「MUDA」に収録されていませんがこの生々しさが13曲まるごと詰まっています。
ある意味とても贅沢なアルバムです。
また多重録音をしないことで作曲者の個性が際立つようになりました。
ジャズ色が濃厚なハマケン作曲の「Wonder Moon」と「Oyabun」。
オリエンタルでセンチメンタルな曲はベースの田中馨作。
大半を占める星野源作の曲はメロディの輪郭がハッキリしています。
鼻歌で作ったメロディをホーンやマリンバにのせた感じ。
それが星野源のオリジナリティです。
ソロ活動を経て行きついた『MUDA』の極致
原点を見つめ直して制作された楽曲たち
内向的な性格から星野源は自身で歌うことを避けてきたといいます。
しかし勇気をもって制作した「ばかのうた」はファンから温かく迎えられることに。
星野源は中学時代にイースタンユース・細野晴臣・ハイスタ・サザンを同時に聴いていました。
そこには明確に歌への憧れが詰まっています。
ソロ活動で何かを振り切ったのでしょう。
星野源はこのアルバムで恥ずかしくて封印していた要素を全てさらけ出します。
ストレートなロックナンバー「MUDA」。
はっぴいえんど直系のメランコリックソング「DANCHI」。
そしてSAKEROCK流のエモコア「HIRISHIMA NO YANKEE」です。
『無駄』って面白い!
もう一度アルバムジャケットを見返してみましょう。
大きく描かれたアルファベット1文字ごとに顔が描かれています。
4人で作り上げた「無駄」のない、しかし多くの人には「無駄」なものかもしれないアルバム。
タイトルはアルファベットで綴った「MUDA」の絵面が格好いいからと割と適当に付けられています。
しかし言葉を持たないインストバンドだからこそ「無駄」とはなんだろう?と深く考えたそうです。
アルバムのライナーで星野源は「無駄」についてあーだこーだと考えています。
音楽って「無駄」なもの?いや、人間も宇宙にとって無駄じゃないか?
そもそも宇宙って...?と「無駄」スパイラルに陥ります。
そして辿り着いた結論は素敵なものでした。
人生に「無駄」なことは何もない。「無駄」って面白い!
美しい解散劇
より多忙になる個々の活動
こうして作り上げられたバンド史上最高傑作と言われる「MUDA」。
4人にしか作れない4人だけの音を表現することに見事成功します。
しかしメンバーの個性がハッキリと提示されたことで意外な結末が。
「MUDA」リリース後メンバーはそれぞれの表現を追求し始めます。
ソロ活動で多忙を極める中、星野源は2012年クモ膜下出血が発覚。
ハマケンは自身のリーダーバンド在日ファンク以外にもバンドを兼任。
売れっ子ドラマーとして多忙になる伊藤大地。
そして田中馨はバンドを去っていきました。
3人になったメンバーは多忙を縫いサポートメンバーを加えライブを続けます。
しかし次作となる「SAYONARA」はメンバーの合意のもと解散を前提に制作されることに...。
2015年にリリースされたラストアルバム「SAYONARA」。
私はこれ以上に美しいバンドの解散を見たことがありません。
「SAYONARA」は解散することを前提で作られたアルバムです。
最後だからオリジナルメンバーで楽しく終わらせたい!
星野源の想いに応える形で脱退した2人のメンバーも戻ってきます。
アルバムジャケットを飾るのは5人の屈託のない笑顔。
「メンバーのみんな、本当にありがとう」
アルバムのライナーノーツで星野源は感謝の言葉を綴ります。
1stアルバムのようなラストアルバム。
最後までSAKEROCKらしいふんわりとした美しい終わり方です。
『カクバリズム』にはおすすめアーティストがたくさん!
レーベル買いしたくなるレーベル『カクバリズム』
カクバリズムとは...
当時、STIFFEEN RECORDSを安孫子真哉(元銀杏BOYZ、当時はGOING STEADY)と共同運営していた、SNOTTY、BOYS NOWのボーカル、角張渉がYOUR SONG IS GOODの音源をリリースするために2002年に設立。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/カクバリズム
SAKEROCKはなぜインディーズでの活動を選択したのでしょう?
それは彼らが在籍していたレーベル「カクバリズム」の自由な発想に触れたからではないでしょうか?
「カクバリズム」はジャンルの枠にとらわれない自由なレコードレーベル。
メインのバンドがYOUR SONG IS GOODという時点ですでにジャンルレスですが...。
格好良ければパンク・ポップス・ヒップホップ・ブレイクビーツなんでもあり。
日本では珍しい「レーベル買い」にハマるユニークは会社なのです。