大地と大空は 何故別れたのだろう
世界は残酷で されど美しい

出典: 暁の鎮魂歌/作詞:Revo 作曲:Revo

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出だしのこのパートはコーラスのみで歌われています。

花畑から壁の前の巨人、その上空、空を見上げる少女ヒストリア、壁内の街を飛ぶ鳥へと続きます。

壁の前の巨人と飛ぶ鳥はシーズン1前半のエンディング曲「この美しき残酷な世界」の映像にもあります。

この大地とは壁内人類の世界で、大空は壁を越えて外の世界に広がっています。

壁内に活動領域が限られている人々にとって大地と大空は切り離されているわけです。

2行目は進撃の巨人を象徴する台詞で、「美しき残酷な世界」のタイトルを言い換えたものです。

「美しき残酷な世界」はミカサを主人公に描かれています。

2つの映像にはミカサとヒストリアを正面から見た同じ構図があり、ストーリーの構成も似ています。

「暁の鎮魂歌」は「美しき残酷な世界」を意識した作りになっているようです。

この部分は圧倒的に力の差がある巨人によって人類が蹂躙される残酷な世界の現実を表しています。

それは巨人を戦争や貧困、弾圧などに置き換えられます。

世界は残酷だけど自由を手に入れることで美しい姿に見えてくると解釈できるでしょう。

立場の違いが引き起こす衝突

石を投げる者と 投げられる者には
容易に越えられぬ 柵がある
立ち位置が変われば 正義は牙を剥く
檻の中で吼えているのは 果たしてどちらか

出典: 暁の鎮魂歌/作詞:Revo 作曲:Revo

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映像は投げられた石がヒストリアの足元の草地に落ちて波紋が広がります。

水中に沈むヒストリアは水面の向こうにある柵を見上げています。

投げられた石は、この後に出てくる人たちとヒストリアとの関わりを象徴しているのでしょう。

良い意味でも悪い意味でもヒストリアの運命に影響を与えています

そうした立場の違いを、ヒストリアが育った牧場の場面に描かれている柵を重ねて表現しています。

続いてシルエットで描かれたヒストリア、幼少期エレンと父グリシャの後ろ姿。

3人の関係は「王政編」中盤の山場になります。

このシーンに登場しない人たちも含めて、登場人物にはそれぞれの正義があります。

本編で進行している対立と戦いは立場の違いから来る正義の衝突です。

これは現実の世界でも正義の名の元で繰り返されている戦いと重なります。

自分の立場という檻の中で正義を叫ぶが、果たしてどちらが正しいのかという問いかけです。

重要な登場人物の背景はアニメでも描かれるはずですが、シーズン3では収まらないかも知れません。

続いて少女から調査兵団の姿に変化するユミル。

ユミルの生い立ちはシーズン2で明らかになりました。

他の誰よりもヒストリアの境遇を理解していたユミルは、自分らしく胸を張って生きろとアドバイス。

「進撃の巨人」は立場の違う様々な視点が描かれています。

ある出来事に関わる登場人物ごとの物語があり、やがて「進撃の巨人」の全体像が見えてきます。

心臓を捧げよ

心臓を捧げた 戻せない黄昏に
進み続けた夜の果て 楽園は何処にある?

出典: 暁の鎮魂歌/作詞:Revo 作曲:Revo

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「心臓を捧げよ」の敬礼は本編で何度も登場します。

シーズン2のオープニング曲「心臓を捧げよ」のタイトルにもなっています。

そのサビのメロディを流用し、「捧げた」と過去形にしたのがこの部分です。

この歌詞に合わせて、訓練兵団の軍旗と104期訓練兵12人のバストショットが切り替わります。

104期訓練兵は卒業直後のトロスト区攻防戦(シーズン1)で多くの戦死者を出しました。

 ここでエレンたちを訓練兵姿で登場させたのはシャーディス教官との絡みを意識したのでしょう。

その12人はおそらく上のポスター画像に写っているメンバーだと思います。

進撃の巨人は時系列に沿って物語が展開しますが、過去と未来が錯綜します。

これは巨人との戦いに「心臓を捧げた(捧げる)」兵士たちに向けた言葉です。 

人類と神々の黄昏

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次に黄昏は二つの意味が考えられます。

一つ目はシーズン3の回想に登場する人物が語る「人類の黄昏」です。

勝ち目のない巨人との戦いで多くの兵士が死んでいきました。

壁内人類の運命は黄昏に向かって進んでいるように思えます。

その流れを止めることも引き返すこともできず、戦い続けるしかありません。

夜が明ける前、暗闇の中で人類は戦ってきました。

その道のりは暁の先に楽園があるのかと問いかけています。

二つ目は「進撃の巨人」が北欧神話をヒントにしている点にあります。

北欧神話には巨人が登場します。

「進撃の巨人」に取り入れられたキーワードがあるので、興味があれば調べてみてください。

その北欧神話の重要テーマが「神々の黄昏」です。

シーズン1のラストで壁中に巨人がいると分かりました。

ウォール教の信者は巨人を崇めていたことになります。

エレンやライナーたちが継承する巨人は、壁の外を彷徨う無垢の巨人とは違い特別な存在です。

黄昏は神々でもある特別な巨人の運命かもしれません。

「進撃の巨人」はダークファンタジーといわれるので、「黄昏」は物語の結末を暗示していそうです。

レクイエムと花

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Requiem Requiem
この夜に散った名も無き花よ
どうか安らかに暁に眠れ

出典: 暁の鎮魂歌/作詞:Revo 作曲:Revo

レクイエムのリフレインに合わせて花畑に滴の波紋が広がります。

赤い波紋は血を表しているとも見えます。

ヒストリアは花畑を暁に向かって疾走していきます。

この花は午時葵(ゴジアオイ、学名キスツス・アビドゥス)、花言葉は「私は明日死ぬだろう」です。

午時葵は正午を挟んだ短時間に開花し翌日には萎れてしまいます。

花の命は短くて、死を予感させる不吉な花言葉なので贈り物には使われません。

アニメ版「進撃の巨人」にはしばしば象徴的に花を使ったシーンが登場します。

第1話(シーズン1)でエレンの夢の中と、第37話(シーズン2)でハンネスが巨人に捕食されるシーン。

さらにシーズン2のエンディング曲「夕暮れの鳥」の映像では、終わり近くに花畑が描かれています。

これらは同じカットを流用して色調だけが変えられています。

あいにく何の花かファンサイトでも特定できていませんが、花言葉に意味が込められているのでしょう。 

曲のタイトルにある暁は一日の始まりで、鎮魂歌は死者の安息を願うミサ曲です。

死者は過去の存在になり、その魂は生きる者の心にあるという描写も本編で繰り返し出てきます。

死者のはかない命を午時葵にたとえて、その魂が安らかに眠るようレクイエムを捧げています

映像は暁の陽を背にしたフリーダを悲しそうに見つめる少女ヒストリア。

フリーダは逆光で顔がよく見えなくて、彼女の運命を表しているようです。

そして兵団の装備を着けた後ろ姿のヒストリアと柵の向こうに暁の陽。

最後のヒストリアは「王政編」のクライマックスを象徴した姿と推測します。

シーズン1ではモブ扱いだったヒストリアは、物語の土台を構成するキャラクターの一人になりました。

「王政編」はヒストリア自身が激変する成長を描いています。

その区切りが映像の最後の姿になります。

リンホラのRevoさんは原作の時からの「進撃の巨人」ファンだそうです。

作画・演出の橘正紀氏ともに原作を熟読して、緻密に「暁の鎮魂歌」の歌と映像を作ってるのでしょう。