そして終盤に
いつから逢えない時間が
こんなに増えてしまってた?
くだらない 責め合い それも増えた
また今日も帰ってこない 君待つアタシ バカみたい
思いながらまた朝になる
出典: アカシ/作詞:Noa 作曲:headphone-Bulldog
狂おしいほど「好き」の時間が過ぎ、次にはゆっくりと恋の終盤がやってきます。
二人の関係はどうなっていくのでしょうか。
どうしてだろう
恋の初期にはただ相手がそばにいるだけで幸せです。
恋の中盤から終盤になるは、自分の想いが相手に通じないもどかしさでつぶされそうという思いに変化します。
恋がうまくいかない、自分の思い描いたようにいかないことがなんだか相手のせいのように思えてくることも。
相手を思いやる気持ちと、自分の気持ちとのバランスが崩れていくこともあるでしょう。
バランスを立て直したい、また二人で幸せになりたいと思いながら相手にぶつかってしまうこともあります。
そうなってしまった理由がわからぬまま、眠れぬ夜は今日も続いて行くのです。
道が見えなくて
2人強がったまま 誤解は解けないまま
距離は遠くなっていくばかり
「もう戻れないの?」なんて 答え聞くまでもなくて
サヨナラを選ぶしかなかった
出典: アカシ/作詞:Noa 作曲:headphone-Bulldog
恋には譲り合いの精神が必要です。
相手を思いやり、自分のためだけでなく相手の幸せを願うこと。
二人の関係において、相手がラクでいられるようにいること。
お互いが自分のやり方や希望を全面に押し出していると関係は長続きしません。
頭ではわかっていても、恋の成熟期にはそれがなかなか実践できないこともあります。
自分の気持ちをわかって欲しい、こちらをむいて欲しいという思いが相手を追い詰めることもあるでしょう。
追い詰められる側はもちろん、追い詰めている側もそれは決して良い気持ちではありません。
お互いが自分をすり減らし疲れ、一緒にいることの意味さえ見失ってしまいます。
離れていく
それぞれが強がり、譲れなくなると自然と距離は開いていきます。
少しづつ、でも確実に開いていく距離は、それに気づいたときには埋めようのない距離に。
どうすれば、距離が縮まる?
どこからやり直しすればよい?
そんなことを相手に問うてみても、相手もそれがわからず離れているのです。
距離を埋める努力をするよりも、このまま離れていくほうが良いという思いが心に芽生えだしたら。
恋のベクトルは静かに別れの方に動き出します。
色褪せて
愛し合った記憶さえも 2人でいた時間さえも
”アタシ”という存在さえも 君の中から消えてくの?
忘れられそうにないまま アタシの中にいた君は
そっと背を向け過去になる そっと色あせて行く
出典: アカシ/作詞:Noa 作曲:headphone-Bulldog
形のない「記憶」。そして「思い出」。
自分の中では消せない思い出が、相手の中でどんな風に閉じ込められているのかは誰にもわかりません。
主人公にとって忘れがたい相手への想い、今も消せずにいる気持ち。
それは、相手の中では違う形に変化しているかもしれないのです。
そう考えると、あんなに仲良しだった二人も結局は別個の個体なのだ、と気づかざるを得ません。
それは、とても切ない気持ちとなっていきます。
私の存在は
恋を失う時、恋そのものが消えてしまう悲しさと、相手の中の自分が消えてしまう悲しさが交差します。
人は誰かの前にいるとき、その存在意義をよりはっきりと自分で認識できるものです。
自分を慕う家族や友人、そして自分もその人達を愛しく思うことで「そこにいる」ことが実感できます。
特に恋についてはそれが顕著。
恋人の前にいること、特別な存在であること、恋がそこにあることが、自分の存在の「アカシ」となります。
恋が終わり、二人が離れてしまったら、私がここにいる「アカシ」はどこにいくのだろう。
ふとそんなことを思い主人公は悲しくなります。
恋を失うことは自分を失うことでもあったのです。