暗い水の中では
泡の服をまとい
手を伸ばし
すくいあげたそばから
こぼれていくの
出典: 名前/作詞:土岐麻子 作曲:トオミヨウ
最初は川、続いて川がないはずの砂漠、今度は水中に潜ったようです。
童話やおとぎ話というより、眠っているときに見る夢みたいな脈絡のない展開になってきました。
ただ「泡の服~」あたりで、もしや「羊水に浮かぶ胎児」なのでは?と気づかされます。
ここで歌詞の冒頭をおさらいしてみましょう。三日月を3ヶ月と解釈することもできます。
そうすると「3ヶ月で妊娠がわかった赤ちゃんを育てよう!」という意味だったかもしれません。
童話っぽい詩的な世界を描きながら、具体的には赤ちゃんの誕生を物語っているという解釈です。
この解釈で正しいかどうか?については、続きを見ていきましょう。
赤ちゃんが生まれた?
光とは命のこと?
けして私のものにはできないから
光は綺麗
出典: 名前/作詞:土岐麻子 作曲:トオミヨウ
音もそうですが、光も実体がありません。物として存在しない以上、所有するのは不可能です。
たとえば「太陽の光は私の物!」と言ってみたところで、夜になると消えてしまいます。
土岐麻子さんが「物として所有できない光は美しい」と歌っていることは間違いないでしょう。
ただ、いったん「羊水に浮かぶ胎児」をイメージすると、光は命、赤ちゃんの誕生に思えます。
お母さん(私)のお腹の中にいたときは2人で1人(私のもの)でしたが、生まれると別人格。
そう解釈することもできそうですが、正解とは限りません。
このように「赤ちゃん誕生の物語が展開されているのではないか?」というのはまだ想像です。
「名前」が意味するのはアイデンティティー
名前がつけられた?
あなたのひとみ
あなたの肌は
たったひとつの
あなたの名前
鮮やかに輝いて
きりもなく美しい
けして誰のものにもできないから
出典: 名前/作詞:土岐麻子 作曲:トオミヨウ
あなたの目や肌はあなた自身のものである……ということが「名前」と表現されています。
つまり「名前」が意味するのはアイデンティティー(自己同一性)ということになるでしょう。
ただ、そうまとめるよりも、詩的な歌詞そのままの方がイメージは伝わりやすいかもしれません。
世界にたった1人のあなたという存在は、あなただけのものだから美しいということでしょう。
「あなた」が誰なのか?は、歌詞では明らかにされません。
しかし「赤ちゃん誕生の物語」が続いているとすると、名前がつけられた……とも考えられます。
あるいは赤ちゃんの目や肌が独自の存在意義を放っていて、まるで名前のようだったのかも……。
エピソードあり
実は土岐麻子さん自身、この曲を制作中に知人の出産や赤ちゃんの名前に影響を受けたそうです。
だからといって裏に「赤ちゃん誕生の物語」があるとは断定できません。
しかし、イメージは近かったことになるでしょう。
母性に包まれる
さらに赤ちゃんに限らず、大人になってもあなたの目や肌はあなた自身のものです。
そう考えると、この曲を聴いているあなた自身への呼びかけと解釈することもできます。
つまり、何となくイメージできた赤ちゃんと、曲を聴いている大人の自分が重なるわけです。
その結果、お母さんの懐に抱かれたような安心感を覚えることになります。
夜が明けて朝になる
絵本の読み聞かせ?
川に沈む 三日月
なにもかもが消えて
岸辺から
朝に溶ける 星座を
見上げていたの
出典: 名前/作詞:土岐麻子 作曲:トオミヨウ