。

3人一緒でいるイメージは非常に微笑ましいものです。

とはいえメンバーを闇夜に紛れた存在として描き出しています。

ゆらゆら帝国にはヘヴィ・ロック・バンドのイメージもありますので闇との親和性は高いものです。

街の至るところにこの3人がいるよというメッセージを込めています。

実際に街で出会うと非常に目立ちそうな3人です。

特にベース亀川千代は黒装束で闇夜に潜んでいるのですから道行く人を驚かせるでしょう。

この歌詞で大事な箇所はこの3人が紡ぐロックがあっという間に君の感性を置き去りにするよと歌うところ。

実際にこのアルバム「ゆらゆら帝国のしびれ」でも、その後のアルバムにしても圧倒的な創造力でした。

有言実行して音楽というものを豊かに変えたのですからカルト的な人気を誇るのは当たり前です。

5位 「おはようまだやろう」

醒めた質感と冴えた感性