RADWIMPSのシングル「ピクニック」の歌詞に迫る！野田洋次郎主演映画にして主題歌に！？

絶望の中でも一筋の光明が。それが女子高生とのやりとりでした。

生きる意味を失っていた男が、いざ死を宣告されると、生への執着が自分にもあるとわかった、それを女子高生が気が付かせてくれたのです。生きる意味なんか、本当は何もないかもしれない、それでもいいじゃないか、その女子高生と関わってそう男が心境を変化させています。

「人生初心者」などは女子高生の描写です。不器用なまでのまっすぐな女子高生に次第次第に惹かれていきます。男は生きていることを実感します。冥府の象徴でもある月をもだし抜こうというのですから、生への執着がますます強くなっているのでしょう。

それでも死は刻々と近づいてきます。男はその中で再び自分の生きる意味を見出していきます。

生きたいと改めて思った男は、生きようと、自分の生きた証を残そうと、なんとか試行錯誤しているのがうかがえます。

他人から見たら無様に見えるかもしれないけれど、どうしようもない、初めて生まれたんだ、みんな試行錯誤してやって来たんだという、男の魂の昇華まで間近まで来ています。

命がごくわずかでも必死に、この世界にしがみつこうと懸命に努力する男。最後に自宅のトイレに、ピエタの壁画を書くことを決意します。

死に行く運命の自分が、生きた証を残すにはどうすれば良いか、たどり着いた結論だったのです。そうして男の魂は昇華し、再生を果たしたのです。

こうしてみると、ラブストーリーのために書き下ろされた本作品ですが、ピクニックというほのぼのとしたワードからは、一番遠いところにあるといってもよく、切なさ99パーセント、甘さほんのちょっぴりの苦味いっぱいのラブストーリーだと言えるかもしれません。

女子高生との魂のキャッチボールからだんだん自分を取り戻す男は、限られた残りの時間で生に執着します。それでもやはり自然の摂理にはかないません。最後に男は生きた証を残したいと決意し、トイレにピエタを描きます。

ピエタは永遠性の象徴でしょう。自分の儚い運命をその永遠性に託したかったのかもしれません。男の短い人生を辿れば、それは毎日という日常を非日常に変えるピクニックそのものだったのかもしれませんね。

いかがでしたでしょうか？とっても甘いとは言えないが、切なさ満載のこのピクニック、題材は男ですが、これはもちろん決して男に限定されたテーマではなく、人間全体に当てはまる壮大なテーマだと思います。男はピエタを作品に残したことで、手塚治虫の最後の言葉の通り「昇華され浄化」されたように思います。