夢を見たんだよ 生まれた時のこと
美しくいきてね 子宮の街 僕ら手を叩いて笑ったんだ

出典: 無能/作詞:高橋國光 作曲:高橋國光

子宮の中にいるときの記憶…とても神秘的なテーマですね。

生まれる前の記憶を「胎内記憶」と呼びます。

へその緒や羊水に関する記憶を、幼い子供が語るのだとか。

生まれる際の記憶がある場合もあるそうです。

母親の「美しく生きて」という言葉すら覚えているよう。

この誕生を、母親だけでなく胎児も一緒に笑って喜んでいた。

そう解釈できますね。

「夢を見る」という表現からは、もう一度転生したいという発想も考えられます。

変わってしまった

絵の具を飲み干した 虹の色変わった
抱きしめられたくなった ひとりじゃもう歩けなくなった

出典: 無能/作詞:高橋國光 作曲:高橋國光

ここでは生まれた後の出来事について語っているのだと思います。

「絵の具」にはどんな意味が込められているのでしょうか?

そのままの「絵の具」の意味ではないようです。

東京喰種の中で描写されている「主人公が喰種を食べる」という展開を表現しているとのこと。

「喰種」とは、人を食べることで生きている種族のことです。

主人公は「喰種」の臓器を移植されたことで、「喰種」と「人間」両方の要素を持つ存在となりました。

そして、「人間」ではなく「喰種」を食べることで、主人公はより強力な力を手に入れたのです。

これを「絵の具を飲む」と表現。

その後味わうこととなった「孤独」や「虚無感」も感じ取れます。

狂気に満ちる

愛情と狂気

笑いあっていたんだよ
おもちゃに愛を捧げて
触れられざる子供たちを
簡単な言葉で壊したい!

娼婦が火を放った 遠くの街で誰かが死んだよ

出典: 無能/作詞:高橋國光 作曲:高橋國光

非常にインパクトのある言葉が出てきました。

「笑い合う」というのは愛情溢れる素敵な表現。

しかし、笑い合っている相手は「おもちゃ」であるといっているのです。

そして、「触れられざる」という表現。

子供は「おもちゃ」との関わりはあるけれども、人間との接触はない。

そんな孤独な状況なのかもしれません。

本来子供へは「無償の愛」が注がれるもの…。

ところが子供を「壊したい」という願望すらあるようです。

「純粋に愛を求める子供」へ向けられた「狂気」が感じられます。

そして、バンド「the cabs」時代の歌詞でも度々登場していた「娼婦」が放火し、誰かが命を落とした…。

先ほど「壊したい」と望んだのはこの「娼婦」なのでしょうか?

我が子を傷つけたいと思ってしまったのでしょうか?

生まれたときの喜び、成長を味わったのに、一方では子供を殺めようとする…。

そんな虚しい物語が繰り広げられています。

集団自殺

レミングスに誘われて たどり着くこの世の果て
強くはならないで 汚濁の中でサイレン鳴り響いて気が狂ったんだ

出典: 無能/作詞:高橋國光 作曲:高橋國光

「レミングス」とは「海に飛び込んで集団自殺する」と信じられていたネズミの一種。

だとすると、ここでは集団自殺する人々に自分も誘われ、参加したという意味だと考えられます。

「東京喰種」の中で失われた多くの命を指し示している気もしますね。

「サイレン」は救急車やパトーカーのものでしょうか?

それか、自分の脳内で鳴り響く「心のざわめき」のことかもしれません。

最後のフレーズをセリフ調に言っているのが特に印象的。

心の声をそのまま吐き出すような感覚です。

運命を受け入れて生きていく

現実を受け止める他ない

遊園地の奥でずっと待ってる
天国の構造をきみは知ってる
吐き気をのみこんだ 鉄の雨降りだした
パパとママは間違えた 数字はもう覆せなくなった

出典: 無能/作詞:高橋國光 作曲:高橋國光

子供が無心で楽しむ場であるはずの遊園地で待っているのは「本当の愛」でしょうか?

「構造」とは一見幸せに思える光景の裏側のことかもしれません。

「おもちゃ」と戯れる裏に潜む母親の狂気のように。

全てを冷静に受け止めてしまうと、気が狂いそうになる。

ここで登場する「ママ」は先ほどの娼婦のことでしょうか?

悲しい解釈ではありますが、「間違えた」のは子供を産み落としたという事実なのかもしれません。

変えられない現実。

受け入れざるを得ない真実。

どうすることもできない現状を表現しているのだと読み取れます。