「好きだから言えない」は、切ない片思いの歌
片思い。
何となく好きだなという、はっきりしないけど、ほのかな気持ちに始まり、学校ですれ違ったり、心の中で思い浮かべたりするだけで、胸のあたりがキュッとしてしまうあの感じ。
経験されたことのある方も多いのではないでしょうか。
片思いの気持ちが段々大きくなって、相手も少なからず自分のことを想ってくれている気がして、そして、ついに告白!というように進めば良いのですが、なかなか先に進めないこともあるでしょう。
ももちひろこが2016年にリリースした楽曲「好きだから言えない」は、そんな、先に進むことが出来ない片思いを歌った楽曲です。
「好きだから言えない」というキモチ
「好きだから言えない」とはどういうことなのでしょうか。
「好き」+「だけど」+「言えない」ならば、「好き」って言いたいけど勇気がなくて言えないという気持ちを表します。
あと一歩勇気を出せるように「頑張って!」と声をかけてあげたくなります。
しかし、ここでは「好き」+「だから」+「言えない」です。
「言えない」理由が「好き」なのだというのです。
片思いとは、だんだんと想いがつのっていくのが常です。「好き」が増えていくのが当たり前。それが片思いです。
なのに、「好き」なのを理由に「言えない」だなんて、「好き」が膨らめば膨らむほど辛くなるということになりそうです。
歌詞を解釈!抒情的な1番の歌詞!
楽曲は静かなピアノのイントロで始まります。
透明感のある声で歌われる始まりの2行の部分を聴いただけでも、片思いする主人公の心情が良く分かります。
きみの姿今日も探してる 出会ってもう2年が経つけど
大事なこと言えずにいるのは 全てが壊れそうで
出典: 好きだから言えない/作詞:ももちひろこ 作曲:ももちひろこ
「もう2年」と歌われます。
高校生であれば、出会ったのは入学した頃で今は高校2年生なのでしょうか。詳しくは描かれないものの、同じ季節を2度過ごしてきた仲ということです。
主人公がこの2年間で育ててきたものは2つあります。
一つは「好き」という気持ち。
もう一つは、壊してはいけない「全て」です。
壊してはいけない「全て」が一体何を指すのかは、ここではわかりません。
しかし、タイトル「好きだから言えない」に加えてたった2行の歌詞で、もうこの楽曲のテーマとなる情景を描き切っています。
終わらない片思い。歌詞の続きを見てみましょう。
「私」も知らなかった「私」のこと
Bメロでは、静かなAメロよりも高音から始まるテンポの良いメロディに乗せて「きみ」と「わたし」の2人の違いが描かれています。
無邪気に笑いかけるきみを このまま胸に閉じ込めたい
ずっと変わらないままでいたい こんなに臆病なわたし初めて知ったよ
出典: 好きだから言えない/作詞:ももちひろこ 作曲:ももちひろこ
「わたし」の気持ちに気づいていない「きみ」の無邪気な笑顔。そして「わたし」は「きみ」への想いを胸に閉じ込めようとしています。
その自分の様子を「臆病」と表現しています。
その臆病さ故、「わたし」は自分の気持ちを「きみ」に「好き」と打ち明けることはしません。
そして、その「臆病」さを「初めて知った」と歌ったあと、1番のサビに入っていきますが、このサビ前の部分。
ここに楽曲の構成上重要な仕掛けがあります。
サビ前にももちひろこが隠したものは?
サビに入る前の部分にももちひろこが隠した重要な仕掛けは2つあります。
一つは、この楽曲が全体的に8小節を1単位とする構成で出来ているのに対し、サビ前に2小節分のフレーズが挿し込まれていることです。
サビには最も大事なキーワードが含まれます。それを聴かせる前に2小節を入れることで、サビへの期待感が高まります。
そして、もう一つは、2小節の前半。「初めて知ったよ」という歌詞が乗っている部分に使われているコードです。
「オーギュメント」というコードなのですが、「初めて知った」つまり、自分も知らない自分を発見した心情を、歌詞とコードの両方を使って表現しているのです。
壊してはいけないのは
いよいよ「好きだから言えない」というフレーズが歌われます。
好きだから言えない 好きなんて言えない
トモダチでいい そばにいたい
だから言えないよ だから言わないよ
きみが好きだから
出典: 好きだから言えない/作詞:ももちひろこ 作曲:ももちひろこ