懐かしい"写ルンです"を覚えていますか?
富士フィルムが1986年に発売を開始したレンズ付きフィルムが"写ルンです"です。
今はスマートフォンで写真を撮ることが当たり前になりましたが、携帯電話もなかった時代。
"写ルンです"は写真を誰でも簡単に撮影できる安価な使い捨てカメラとして大ヒットしました。
世界で1億本以上を売り上げたこのカメラ。 今はアメリカのサウスカロライナ州の工場でだけ生産されています。
安田レイ「きみのうた」のMVをYouTubeで観る
"事故で亡くなった彼氏が使い捨てカメラを持って彼女の前にあらわれる。
思い出の写真を撮ろう。彼と彼女は使い捨てカメラで自分たちを撮影しはじめる。"
充電すれば撮影することができるスマートフォンを手にした現代人にとって、写真というものはとても簡単で何枚でも撮れて、みんなにみてもらうことが当たり前で、加工したりすることもできるものです。
生活の中に溶けこんでいて、制限もあまりありません。 でも30年ぐらい前には、まだまだ写真は制限がありました。
もっと以前は、モノクロだったり、フィルムがあったり、アナログでした。 いろんなものがデジタルに変わり、インターネットに接続されるとかつてあった写真というものに対する思い入れは、ひょっとすると薄らいでいるのかもしれません。
シンガー・安田レイの「きみのうた」のMVは、今という時間の大切さをあらためて教えてくれるMV。
可能性が拡張した現代において、時間に対する考え方や写真に対する考え方は変化して多様になっています。
でも時間が過ぎさっていることに変わりはありません。
使い捨てカメラが教えてくれることとはいったい何でしょうか?
安田レイ「きみのうた」の歌詞を読む
夜明けを待ちながら 静かに目をとじて
新しい風 待ってただけの 心にヒカリ射してく
出典: http://www.littleoslo.com/lyj/home/安田レイ-きみのうた-歌詞-pv/
ずっと夜だったのでしょう。 夜明けを待っています。 太陽が輝き出すと、自分の心にまで光が射してくるのかもしれません。 でも星空は消えてしまいます。
おやすみ 私の一番星 ずっと輝き続けて
願いを叶えてなんて 言わないよ そっと見守ってる だから
出典: http://www.littleoslo.com/lyj/home/安田レイ-きみのうた-歌詞-pv/
もし二度とあうことのできない人々のことを思い出す時があるなら、その時間は夜です。
誰もがこの世界の中でどこかでは生きていて、呼吸をしている。
そういうことを理解することもできます。
太陽が輝きだすとそういう感覚は忘れてしまいますが、夜にはそういう人々が記憶の中から呼びかけているのかもしれません。
そういう記憶の中にいる君のことを彼女は星にたとえているのでしょう。
答えなんていらないから ただ聴いて欲しい さよならじゃない 最後の言葉
君の歌を君がいない街で 歌い続ける
吹く風にさらわれた君の匂いを 探してしまうよ 記憶の中で
きっと出会える どこか遠い空で あの日のように
夢のなか 枯れない 花
出典: http://www.littleoslo.com/lyj/home/安田レイ-きみのうた-歌詞-pv/
"君の歌を君がいない街で歌い続ける"ということは、目の前にいない人々に対して歌っているということです。
そして夜の夢の中で、花が咲き続けているという表現はなんでしょうか?
かつてともに過ごしていた君と現実に一緒にいた時が、人生を花にたとえて咲き誇っていた時期だとしたら、その花が咲いていたという記憶がずっと鮮明に残っているのでしょう。
枯れない花はないけれど、記憶の中で過去は生き続けているのです。
会えない君への思い
会えなくなった君への思いがシンプルな言葉で歌われています。
MVとあわせて観ると、過去が大きくクローズアップされていることがわかります。
時代は変わった。前へすすまなければならない。 そういう思いはあっても、過去へのノスタルジーに支配されているのです。
それはそれだけ君との結びつきが深かったからかもしれません。
歌の中で、前へすすむことも示唆されていますが、この歌に歌われる君とは"過去の君"。
過ぎ去ってしまった日々への思いが音楽になっているのでしょう。
この歌で"夢のなか 枯れない 花"という部分はとても大切だと思います。
写真と時間
写真には過去が写っています。
アナログのフィルムならば、その過去はいっそうノスタルジックなのかもしれません。
過ぎ去った時間が目の前にあるのは、写真に撮っていたからです。
でも写真に撮影できていない大切な思い出がたくさんあるとしたら、思いかえすことしかできないかもしれません。
そして過去が語りかけてきます。 そういう過去はどうすればいいのでしょうか?
MVでは"シャッターをきるということはわたし自身と何かを切り離す行為"だと語られています。
言葉でも、写真でも、映像でも、大切な何かを表現することは、わたし自身と何かを切り離す行為かもしれませんね。
シンガー・安田レイについて
安田レイはアメリカのノースカロライナ州の生まれです。
日米のハーフで、10歳で宇多田ヒカルに憧れてシンガーを目指します。
13歳という若さで元気ロケッツという音楽プロジェクトのヴァーチャルなシンガー"Lumi"として起用され歌いはじめます。
ものすごく若くして歌いはじめた彼女は、安田レイとして2013年にデビューします。
このデビューは彼女にとって二度目のデビューだったのではないかと想像します。
ずっと歌い続けてきた彼女は、今作で作詞にもチャレンジしています。
シンガーとしての歌唱力が彼女の魅力。 まだまだ新しい歌を歌い続けてほしいと思います。
いくつか彼女の曲をピックアップしました。 聴いてみてください。