RADWIMPSの「ピクニック」

ピクニックは2015年6月10日リリースの17枚目のシングルです。オリコンチャート週刊7位、月間で22位を記録しました。この曲は、映画「トイレのピエタ」のために書き下ろされたものです。ボーカルの野田洋次郎はこの作品の主演も務めています。

実際に聞いてみよう

なんとも切なく儚げで、それでいて力強い、グッと心に訴えかけてくるようなメロディーの素敵な歌ですね。野田洋次郎は映画のために、その時感じたこと、学んだことをぎゅっとこの曲に集めて短期間で作り上げたそうです。体裁を整えようと思えば出来たが、それだと作品自体が薄まると思ったのでしょう。

その編集のない、生のままの激情が込められているからこそ、伝わるものがあるのだと思います。それではこの「ピクニック」を主題歌とした映画「トイレのピエタ」とはどんな映画だったのでしょう。

野田洋次郎主演の映画「トイレのピエタ」

RADWIMPSのシングル「ピクニック」の歌詞に迫る!野田洋次郎主演映画にして主題歌に!?の画像

もともとは漫画家手塚治虫が死の直前に書いた手記に、原案があったようです。映画「トイレのピエタ」は、松永大司の映画監督デビュー作です。監督自ら野田洋次郎に主演を打診したとのことです。この話が来た時に野田は、最初は断ろうとしたようですが、台本を見て感動し出演に踏み切ったそうです。

内容は、元美学生でフリーターに身をやつし、人生の目的を失っていた男が、ガンで余命宣告をされ、女子高生とのやりとりから生にしがみつき、最後にトイレに壁画のピエタを残すというものです。詳細はネタバレになりますので他に譲りますが、とっても切ないラブストーリーです。そして人間、生命への賛歌でもあります。

ピエタとは?

ピエタとはイタリア語で慈悲という意味で、この場合、具体的には聖母子の彫刻や絵を指します。数々のピエタがありますが、中でもサン・ピエトロ寺院にあるミケランジェロ作のピエタが最も有名です。

「ピクニック」の歌詞を見てみよう

まずタイトルだけを見ると、楽しげな、非日常のハレの日を思わせるような印象ですが、歌詞の内容を見るとそれとは打って変わってとても切ない調子になります。

突然のガン宣告

失意の男は日常を淡々と生きていたのですが、突然不幸が自分を襲います。

最期の夏の 入り口に立っていたのは
ナイフを首から ぶら下げた 青い魂

大きな瞳で世界を睨む どこまでも澄んだ 碧

仲良しなどとはとても言えない この『毎日』に
あまりに突然にさよならを 切り出された

出典: http://www.uta-net.com/song/187733/

希望を失って毎日をあてどなく暮らしていたところに突然、余命数ヶ月を言い渡されたところでしょう。こんなどうしようもない、抜け出したい毎日ではあったけど、それが突然なくなる事がわかって戸惑いを隠せないでいる様子が伺えます。

好きでもないのにフラれた僕を 君は横で笑う

希望の類から一番 遠い場所で待ち合わせしたんだ
誰にも踏まれてないままの まっさらな雪の上見たいな

出典: http://www.uta-net.com/song/187733/

「好きでもないのにフラれた」というのは相手が女の子というより、「毎日」ということでしょう。人生に期待はしなくなったものの、ずっとそれでもそんな「毎日」が続いていくんだろうなという希望と言えない希望さえ、自分には許されなくなったのだという絶望が見て取れます。

魂の邂逅、絶望からの希望