「Merry Christmas Mr. Lawrence」とメッセージ

坂本龍一のカバー曲

Utada【Merry Christmas Mr. Lawrence】歌詞和訳解説!風刺的な歌詞?の画像

2009年3月14日発表、Utada名義での通算2作目のアルバムディス・イズ・ザ・ワン」。

このアルバムに収録された名曲Merry Christmas Mr. Lawrence」の歌詞和訳・解説したします。

タイトルでお分かりいただけるように坂本龍一の名曲が下敷きになっている曲です。

大島渚監督の映画戦場のメリークリスマス」の中でもいちばん有名な楽曲。

イントロのピアノの音ですぐに坂本龍一の曲だと思い浮かぶはずです。

宇多田ヒカルは制作集団スターゲイトに薦められてこの曲を採用しました。

元はインストゥルメンタルの楽曲ですが、彼女はそこに歌詞を乗せます。

宇多田ヒカルにしては珍しく政治的・社会的な風刺を加えました。

チベットに伝わるマントラも歌詞に採り入れます。

彼女がこの曲で伝えたかったことを探るのは中々難しいことです。

宇多田ヒカルの歌詞の中でも屈指の難しさがある歌詞になっています。

この曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」の歌詞を和訳して逐一解説をいたしましょう。

それでは実際の歌詞をご覧ください。

手紙で伝えた愛

あなたへ敬意を払いながら

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I give you my heart
Hold on, let me sign it
Your senorita a.k.a. your best friend
Hereby, let it be known
Love like never before
I'm always at your service
You just have to holla at me

出典: Merry Christmas Mr. Lawrence/作詞:Utada 作曲:Ryuichi Sakamoto

坂本龍一の「Merry Christmas Mr. Lawrence」がサンプリングされています。

歌い出しの歌詞です。

歌詞を和訳して解説いたします。

「あなたに私の心を捧げましょう

待ってね、署名もするから

『あなたのセニョリータ、またの名をあなたの最愛の友』

これによって知られますように

今までなかったような愛であることを

いつでも何なりと申し付けてください

必要ならば私を呼び立ててね」

登場するのは語り手の私と愛するあなたです。

ホテルのフロントでの会話を模したような内容になっています。

いつでもあなたを慕ってお仕えするというようなニュアンスが混じっているのです。

ただしどこか遊びや冗談に似た要素も感じます。

まだ歌は始まったばかりです。

ゆっくり事態の成り行きを見ましょう。

この歌詞は手紙の様式を踏襲しているのです。

そのために言葉としてはもう少し固い訳を当てはめてみてもいいでしょう。

親しき仲にも礼儀があるようなスタイルの文書です。

サンプリングされた「Merry Christmas Mr. Lawrence」。

映画「戦場のメリークリスマス」ではビートたけしがデビッド・ボウイに敬礼しながら発するセリフです。

宇多田ヒカルも相手への敬意をここに表現しています。

愛する人への敬意を示しながら書き綴られた文書。

このことは語り手の私とあなたが大人の恋愛関係であることに由来します。

大人の愛の表現がこの後にたくさん出てくるのです。

次の展開を見ていきましょう。

マントラの秘密

フリー・チベット運動への協賛

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NYC NYC what what
Tokyo Tokyo what what
Send it up from the streets to the highest
To the highest high
Mp3 mp3 players
Work it out, work it out hustlers
Om mani padme Hum

出典: Merry Christmas Mr. Lawrence/作詞:Utada 作曲:Ryuichi Sakamoto

難解な言葉も登場する箇所です。

丁寧に見ていきます。

「NYC、ニューヨークシティ(何が、何が?)

Tokyo、トーキョー(何が、何が?)

ストリートから一番高い場所へ送って、一番高い場所へ、高くに

MP3、MP3プレイヤー

上手くやって 上手くやって ボッタクリ屋たちよ

『オム・マニ・ペメ・フム』」

ニューヨークと東京を股にかけて活動する語り手の私の姿でしょうか。

大都市の喧騒の中から高い場所、つまりより神聖な土地への祈りを届けたいと考えているのです。

ここでの神聖な土地とはチベットのことでしょう。

最後に現れたチベットのマントラ(真言)に注目してください。

オム・マニ・ペメ・フム』の解釈はとてもじゃないですがこの紙幅では書きえません。

Wikipediaの説明を引用します。

マニは「宝珠」、パドメーは「蓮華」を意味するパドマの処格で(つまりここではマニの在処を示す)、ここでのマニを呼格と解して和訳すると「オーン、蓮華〔の中、の上〕におわします宝珠よ、フーン」となる。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/六字大明呪

この言葉の真相をインターネットで得ようとするのはチベット仏教への冒涜に値するかもしれません。

この曲に介在する政治的風刺とはチベットの高度な自治を認めずに迫害する中国政府への批判です。

ただし決して政治的風刺だけにこだわった歌詞ではないのです。

そのことは歌い出しにある世俗的な愛の姿を見ていただければ納得していただけるでしょう。

宇多田ヒカルは世俗的な愛の歌にチベットのマントラを挿入します。

このことは彼女の愛に対するスタンスをより鮮明にさせるのです。

愛こそが慈悲に値するものだという固い決意に裏付けられています。

語り手の私と最愛のあなたの交流。

MP3プレイヤーを片手に世界都市を横断する私。

そしてチベット仏教のマントラを唱える日々。

まるで万華鏡のような愛と慈悲の姿を捉えた歌詞です。

世界の中で様々に同時進行する事柄を描き出しました。

この傾向は最後まで貫徹するのです。

Utadaと大人の恋愛模様

自然な愛を称賛する歌

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You know I, I'm gonna be yours tonight
We're gonna... Ooh aah
FYI We're gonna be up all night
I'll see you later, call me
You know my number

出典: Merry Christmas Mr. Lawrence/作詞:Utada 作曲:Ryuichi Sakamoto