イラストが切り替わる中で、彼女がフラスコの中に入り、手を伸ばしている場面がありました。

実際に人が入れるぐらい大きなフラスコがあるとは考えにくいので、これは彼女の想像の中のことでしょうね。

手を伸ばしている様子は「何かを求めている」ように感じさせます。

そして、フラスコに閉じ込められた姿は「何かに囚われている」ような印象ですね。

彼女は一体何に囚われていて、何を求めているというのでしょう。

様々な表情を見せる空…だけど彼女は…

リリックビデオの中で主人公の少女は、まるで浮かんでいるかのごとく、空をバックに描かれていました。

そしてその空が様々な表情を見せるのが色鮮やかで、印象に残った方も多いのではないでしょうか。

夕焼けに染まったような真っ赤な空や、赤にいたるまでのピンクやオレンジだったり。

夜をイメージさせる紺色の空、晴れた日を思わせる水色の空まで。

…と、ここで気になったことが一つ。

空が表情豊かに変わっていっているのに対して、少女は顔色一つ変えないのです。

それらが対比になって、彼女の感情がより浮き彫りになっているんですよね。

空が何度も色を変えていることは、暗に時間の経過を表しているようにも感じます。

彼女は長い時間、その陰鬱とした気持ちにさいなまれていたのではないでしょうか。

いろいろと書きましたが、これは飽くまでも映像を観た印象でしかありません。

そして真意はきっと歌詞の中に隠されているはず。

ということで、少しだけ歌詞の内容も探ってみることにしましょう。

「三月がずっと続けばいい」と彼女が言ったのは

「三月がずっと続けばいい」
振り向けなかったゆめのおわりを
なんてことない言葉を
なんでもないような秘密を
またおぼえてる

出典: 三月がずっと続けばいい/作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太

まず冒頭で歌われる「三月がずっと続けばいい」という言葉にはどんな意味が込められているのか。

それはきっと、大切な人との別れが迫っているということ。

彼女が学生であれば三月は卒業の季節。

それをきっかけに、大切な人と別れることになる場合だってあるでしょう。

「振り向けなかったゆめのおわり」というフレーズが、彼との日々が夢のようだったということを彷彿とさせます。

夢のような日々を過ごした彼女は、当時その日々の終わりを直視できなかったのでしょう。

彼女の服に描かれた秘密という言葉の真意

彼女の着ていた黒いパーカーに描かれた「秘密」という文字の意味も明らかになりましたね。

秘密とは、彼との間にあった二人だけの秘密のこと。

恋人同士なら、二人しか知らないこと、他の人には伝えていない二人で経験したことって、誰だってあるものですよね。

恋人は二人きりで会うことの方が多いのだから、そんなの当たり前といえば当たり前。

でもその「二人しか知らないこと」が彼女にとってはとても大切なことだったのです。

「二人しか知らないこと」が二人が恋人だという証拠で、二人の関係を形作るものだったから。

長い時間が経っていた

「三月がずっと続けばいい」
春が来て思い出すよ
なつかしくてわらっちゃうよ
泣いてしまうよ

出典: 三月がずっと続けばいい/作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太

楽曲としては、ここからいよいよクライマックスという部分で登場する歌詞ですね。

この部分から感じられることは、彼と別れてからもう長い時間が経っているということ。

彼と別れた三月から、また春が訪れているわけですから少なくとも一年は経っていることになります。

別れた直後で「なつかしい」というのもなんだか変ですからね。

リリックビデオで空の色が目まぐるしく変わっていったのは、この時間の流れを表していたのではないでしょうか。

フラスコの中に囚われていたのは

フラスコの中に囚われていた彼女は、きっと彼との思い出にいつまでも囚われている様子を表していたのでしょう。

「三月がずっと続けばいい」という言葉も、「なんでもないような秘密」という言葉もこの1曲の中で何度も何度も繰り返されます。

それは別れてから長い時を経た今でも、彼女がその日々を未だに求めていることを表しているのではないでしょうか。

彼女は彼との思い出に囚われ、彼との日々を求めて手を伸ばしていたのです。

「なんてね」
「じゃあ、」
「さよなら」

出典: 三月がずっと続けばいい/作詞:堀江晶太 作曲:堀江晶太

このまま話が終わってしまっては、いつまで経っても彼女は前に進むことができません。

楽曲の最後を飾るこれらの会話が、後ろ髪を惹かれながらも前に進もうとする彼女を表しているのだと信じたいですね。

未練によって成長した主人公