結び付いたふたつの才能
彼女の歌声は神様からのギフト
竹内まりやはソングライティングの才能に恵まれているのはもちろん、なんといっても素敵なのはあの声です。
少し低めで深みのある、心地よく響く歌声は楽曲の魅力を何倍にも増しているように思います。
彼女の声を聴いているだけで気分が良くなるようで、なんだか癒やし効果もありそうです。
『私、音域狭いんです』とラジオで話しているのを聴いたことがありますが、そんな感じはしませんね。
彼女の歌声はまさに神様からのギフトだと思っています。
そんな彼女が素敵に歌う曲が2001年にリリースしたシングル「真夜中のナイチンゲール」です。
名盤『Bon Appetit!』
この曲は同年に発売された竹内まりや久々のオリジナル・アルバム『Bon Appetit!』に収録されました。
「毎日がスペシャル」や「ノスタルジア」など名曲満載の名盤はご主人の山下達郎のプロデュースで制作。
ふたりが出逢ったことで生まれた数々の名曲の中の1曲が「真夜中のナイチンゲール」というわけです。
彼女は山下達郎のことを”日本のポップス界の人間国宝”と呼んでいます。
また、彼女自身が山下達郎のファンでふたりは”親友”でもあるという羨ましい関係なのです。
ふたつの才能が結び付いたのは奇跡のような出来事で、お互いの音楽活動のプラスにもなっているのでしょう。
日本のポップス界にとっても幸運な出逢いだったと思います。
ナイチンゲールに託したものは?
美しい声で鳴く小夜啼鳥
ナイチンゲールの和名は歌詞の中にも出てくる”サヨナキドリ”で、漢字で書くと「小夜啼鳥」。
語感も漢字もなんだかロマンチックです。
サヨナキドリ (小夜啼鳥、学名:Luscinia megarhynchos)は、スズメ目ヒタキ科に属する鳥類の一種。 西洋のウグイスとも言われるほど鳴き声の美しい鳥で、ナイチンゲール(英語: Nightingale)の名でも知られる。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/サヨナキドリ
オープニングでも聴こえるサヨナキドリの声は確かに美しく、春の陽気を想像させるような鳴き声です。
竹内まりやは夜中に鳴くこの鳥にどんな想いを託したのでしょうか。
“ナイチンゲール”から連想するのは傷ついた人を献身的に看病する看護師です。
「真夜中のナイチンゲール」はどんなことを歌っているのか、歌詞を紐解きながら考えてみましょう。
彼が抱える哀しみとは?
孤独な夜を和らげてあげたい
あなたの瞳に映る 哀しみの理由を教えて
どんなに近くにいても 届かない心の裏側
My Love, 私は闇夜に my love, さえずる サヨナキドリ
ただそばにいさせて 忍び寄る孤独から守るわ
出典: 真夜中のナイチンゲール/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや
彼はどこか人を寄せ付けないような雰囲気を持っていそうです。
それは何故なのか彼女には分かりません。
自分から喋ろうとしないのであれば分かるはずもないし、それほど辛いことなのかもしれません。
愛する人が苦しんでいるのにその理由を教えてもらえないのは彼女にとっても辛いでしょう。
手が届くくらいそばにいるのに何もしてあげられないのであればなおさらです。
彼の心を読み取るにはどこか遠くを見ているようなその瞳から想像するしかありません。
彼の言葉ではなくて瞳から伝わるものは哀しみです。
闇夜という言葉からは彼が抱える深い孤独が伺えます。
真夜中に美しい声でさえずるサヨナキドリのように、孤独な夜を少しでも和らげてあげたい。
そんな彼女の優しさや決意が伝わってきます。
途中から入るシンプルなアコースティックギターのストロークが彼女を後押しするようです。
最後の行の一番高い音で竹内まりやの声が少しだけ割れたように聴こえるところがあります。
ミディアムテンポの心地よさに切なさが加わるポイントで、最初の聴きどころがここです。