プロの作詞家の技術

奥深い言葉のつながり

覚えておきます 小さなことまで
あなたとすごした 大事な夜は
七色のネオンさえ 甘い夢を唄ってる
宵闇の大阪は 二人づれ恋の街

出典: 大阪ラプソディー/作詞:山上路夫 作曲:猪俣公章

冒頭の一行は、8音節の言葉を重ねる、作曲家に優しいフレーズです。

日本の歌曲は伝統的に五七調の詞が多く、4拍子に合わせるには音節を引き伸ばさねばなりません。

『君が代』の上の句は、5音節に7音符、7音節に9音符が充てられています。

メロディ次第で印象は変わりますが、"間延び"と受け取られない工夫が必要なのです。

8シラブル16シラブル歌詞なら、悩むことなく4拍子のメロディに乗せられます。

山上路夫はこのようなセンスに優れていました。

もちろん、全ての歌詞がこの規則で書かれているわけではありません。

例えば「翼をください」の最初の一行は、6シラブルの繰り返しになっています。

Aメロのリズム構成が8分の6になるであろうことを分かって並べた言葉です。

なおかつ「詩として成立している」ところは、至芸といって良いでしょう。

自由自在の作詞家としか言いようがありません。

詩作と作詞の境界がどこかは難しい命題ですが、"言葉で醸される情感が豊か"がカギになります。

単なる情景描写で終わらず、その中に人の心の機微があり、広く共感を呼ぶことが大切。

ご当地ソングでそれを実現しているところに、作詞家山上路夫の実力が表れています。

海原千里の大阪愛

歌唱力抜群の上沼恵美子

【大阪ラプソディー/海原千里・万里】歌詞を解説!大阪の街をお散歩デート?!ふたりの甘い夢とはの画像

上沼恵美子さんは、30年ほど前にワイドショー番組のレギュラーでした。

ある日、上沼さんは"お菓子のお姫様"という設定で、有名パティスリーからの生中継。

前もって渡した台本は手に持たず、構成や進行は全て頭の中に入っていたようです。

上沼さんが司会者2人を迎え入れる案内役として、お店の玄関からのオープニング。

台本では、「ようこそお越しくださいました」と改まったセリフでしたが、上沼さんは違いました。

よ〜来たの〜!何しとった〜ん!」

"ベルサイユのばら"みたいな衣装のままで、クルクル回りながら叫びます。

いきなりのアドリブで、番組の雰囲気を完全に自分の世界に引き込みました。

番組の中で「愛の讃歌」を唄う構成だったのですが、上沼さんの歌が抜群

あまりの歌唱力に、関係者一同が唖然としました。

中継現場の大喝采の中で、上沼さんは満面の笑顔。

ごめんな〜!歌、うますぎて!

"ベルばら風"の衣装のまま、大阪弁丸出し。

全員、ズッコケました。

上沼恵美子の大阪愛だったわけです。

古き良き"大阪"の香り

"御堂筋"が元気だったころ

ベンチャーズが欧陽菲菲の歌として作った『雨の御堂筋』というヒット曲があります。

日本が高度経済成長期に沸き返った昭和30年台から50年台。

大阪は繊維産業と化学工業で日本の経済を支えました。

ご当地ソングのテーマとして、御堂筋がもてはやされた時代です。

『大阪ラプソディー』の歌詞にあるように、本当に恋人たちが御堂筋をそぞろ歩く姿がありました。

「住友金属」「新日鉄」など、重厚長大産業の拠点もこの当時は大阪でした。

製造産業が海外の安い労働力に押されて縮退するとともに、高度成長期は収束します。

大阪の経済も停滞し、多くの製造産業が大阪を離れていきました。

活気に満ちていた御堂筋は、徐々に抜け殻のようになり、散歩する恋人たちは消え去ります

『大阪で生まれた女』も東京に行き、『悲しい色やね』は寂しい大阪港の姿を唄います。

海原千里・万里が唄う『大阪ラプソディー』は、大阪が元気いっぱいだった時代のアイコンなのです。

まとめ

"古き良き時代"を未来にも

【大阪ラプソディー/海原千里・万里】歌詞を解説!大阪の街をお散歩デート?!ふたりの甘い夢とはの画像

ここまで、海原千里・万里の『大阪ラプソディー』について、エピソードをご紹介しました。

高度成長期を懐かしむ歌は、最近多く企画されています。

映画『Always―三丁目の夕日』に象徴される、"夢と希望に満ちていた時代"だったからでしょう。

政府が手を尽くしても、「2%の物価上昇」は実現せず、国民の年収も伸びていません。

60年前、日本政府は「所得倍増計画」を発表し、それは10年足らずで実現しました。

何かが動き始めている、何かが変わろうとしている。

そんな予感が、小学生から老人にまで、溢れていました。

皆さんも、『大阪ラプソディー』を唄ってみて下さい。

幸せな社会が、未来が、みんなを待っていると実感できる時代。

そういう時代がもう一度作れるはずなのです。

同じような企画について、下にもご紹介します。

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