前提の「マハーバラタ」を解説

ハイテンポなリズムと、韻を踏んだ中毒性は多くの人を虜にしています。

しかし、その歌詞は難解で聴いているだけでは到底理解できません。

難しい単語も多く、初めて聞いた単語も多いのではないでしょうか?

それもそのはず、この歌はヒンドゥー教の叙事詩をベースに作られています。

そのためまずは、ベースとなった叙事詩「マハーバラタ」について見ていきましょう。

「マハーバラタ」解説1

「マハーバラタ」は簡単に言うと王の座を争う物語です。

昔、クル王家に二人の兄弟がいました。

兄の名はドリタラーシュトラ、弟の名はパーンドゥ

兄は盲目であったため、弟が王様になりました。

しかし、弟には女性に触れると死ぬ呪いがかかっています。

そのため弟は二人の妃に頼み、神々を呼び出して子を授かりました。

このとき生まれた五人の子どもをパーンダヴァと呼びます。

幸せな家庭を築いたパーンドゥですが、物語はこのままハッピーエンドとはいきません。

ある日、パーンドゥは妃に触れてしまい亡くなってしまいます。

「マハーバラタ」解説2

パーンドゥの長男はまだ幼かったので王位を継ぐことができませんでした。

兄ドリタラーシュトラは、パーンドゥの子が大きくなるまでを条件に王になります。

ドリタラーシュトラにはカウラヴァと呼ばれる百人の王子がいました。

カウラヴァは王位継承権を奪おうと、いくつも陰謀を練ります。

パーンダヴァとカウラヴァの王位をめぐる争いは幾年も続きました。

カウラヴァは最後の戦いでパーンダヴァに敗れ、全滅します。

かなり簡単ですが、あらすじを紹介してきました。

まだまだ説明していない部分がありますが、この物語をベースに曲が作られています。

ブリキの人形劇

難解な歌詞

ここからは歌詞解釈となります。

ただ難解な歌詞のため、私的な解釈が多分に含まれることをご了承ください。

いきなりですが筆者の解釈では、この歌はブリキの人形劇だと考えています。

それもミュージカルのような、劇中で歌や踊りを披露するものです。

ブリキの人形たちは、終始踊り続けています。

劇の演目は「マハーバラタ」。

そのことを念頭に歌詞のほうを見ていきましょう。

パーンドゥの血筋

さあ、憐れんで、血統書
持ち寄って反教典 沈んだ唱導
腹這い幻聴
謁見 席巻 妄信症

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

血統書とはパーンダヴァ自身のこと。

パーンダヴァは物語の中で10年以上王国を追放されています。

パーンドゥの血筋であるため、様々な迫害を受けてきたのです。

反経典とは、いまの教義に異を唱える者。

つまり、カウラヴァに反する者たちを言います。

「俺たちはこの血のために王国を追放された。

しかし、カウラヴァの納める国ではダメだ。

民は一つになっておらず、国を導く者もいない。

カウラヴァは偉くなったつもりだが、それはただの妄想だ。」

自分たちが支配者になるのだと盲信しているカウラヴァたちへの反旗を掲げ、立ち上がったパーンダヴァ。

数々の陰謀に立ち向かうため、ともに戦う仲間を水面下で募っていきます。

ブリキの「マハーバラタ」

新しい物語がいま生まれる

踊れ酔え孕め アヴァターラ新大系
斜めの幻聴 錻力と宗教
ラル・ラリ・唱えろ生

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

アヴァターラとはヴィシュヌ神の化身です。

化身にはいくつか姿があり、現れる時代によって姿を変えています。

「マハーバラタ」では8番目のクリシュナ、9番目のバララーマとして物語に介入。

またアヴァターラは、ネットではお馴染みのアバターの語源でもあります。

そして人形劇で役を演じているブリキの人形たちは、叙事詩の登場人物を演じているアバターのようです。

つまり、ここのアヴァターラはブリキの人形たち

また先ほどはスルーしましたが、幻聴を聴いたのは九番目のアヴァターラでしょう。

実は九番目はバララーマである説と仏陀であるという説があります。

「陀」という漢字は「斜め」という意味。

また「腹這い」も涅槃像からも連想できます。

錻力はブリキが争っていることを考えると「武力」とも読めるでしょう。

「ここからブリキによる新たな「マハーバラタ」が生まれようとしている。

仏陀はお告げを聞き、武力と宗教の話が始まる。

生きていることを謳歌しよう。(ゼンマイが切れたら止まってしまう)」