スピッツ【猫になりたい】
2017年、デビュー30周年を迎えたバンド
1987年に結成され、これまで不動の人気を誇るバンド・スピッツ。
激しさを感じさせるロックではありませんが、ボーカル草野の繊細な歌詞で人々の心を掴んできました。
彼らの音楽は、人の心をエモーショナルな(いわゆるエモい)感情にさせるオルタナティブ・ロック。
アコースティックな落ち着くメロディでありながら、そこに込められた感情は痛いほどに強い!
ドライブをしている時、眠れない時、失恋した時、元気が欲しい時…。
どんな時も、スピッツの楽曲からはその瞬間に欲しい言葉が見つかるのです。
そんなスピッツも2017年にはデビュー30周年を迎え、誰もが名前を知るベテランのバンドに。
2019年春には100作目のNHK連続テレビ小説【なつぞら】の主題歌を担当。
新曲【優しいあの子】が起用されたことで、改めて今注目されているのです。
今回はそんな再注目されているスピッツが1994年にリリースした、【猫になりたい】の歌詞を考察します。
本当はA面に収録されるはずだった?
今回ご紹介する【猫になりたい】は、1994年にリリースされたシングル【青い車】のB面に収録されています。
そのため、コアなファンでないと知らないという方もいるのではないでしょうか。
しかし、実は当初【猫になりたい】はA面に収録される予定だったのです!
それはCDのジャケットが猫のモチーフになっていることからも明らか。
誰かにこっそりと教えたくなってしまう秘密です。
また、シンガーソングライターのつじあやのがカバーしたことでも有名となりました。
そんな【猫になりたい】はストレートな歌詞ではないため、人によって解釈は分かれます。
ただの恋愛ソングではなく、切なさも危うさも感じさせる歌詞。
一体、どういう点で「猫になりたい」という言葉が使われているのでしょうか。
筆者独自の視点で、歌詞の意味を考察していきます。
ハッピーエンドが想像できない物語
この歌詞の登場人物は主人公と“君”の2人。
性別は特定しない方が共感できると思いますので、あえて主人公が男の子か女の子かは推測しません。
歌詞はそんな主人公と“君”の恋物語を描いています。
この歌詞を見終わった後、きっと切ない気持ちになってしまうでしょう。
何故なら、誰もがこの恋物語のハッピーエンドを想像することができないはずだからです。
どのような理由かは分かりませんが、主人公と“君”は結ばれることはない。
それでも今はただ一緒に過ごしていたい…そんな気持ちを描いた歌詞に感じました。
それでは、切ない歌詞の世界を更に深く探っていきましょう。
主人公の一途な想い
まずは1番の歌詞から考察していきましょう。
ここでは、主人公の“君”に対する一途な想いが溢れています。
この恋が終わりを迎えたとしても
灯りを消したまま話を続けたら
ガラスの向こう側で星がひとつ消えた
からまわりしながら通りを駆け抜けて
砕けるその時は君の名前だけ呼ぶよ
出典: 猫になりたい/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
この歌詞から推測するに、主人公と“君”は同じ部屋にいることが分かります。
きっとただの友達よりも2人は深い関係なのでしょう。
そろそろ寝ようとして、部屋の電気を消してもまだ寝られずに2人はお喋り。
普通なら、ほのぼのとしたカップルのやりとりにも見えます。
しかし、2行目では主人公の切ない感情が読み取れるのです。
星が消えるという言葉は、何かが終わることを彷彿とさせる表現。
主人公も星が消えたことを見て、“君”との関係が終わることを想像してしまったのでしょうか。
「からまわり〜」という歌詞から2人の関係が、順調ではないことが分かります。
もしこの恋が終わったとしても、最後の最後まで“君”を求めていたい…。
主人公は“君”との関係を何とか続けるために、狭い路地を抜けるかのように必死になってきたのです。
ずっと君がそばにいてくれる幻
広すぎる霊園のそばの
このアパートは薄ぐもり
暖かい幻を見てた
出典: 猫になりたい/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
霊園が見える少し不気味で、爽やかな雰囲気がないアパート。
それも主人公を不安にさせる1つの要因でした。
恋が上手くいっていない時、人は何を見ても、どんなことがあってもネガティブに捉えてしまうもの。
自分を囲む場所も空気も、この恋を応援してくれてはいない…。
きっと主人公は“君”のいない1人でいる時間はいつも不安でいっぱいなのでしょう。
そんな時は、想像で自分の気持ちを安心させて、幸せに浸るのです。
暖かい幻という言葉はきっと、ずっとそばにいてくれる“君”のこと。
本当は自分のアパートでずっと2人きりで過ごしていたい。
それは叶わない夢なのです。
1人で静かに眠る主人公の姿が想像できて、胸が締め付けられそうです。