少女にも、少年の黒い瞳の色だけは、そのまま識別できるのかもしれません。
「色のある世界にいるあなたの目に、私はどう映っているの?」
そんな風に気になるのは、少女が恋をしているから。
もどかしさに涙が出てしまうのも、きっと恋のせいです。
海辺の病院という設定なのでしょうか。
涙越しに見た、少年のくれた景色が、水彩画のように淡く彩られていくようです。
静かに忍び寄る不安~2番~
灰色の世界 不鮮明に光り
淡く白い一輪の花 窓辺に飾ってある
「僕の事なら忘れていい」
笑いながらそう言う君は どこか寂し気に見えた
出典: 色の見えない少女/作曲:古閑翔平
病院で出会った二人。
少年の方も何か病気を抱えていそうなことが分かります。
作中には、灰色の濃淡でおよその色が分かるようになった、とあります。
少女の目が映す「淡く白い」花は、実際には黄色やピンクの花なのかもしれませんね。
でも、「白い花」はきれいなだけの意味ではありません。
自分のことは「忘れていい」だなんて、まるでいなくなってしまうような事を言う少年。
運命を受け入れているような、あきらめているような、そんな儚さが漂います。
それは、「色」を諦めかけていた、出会ったころの少女のよう。
心に痛みを抱える二人だからこそ、心の距離が近いのでしょうか。
病室を抜け出し過ごす時間
夜空を眺めて
星座を探した
出典: 色の見えない少女/作曲:古閑翔平
色彩溢れる日中は、もしかしたら少女にとって眩しいだけの時間かもしれません。
すべてが影に覆われる優しい夜の、大切な人と過ごす時間。
空を見上げ星座を辿る二人の視線は、交わらないかもしれません。
けれども触れ合える距離にいる二人は、ひそかな約束をするのです。
君が見る世界を一緒に見れたなら~後半サビ部分~
変わらないはずのモノクロのこの世界が
次第に色を付けてゆき おとぎ話の様に変わってゆく
いつか私にも見えるかな
その時にもう一度 二人だけでこの景色を見に来よう
出典: 色の見えない少女/作曲:古閑翔平
恋をすると、いつもの変わらない日常がキラキラしたものに変わっていきます。
少女にとっても、モノクロだったはずの世界が、色付いて見える気持ちになったでしょう。
おとぎ話の主人公のように、ハッピーエンドが待っていると、夢をみたり。
いつか私にも、あなたと同じ世界が見えるかな、と問う少女に少年は答えます。
「その時には、また一緒にこの景色を見よう」と。
二人だけの約束でした。
MVでは、この約束の言葉が、一文字一文字、大切に描かれています。
これは、これからの展開の重要な伏線になっているのでした。
たった数コマのイラストが急展開を告げる~間奏~
楽曲ではここで間奏に入りますが、イラストでのストーリーの展開が続いています。
ある、雨の日。
少女は自分のベッドの下にある折り畳まれた紙を見つけます。
手紙でしょうか。
その紙を読んだ少女は、病室を飛び出し彼のもとへ向かいます。
しかし、少女が見たのは、ただの空間になった病室と誰もいないベッドでした。
優しい嘘と「色」を残して彼は逝く
最後まで嘘を隠し通してよ
交わったあの約束は一瞬にして姿を失った
とてもとても刺激的でこの世界は色付いた
あの青い海岸で待ってるから
出典: 色の見えない少女/作曲:古閑翔平
誰もいないベッドに縋りつき泣き崩れる少女。
星空を見ながら交わした、あの時の約束が蘇ります。
『この景色を一緒に見に来よう』
当然少年は、自分の命が長くないことを知っていたでしょう。
「僕のことは忘れていい」なんて言っていた言葉の意味を今知ります。
それでも少女を想い、希望を持たせるような優しい嘘をつきました。
「また一緒に来よう」という約束は、もしかしたら少年にとっても希望となっていたかもしれません。
それなのに、彼は逝ってしまった!
すべてはこの瞬間消えてしまった!
絶望の涙にくれる少女のその瞳に飛び込んできたのは、真っ青な海の「色」でした。