焼けつく跡が刻むもの
掌と蝶の関係
焼けつき
焼けつき
剥がれない掌の跡
出典: 蝶/作詞:天野月子 作曲:天野月子
曲はサビに入ります。
天野月子の魂のこもった歌声で歌い上げられるメロディ。
焼けついて剥がれない跡は、まさに紅のイメージそのものです。
掌の跡がなぜ蝶のイメージと結びつくのか。
それも「零~紅い蝶~」の中に隠されています。
首を締める掌。
それによってつけられた跡が、まるで紅い蝶のような形に見える。
つまり剥がれない掌の跡は、歌われている蝶そのものなのです。
羽ばたく蝶が象徴するものとは
ちぎれた翼で朱く染まる雲間を裂いて
上手に羽ばたくわたしを見つけて
出典: 蝶/作詞:天野月子 作曲:天野月子
傷ついた蝶が赤い景色の中を飛ぶ姿を思い起こさせる一節。
ちぎれた翼という言葉は、ひどく傷つき飛ぶこともおぼつかないような印象を受けます。
「零~紅い蝶~」になぞらえれば、それは幼い頃に足を怪我して走れない繭を思わせるもの。
けれど、今は上手に羽ばたいて飛んでいくことができる。
これは何を象徴するのでしょうか。
「零~紅い蝶~」の結末で、繭は妹であり主人公の澪によって首を締められ命を落とします。
けれど、それは繭の願ったことでもありました。
澪とずっと一緒にいたいと願う繭。
けれどそれは生きている限り叶うことではありません。
いつかは別れて別々の人生を送ることになる。
澪への強い想いを抱いていた繭は、物語の結末で穴を封じるための儀式に捧げられます。
それは双子のひとりがもうひとりを殺すこと。
魂を分けて生まれてきた双子はそうすることでひとつになり共に生きていくと伝えられていました。
繭にとってそれは、何より願うことにほかならなかったのです。
死んだ繭の身体は穴に落とされ、そこから一羽の紅い蝶が飛んでくる。
この蝶は、死んだ双子の魂の象徴と言われているものでした。
繭は傷ついた肉体を捨て、愛する妹とずっと共にいるという願いを叶えることができたのです。
上手に羽ばたく、という言葉からは切なさと共に幸福感も伝わってきます。
その幸福感は傷つき大きなものを失いながら、愛するものと共にいられる魂の幸福なのです。
繭の中の永遠
永遠が花開く場所
繭に籠もり描いた永遠は
どこに芽吹き花開くのだろう
出典: 蝶/作詞:天野月子 作曲:天野月子
繭は先程から登場している通り、「零~紅い蝶~」の主人公澪の姉「繭」の名でもあります。
同時に、蝶になる前の状態をイメージさせる言葉です。
蝶が死んだ魂であるなら、繭は生きている身体とも言えるでしょう。
蝶として羽化する前のわたし。
それは繭に籠もるように心の内に籠もり、大切な人との永遠を夢見ています。
ですが、その夢が叶う場所をわたしは知りません。
その思いが花開く場所はどこにもないのです。
続く闇夜の中で
朝はやがて闇夜を連れ戻し
わたしの眸を奪ってゆく
出典: 蝶/作詞:天野月子 作曲:天野月子
朝と夜は永遠に繰り返すもの。
朝が来ても、いずれは真っ暗な夜がやってきます。
わたしは光に満ちた朝よりも闇夜に目が向いてしまう。
それは願いが叶わないからです。
どんなに明るく幸せに見えても、いずれは闇夜のような苦しみがやってくる。
それがわかっているからこそ、わたしは安易に幸せに浸ることができません。
また、「零~紅い蝶」の舞台となる皆神村はずっと闇夜に包まれている場所。
こうしたゲーム内のイメージも歌詞に反映されています。