「女のブルース」のあとにも藤圭子と石坂まさをのタッグで「圭子の夢は夜ひらく」の大ヒットが続きます。
「圭子の夢は夜ひらく」では「女のブルース」に拍車をかけたような暗く不幸な女性が描かれているのです。
藤圭子の歌唱のチカラは演歌を超える「怨歌」にあると冒頭に書きました。
いま一度、そのチカラを振り返りたいです。
稀代の歌い手・藤圭子
呪詛にも似た歌詞をダークなトーンで激情さえも淡々と歌い重ねる藤圭子の歌唱法は誰にも真似できません。
浅川マキや初期の中島みゆき、稀代のシンガー・ソングライター・森田童子。
暗い歌を得意とする歌手は他にもいますが、藤圭子の歌唱はどの人とも違う魔力を持っています。
歌声こそが藤圭子の武器
藤圭子は後年、喉にポリープを抱えて手術します。
手術後、自身の最大の武器だった歌声が手術前のようにはコントロールできていないのではと悩みました。
そして想い悩むあまり、遂に華やかな芸能界からフェード・アウトしてしまうのです。
藤圭子のダークな歌声は誰にとっても、またなにより彼女自身にとって大事なエレメント。
その証になるようなエピソードです。
藤圭子と夫と光と
藤圭子の人生は「女のブルース」を地でいくような生涯ともいえます。
結婚と離婚を繰り返す実生活の姿は「女のブルース」の一途な恋に生きる女性とは違います。
とはいえ、4番の歌詞を読み返すと、藤圭子の生涯をうまくまとめたように感じます。
藤圭子にとっての「光」
ご存知の通り、藤圭子は音楽プロデューサー・宇多田照實との間に「光」という愛娘を生みます。
晩年はその才気ある愛娘・宇多田ヒカルをデビューさせるために奔走しました。
自身の演歌の暗さが愛娘の活動に影響を与えないように苦慮したといわれています。
ひとり花の暮らし
まとめ:【生きながらブルースに葬られて】
もう一度「女のブルース」の4番のラスト2行に注目します。
何処で生きても ひとり花
何処で生きても いつか散る
出典: 女のブルース/作詞:石坂まさを 作曲:猪俣公章
その後の藤圭子の行方について、これほどまでに端的で明快な答えはありません。
藤圭子はブルースに葬られた女性です。
藤圭子の最期と「女のブルース」
藤圭子の死は私たちにとっては突然のことでした。
2013年夏に自らこの世を去ります。
いま振り返ると、石坂まさを作詞の「女のブルース」のラストのラインに身を投じたような最期。
身震いを禁じえません。
藤圭子の歌声が放つ宿命的な暗さが、本人の性格とどこまで通じていたかなど私たちは知りようがないです。
それでもこの悲劇的な結末に寄り添って、もう一度「女のブルース」を聴き直してみてください。
作詞家・石坂まさをのシビアな観察眼とどこまでもダークな藤圭子の歌声から生まれた歌です。
何処で生きても ひとり花
出典: 女のブルース/作詞:石坂まさを 作曲:猪俣公章