女心を切なく歌わせたらピカイチのシンガー
竹内まりやは1978年にデビューしたシンガーソングライター。女心を切なく歌い上げる曲で一時代を築いた女性歌手です。
高音が出る女性シンガーがもてはやされる中で、女性としては低めの声でしっとり歌いあげる彼女の歌は独特な世界観を築いています。
その美しい容姿からアイドル歌手や元女優の歌手かと思われがちですが、筋金入りのシンガーソングラーターで、慶応大学在学中にヤマハのポプコンにも出場しています。
デビュー曲はシングル『戻っておいで・私の時間』、アルバム『BEGINNING』。
デビュー翌年の1979年に発売したシングル曲『SEPTEMBER』では日本レコード大賞新人賞を受賞し、さらに翌年の『不思議なピーチパイ』も資生堂のCM曲として起用されヒット。
順調な歌手生活をスタートします。
しかし思わぬところから邪魔が入ります。美しく可愛らしい容姿ゆえにアイドル的な仕事のオファーが多くなり、自分が望む音楽活動とのギャップに苦しむようになったのです。
結婚、そしてヒット曲を連発
一旦音楽活動を休業した彼女。私生活ではアレンジャーとして曲作りに参加していた山下達郎と結婚します。
表舞台に立つことはなくなりましたが、作詞家や作曲家としての活動が盛んになります。
そして子供を産み、家庭を優先しながら活動を続け『AFTER YEARS/駅』『シングル・アゲイン』『マンハッタン・キス』『純愛ラプソディ』など次々とヒットを連発していきます。
そして今回紹介する『告白』もそんな多くの人に愛された曲の一つです。
夫の山下達郎って?
竹内まりやもそうですが、山下達郎もほぼメディアでみることのない歌手なので、よく知らないという人も多いかもしれません。
でも、毎年12月になると日本中で流れる『クリスマス・イヴ』なら、聴いたことがない人を探す方が難しいですよね。
J-popの先駆者、山下達郎
山下達郎は、いわゆる歌謡曲一辺倒だった日本の音楽界に、洋楽的な要素をいち早く取り入れて浸透させたジャパニーズポップの先駆者といえる人です。
音を作ることにこだわり、ボーカルやバックコーラスはもちろん、ギター、シンセサイザー、パーカッションなども全て一人で担当して曲を作っています。
後に妻となる竹内まりやと出会ったのも、彼女の曲をアレンジしたのがきっかけで、84年以降の竹内まりやの楽曲は全て山下がアレンジとプロデュースを手掛けています。
だから90年に発売された『告白』も夫婦共作となる楽曲。そして今回のテーマにあるように、夫婦共作にも関わらず歌詞の内容が衝撃的なのです。
『告白』の歌詞を検証!そんなこと歌っていいの!?
まずは曲を聴いていただいて、それから歌詞をじっくり検証していきましょう!
夜中に鳴り響く電話のベル
Why? 寝つかれぬ夜 鳴り響く電話のベル
Sigh・・・ 虚ろな耳に 懐かしいあなたの声
Ah とまどう心で 上手な返事を探せば
長い月日飛び越えて ときめくのよ
出典: 告白/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや
歌詞の最初に描かれているのは、夜中の静寂の中に電話が鳴り響くシーン。
受話器をとれば、聞こえてきたのは昔の彼の声。
急なことに心の準備も追いつかず、何を言えばいいのか、何を言ったら上手く返せるのかを探っている様子がうかがえます。
もしかしたら、振られてしまった彼なのでしょうか。そうでなければ、「上手な返事を返さなくちゃ」と取り繕うことはないはずです。
そして次の一文で彼女の本心が見えます。久しぶりの声に、そして突然電話をかけてきた彼の真意を探りながらときめいているのです。
今さらの愛の告白
違う道を選んだあなたに
今頃愛打ち明けられても
引き返せないと知ってるから
この暮らし壊さないで
出典: 告白/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや
そして物語は急展開。電話で愛を打ち明けられたことがわかります。
元彼からの突然の懐かしい電話です。彼女の頭にも、久しぶりに電話をかけてきた彼の意図を想像して、復縁の二文字が多少はちらついたかもしれません。
でも、彼女はバッサリ切り捨てます、何を今さらと。
今の暮らしを壊さないでとは、かなり強い拒絶の言葉ですよね。
よく、女性は過去の男性を上書きするようにきっぱり忘れ、男性は大切に残して並べていくと言われますが、ここにもそんな女性の潔さが見てとれます。