切ない恋の思い出
三月のパンタシア
2015年に活動開始、さらにその翌年にはメジャーデビューと勢いよく突き進む三月のパンタシア。
彼ら最大の魅力はなんといっても、その世界観にあるでしょう。
どことなく、吹いたらとんでしまいそうなフワフワとした揺らぎ・儚さを感じられるのです。
この繊維な表現が多くの共感を集める理由でしょう。
【煙】製作の経緯
今回ご紹介する楽曲は、彼らの自主企画「ガールズブルー」の1つとして発表されたもの。
ボーカルのみあさんが紡いだ小説をもとに、n-bunaさんが楽曲を製作しました。
2019年12月から7回にわたって投稿された小説は、約1か月後の2020年1月24日に完結。
その翌日の1月25日に、【煙】が配信限定でリリースされました。
小説と【煙】の物語とは
主人公は大学を卒業したばかりの女性。
そんな時、ふと喫煙所をながめたことから17歳の時に経験した恋愛を思い出すことになります。
バイト先のライブハウスで出会った1人の男性。
その男性に抱いた主人公の心模様を繊細に描いたストーリーは、「青春」の一言で終わらせることなどできません。
背伸びしたい年頃だからこそ抱く感情を丁寧に描いた小説は、みあさんのTwitterで読むことができますよ。
そんな物語の世界を反映させた、切ない恋の物語をお楽しみください。
初めての
君の温度に触れた 夜は
何処までも遠いブルーで
唇から覗いた 白い
煙が気になる
出典: 煙/作詞:n-buna 作曲:n-buna
高校生だった主人公に対して、その恋の相手である「君」は大学生のお兄さん。
主人公がアルバイトをしていたライブハウスに単発バイトとしてやってきたのが最初の出会いでした。
小説中では煙草が、君を象徴するものとして描かれています。
つまりタイトルや歌詞中に登場する「煙」とは、煙草から立ち上っているそれなのでしょう。
主人公は君に、煙草を教えてほしいとお願いしていました。
最初にそれを伝えたとき、君は主人公にキスをしたのです。
突然のことで慌てた主人公。そんな中でも覚えているのが君の口から出る煙草の煙と、あたりを包む暗闇の色でした。
あえてキスの様子を鮮明に描くのではなく、その時に主人公が見た景色の色を描いた歌詞。
この繊細さもこの楽曲の魅力です。
駆け抜けた恋
止まれないスピードで
冷めぬ夜の温度で
私の知らないものを全部教えて
出典: 煙/作詞:n-buna 作曲:n-buna
主人公が知りたがっていたこと。それは2つありました。
君が吸っていた煙
まずは小説内にたくさん登場する「煙」、つまり煙草です。
もちろん17歳で煙草に手を出すなんて悪いことだとはわかっていたでしょう。
しかしいつも喫煙所で煙草を吸う君の横顔を見ているうちに、興味を持ってしまいました。
それは煙草そのものに、というよりも君という存在に、と捉える方が自然でしょう。
君に近づくための手段として、煙草を吸おうと思ったと考えられます。
自分のことを認めてくれた君。そんな君のことをもっと知りたかったのかもしれません。
もしくはとにかく君と一緒にいる口実がほしかった、という可能性もあります。
ただ主人公は、その煙草の煙も含めて君のことを好きになっていました。
決していい香りではないけれど、それがあると安心する。そんな感覚でしょうか。