スカート「駆ける」
2006年から活動を続けている澤部渡によるソロプロジェクト、スカート。
今回は2020年3月18日にリリースされた両A面シングル『駆ける/標識の影・鉄塔の影』から「駆ける」を紹介します。
心に入り込んでくるような透明感のある澤部渡の歌声によって語られる歌詞の言葉たち。
今回の記事では、その歌詞の意味を解説していきます。
過去と現在
経験を振り返る
欠けてしまったものもあるけれど
積み上げた日々に変わりはないんだ
出典: 駆ける/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
まず、冒頭の2行の歌詞をご紹介します。
ここで表されているのは、主人公が今まで経験してきた思い出を振り返っている様子です。
1行目では今までの人生の中で失ってきたものを思い出しているのでしょう。
人間は歳を取ることで手に入れるものもあれば失ってしまうものもあります。
ここでは、自分の中に存在していた目に見えないものを指しているのかもしれません。
それは若い時の新鮮な気持ちや若さそのものを指しているのでしょうか。
時間が経つにつれて消えていってしまったそれらを懐かしんでいるのかもしれません。
続く2行目では、時間の経過と共に失ってきたものも全てが消えて無くなる訳ではないといいたいのでしょう。
今までそれらを経験してきたという事実は自分が忘れない限り無くならないのです。
仮に忘れても、その出来事の数々は無意識に今の自分に対して影響を及ぼしているのかもしれません。
人間は日々、内面が変化していく生き物です。
時間が経過することで、様々な経験によって良くも悪くも昔の自分とは違う存在になっていきます。
しかし今の自分というのも昔の自分があるからこそ存在している。
主人公はそういった経験の積み重ねについて言及しているのでしょう。
過去に囚われない
諦めて前を向くよ
出典: 駆ける/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
前述の2行のみだとポジティブにも聞こえた言葉たち。
しかしここまで読むことで、主人公がそんな過去に対して後ろ髪を引かれていることが判明します。
過去の自分にあって現在の自分には無いものを羨ましく感じているのかもしれません。
しかしそんな気持ちを振り払いながら彼は前へと進もうとしています。
失ってしまったものよりも、これから手に入れるものに対して目を向けていく。
彼はその方がより良い自分になれると思っているのでしょう。
心奪われるもの
忘れられない出来事
忘れ方を忘れてしまったみたい
出典: 駆ける/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
諦めようとしつつも、主人公は過去の出来事を忘れられずにいるのかもしれません。
そうした方が良いと分かっていながらも、忘れられない。
ずっと脳裏に張り付いているのはそこに対して未練があるからなのでしょうか。
もしくは過去の自分に対しての憧れなのかもしれません。
彼がここでいっている過去を忘れられないというのは必ずしもネガティブなことではないのかもしれません。
そうした2度とは戻ってこない日々があるからこそ、彼は前を向いていられる。
過去と同じような煌めきはもう自分の人生にもたらされないかもしれない。
けれど、その煌めきを抱えていることで切ないながらも生きていけるのでしょう。
何故なら、人生にはそういった尊い瞬間が存在すると彼は知っているからです。
「君」が表すもの
あの日の君がまるでそばにいるようだよ
出典: 駆ける/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡