『スマトラ警備隊』
カルト・ポップの名盤『シフォン主義』に収録
やくしまるえつこ、永井聖一など錚々たるメンバーが名を連ねる相対性理論。
今回は彼らの初期の代表作より『スマトラ警備隊』の歌詞の魅力に迫ってみようと思います。
『スマトラ警備隊』は相対性理論の2006年発表の1st EP『シフォン主義』のオープニング曲です。
実は本作は当初4000枚限定でライブ会場と通販のみで販売されていました。
そのためすぐに廃盤となってしまうも2008年にリマスター盤が再発。
瞬く間にカルト・ポップの名盤として愛好家の耳を楽しませる定番となったのです。
タイトルの由来は?
「ウルトラ警備隊」からの引用
『スマトラ警備隊』という不思議な曲名...。
そもそも由来は何だったのでしょうか?
『シフォン主義』に収録された楽曲の骨格はVampillia等で活躍するベーシスト真部脩一が手掛けています。
歌詞はある特殊な能力を持った少女の独白で構成。
その特徴は「童夢」「攻殻機動隊」「サイコパス」のような近未来アニメを彷彿とさせる世界観です。
少女はその特殊な能力を用いて世界を救うヒロインとして存在しています。
その立ち位置から想起するのは60年代に一世を風靡した『ウルトラセブン』の「ウルトラ警備隊」です。
それではスマトラとは一体何を指しているのでしょう?
世界を震撼させたスマトラ沖地震
『スマトラ警備隊』が発表されたのは2006年です。
そこから遡ること2年前の2004年、世界を衝撃のニュースが流れました。
それがインドネシア西部のスマトラ島沖で発生したスマトラ沖地震です。
この災害により全世界では20万人以上の死者・行方不明者を出したといわれています。
当時、津波等の災害に対して免疫のなかった日本でも大きく取り上げられたこの震災。
個人の生活を無慈悲にも奪い去っていく自然の猛威は相対性理論にも大きな影響を与えたのでしょう。
『スマトラ警備隊』の世界観にはこの地震災害からの影響も反映されているのかもしれません。
歌詞を徹底考察!
超能力少女が地球を救う?
ここからは『スマトラ警備隊』の歌詞にスポットを当てていきましょう。
物語の舞台として推測されるのは近未来の東京です。
主人公の少女は超能力を用いて地球を救うヒロインとして登場します。
しかし随所に見られる牧歌的な雰囲気が相対性理論の持つ世界観なのでしょう。
相対性理論の歌詞を紐解く上でキーとなるのは引用・語呂合わせ・終末観。
その理由は順を追って説明していこうと思います。
地球を救って!サイキック・ガール
街を破壊する〇〇
やってきた恐竜 街破壊
迎え撃つわたし サイキック
出典: スマトラ警備隊/作詞:やくしまる えつこ,永井 聖一,真部 脩一,西浦 謙助 作曲:やくしまる えつこ,永井 聖一,真部 脩一,西浦 謙助
約6500万年前の隕石の衝突、その後の氷河期に絶滅した生物・恐竜。
『スマトラ警備隊』の世界には近未来を舞台にしているにも関わらず恐竜が登場するのです。
一方で“街”に暮らす主人公たち、人類は文明社会を生きていることが分かります。
共存するはずのない人類と恐竜、一体世界はどうしてしまったのでしょう?
突然変異?人類が科学で作り上げてしまった?
荒唐無稽な世界観に驚愕です。
主人公の少女は自らの存在価値を知っています。
彼女は超能力者。
地球を、人類を救うためにその能力を捧げる救世主なのです。