春と言えば桜かもしれませんが、それよりも先に咲く花があります。

人々を惑わすように咲く桜と違い、こぶしは気を付けないと見逃してしまう早春の花。

コブシ(辛夷)は、落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。3月から5月にかけ、枝先に直径6-10cmの花を咲かせる。花は純白で、基部は桃色を帯びる。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/コブシ

似ている花にモクレンがありますが、こぶしはそれよりも素朴なナチュラル系。

木に咲く白い花は春を告げるとともに、その白さには温もりもあります。

歌の主人公はますます遠い目になっているのかも。

思い出したこぶしの白さで、心の中にあった春がスクリーンの様に広がりました

募るのは望郷

荷物の中身は?

千昌夫「北国の春」の歌詞を解説!都会から故郷への思いを馳せる…寒い冬を乗り越える”思い出”を紐解く!の画像

季節が都会では わからないだろと
届いたおふくろの 小さな包み
あの故郷へ 帰ろかな帰ろかな

出典: 北国の春/作詞:いではく 作曲:遠藤実

コンクリートの建物とアスファルトの道路。緑はあっても植込みや公園の一部。

遥か遠くを眺めようとしても見えるのはそびえたつビル群。

空を見上げることも無い、自宅と仕事場を行き来するだけの毎日。

意識をしないと、季節が移り変わることを知らないままで時間が通り過ぎてしまいます。

そんな暮らしを心配して送ってくれた小さな荷物。

自然が移り変わることで、季節の変化を知る故郷を思い出して欲しい…

こんな思いで用意をしたのでしょう。

故郷からの小さな荷物を手にしたことで、動きも時間も止めてより深い思い出に浸っていきます。

荷物の中身も気になりますね。季節を思わせるもの、春を感じられるものなのでしょう。

いつも母が作っていた、蕗の薹(ふきのとう)や土筆(つくし)を使った常備菜などと想像するとホッコリしちゃいます。

忘れていた故郷と今暮らす街に春が来ていることが、一挙に心を占領。

そして、故郷の春の空気を思い切り吸いたくなりました

音からも春が…

“落葉松”読めます?

雪どけ せせらぎ 丸木橋
落葉松の芽がふく 北国のあゝ北国の春

出典: 北国の春/作詞:いではく 作曲:遠藤実

春が来れば雪が溶けます。積もった雪が次第に消える風景は春の到来を教えてくれますね。

積雪がある時は川の水量は少なめですが、雪が溶けた水で川の流れも勢いを増します。

シ~ンとしていた白い風景に変わって、水が流れる音が聞こえてきました。

川に架かる木製の橋、そこから見えたのは春が来ていることを知らせる木

落葉松です。

カラマツ(落葉松)は、マツ科カラマツ属の落葉針葉樹。長野県でも根づきやすく成長が速いことから戦後大規模な植林が行われ、造林面積の約50%がカラマツ林となった。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/カラマツ

信州・長野を代表する木ですね。作詞家いではくさんの故郷の風景がここでも広がります。

川を流れる水の音に合わせるように、新しい芽を出す落葉松。

透明な水と芽吹いた緑のコントラストは、生まれたばかりの春の色です

風はまだ冷たくても、心弾む春は確実に来ていますね。

故郷で見ていた風景を思い出していると、その時一緒に見ていた人の姿も心に戻ってきました。

心の中の春はここに…

故郷と青春はセットで

好きだとおたがいに 言い出せないまま
別れてもう五年 あのこはどうしてる
あの故郷へ 帰ろかな帰ろかな

出典: 北国の春/作詞:いではく 作曲:遠藤実

新しい季節の春は旅立ちの時。新たな出会いがあると同時に別れもありますね。

待ち遠しい春ですが、切ない思い出を残してくれました

歌詞の主人公が楽しかった故郷での暮らしを終える一場面が、歌詞になっています。

見慣れた風景の前に立つ、故郷を離れる男子と故郷に残る女子。

二人の間にあるのは、思いを口にできないもどかしさだけ。

早春の空の下で言葉少なに佇む二人は、青い春のメンタルそのもの。

冬から春に変わったばかりの風景も、二人を静かに包むだけです