まるで和製エルヴィス・プレスリー
坂本九はエルヴィス・プレスリーから強い影響を受けました。
エルヴィス・プレスリーはご存知のとおり、50年代アメリカを代表するロカビリー歌手です。
特にこの「見上げてごらん夜の星を」は当時日本では珍しい6/8拍子のバラード。
プレスリーの「好きにならずにいられない (原題:Can’t Help Falling in Love)」を彷彿(ほうふつ)とさせます。
海外でも耳に馴染む語りかけるような甘いメロディが、世界中に支持されたのでしょう。
「見上げてごらん夜の星を」の歌詞の意味を解釈!
「見上げてごらん夜の星を」の最大の魅力。
それは、不器用な男が歌うさりげない愛の告白です。
一体どんな愛の告白が歌われているのでしょうか。
その歌詞のなかで描かれている世界を解釈していきます。
美しい星空の情景が浮かぶ歌詞と、恋人同士の2人の甘い世界に注目です。
不器用な男の告白ソング
「見上げてごらん夜の星を」は不器用な男が歌う告白ソングです。
ところで、「不器用な男」と聞いて真っ先に思い浮かぶ人は誰でしょうか。
保険会社のテレビCMで「不器用ですから」と語った昭和の名優・高倉健でしょうか。
あるいは、「君といつまでも」の加山雄三でしょうか。
昭和の理想の男性像といえば、こういった多くは語らない姿でしょう。
「男は背中で語る」という言葉もありますが、寡黙な男性は魅力的なものです。
この「見上げてごらん夜の星を」でも、坂本九は多くは語りません。
そこにあるのは、小さな星々と恋人の姿だけ。
無口な男性の、それでいて力強い愛情は人々の心を打ちます。
そんな魅力が「見上げてごらん夜の星を」にはあるのです。
倒置法で歌われる甘いセリフ
見上げてごらん夜の星を 小さな星の
小さな光が ささやかな幸せを うたってる
出典: 見上げてごらん夜の星を/作詞:永六輔 作曲:いずみたく
曲中で何度も歌われる「見上げてごらん夜の星を」というフレーズ。
倒置法を使った印象的なフレーズになっています。
倒置法とは、文章の前後を入れ替える技法です。
「夜の星を」と「見上げてごらん」を入れ替えることによって、フレーズに後味を残します。
特に「ささやかな」という形容詞が情緒深く魅力的です。
夜空に光る小さな星の光から感じられる幸せ。
それは、ささやかだけれど確かな、そんな幸せでしょう。
そういった歌詞のなかでの言葉選びのひとつひとつが、曲全体に深みを出しているのです。
また、この「見上げてごらん」というやさしい投げかけにも注目です。
ジョン・レノンの「Imagine」で歌われる「想像してごらん」というセリフにも通じるところがあります。
夏目漱石が月に愛を詠んだように、坂本九は星に夢を歌ったのです。
恋人と追いかける夢
手をつなごう僕と 追いかけよう夢を
二人なら苦しくなんかないさ
出典: 見上げてごらん夜の星を/作詞:永六輔 作曲:いずみたく
曲の中で歌われるこの部分の歌詞はまさに愛の告白です。
当時の日本的価値観では夢を追いかけるのは男でした。
しかし坂本九は手をつないで2人で夢を追いかけようと語りかけます。
とても現代的でロマンチックな発想ですよね。
この部分でも倒置法が巧みに使われていて、何ともいえない余韻が醸し出されています。