ここでまず驚くのが、「君」も魔法を使うことが出来るということです。
「君」の魔法は「僕」の中に眠っている“何か”を呼び覚ますことが出来るのでしょう。
「君」が魔法をかけると「僕」の胸の辺りがふわっと少しずつ眩しく照らされていきます。
誰しも胸の内に人には言わない想いや願望を隠し持っているもの。
本当はこうしたいという気持ちがあっても、何でも思うがまま動けるわけではありません。
そうやって人は少しずつ我慢を積み重ねながら周りと共存しているのでしょう。
しかし我慢ばかりしている人生が楽しいかと聞かれたら、心から頷ける人はいないはずです。
もしかしたら「君」は「僕」もこんな風に本当の気持ちを隠していることを知っているのかもしれません。
「僕」の中に閉じ込められていた“キラキラ”が眩しい光に誘われ目を覚ましていきます。
「君」はきっかけ
1番の歌詞から「君」は「僕」の中にある“何か”を呼び覚ます“鍵”となっていることが分かります。
子供の頃は、何が無理とかできっこないとか考えたりすることは無かったでしょう。
しかし成長するにつれ「これは自分には出来ない」等、やる前から決め付けてしまうことが増えていきます。
やりたい事があっても何かしら理由を付けてすぐに諦めてしまうのです。
そうして段々、思っていることを口にすることも少なくなってしまいました。
「大人になるとはそういう事」と言う人もいるかもしれません。
ですが、その言葉をそのまま子供に伝えたらどうなってしまうでしょうか。
きっと「将来は〇〇になりたい」というような夢を持つ子供が居なくなってしまいます。
色々と挑戦して出来る事が増えていくのが子供でしょう。
子供の頃、何事もすぐ諦めてしまうような人になりたいとは考えていなかったはずなのです。
「君」は大人になる過程で忘れかけていた大事なことを思い出すきっかけをくれているのかもしれません。
新しく気付けたこと
希望の光が射す
それは綺麗で鮮やかな話
泣きたくなるほどに暖かくて
夢を見ていた
一瞬だけどそこは希望で満ち溢れてた
出典: 魔法の本より/作詞:sui 作曲:sui
「君」が「僕」にかけてくれた魔法は“子供の頃を思い出せる魔法”だったようです。
いつの間にか忘れていた、自分がやりたい事に正直でまっすぐだったあの頃の記憶が蘇ってきます。
何もかもに希望が持ててキラキラして見えた子供の頃の自分に一瞬戻ることが出来たのです。
忘れかけていた純粋な自分を見ると、懐かしいような羨ましいような気持ちになるのでしょう。
大切な思い出に触れることは、自分にとって大事なことを思い出すきっかけとなるのです。
「僕」に秘められていた強さ
「僕はもう一人でも大丈夫」
少しだけど大人になれたんだ
魔法なんてさこんな僕には
必要ないみたいだから
出典: 魔法の本より/作詞:sui 作曲:sui
やりたい事や目標を見失ってしまっていた「僕」を「君」は心配していてくれたのでしょう。
だからこそ「僕」だけに声をかけて、子供の頃を思い出すきっかけをくれたのです。
「君」の言う“僕の魔法”とは、“願いを何でも叶える力”のことだったのでしょう。
「僕」がまた未来に希望を持って前を向いていけるようにと「君」が教えてくれたのです。
しかしその力は「僕」はもう要らなくなりました。
なぜかというと、例え叶わなくても何でも挑戦していく楽しさを思い出すことが出来たからです。
重要なのは出来るか出来ないかではなく、やってみるという行動力。
何でも挑戦していく怖いものなしのあの頃が一番キラキラしていたという事実に気が付いたのです。
「君」が教えてくれたもの
「君」の使命
君は「素敵な想いだね」と
僕の頬にそっとキスをした
空に星が輝いて
君はふわりとどこかへ消えた
きらきら光る星のような君は
魔法に会いに行く
出典: 魔法の本より/作詞:sui 作曲:sui
また未来に希望を持つことの出来た「僕」の想いを聞いて「君」はきっと喜んだのでしょう。
「君」のキスはもう「私が居なくても大丈夫だね」という“サヨナラのキス”です。
そうして照れる間もなく「君」は姿を消してしまいました。
突然現れて、「僕」にキラキラした世界を思い出させてくれた「君」は“星”だったのかもしれません。
いつも空に居て「僕」たちのことを照らし見守ってくれているのでしょう。
そして、キラキラを見失っている人のところへ来ては大切な事を思い出させてくれるのです。
「君」はいまもまたどこかで、誰かに光を照らして輝きを取り戻すお手伝いをしていることでしょう。
「僕」の大事な物語
少し昔のある話
君と僕が出会ったあの日
きらきら光るそのページを
君とめくる物語
僕の昔の物語
出典: 魔法の本より/作詞:sui 作曲:sui
「君」との物語を誰かに話すと、「夢でも見たんでしょう」と他の人は笑うかもしれません。
しかし「僕」は確かに、見失っていたあの頃の“キラキラ”した気持ちを取り戻しています。
それは紛れもなく「君」がきっかけをくれたから蘇ってきた記憶です。
例え誰も信じてくれないとしても、「僕」にとっては真実で大切なきっかけになった物語。
もう二度と失くさないように、胸の内に大切に仕舞っておいているのでしょう。