長所のない私です
築きあげた結び目を解く
何も聞こえず夢から温度だけ
切り離してゆく 今日も一人
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
再び象徴的な一文が登場します。
しかし、このパートの歌詞を読むと冒頭とは少しニュアンスが違って聴こえます。
冒頭部分では心の内面を歌っているのに対して、もっと現実的です。
”まるで一人”と感じていた「私」ですが、”今日も一人”と言い切る「私」がいます。
これまで積み重ねてきたものが崩れていく、あるいは自ら壊しているのかもしれません。
世の中から取り残されるような、自分だけが前に進めない、そんな心情です。
怯える「私」
貪る目 眠れない
途切れますように
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
短いパートですが、どこか怯えるような「私」を感じ取れます。
”貪る目”という強い言葉から、自分の業の深さを表現しているように思います。
もしくは、周囲の冷たい視線かもしれません。
それらから解放されたい、断ち切りたい、”途切れますように”と、願う「私」。
諦める「私」
金木犀 揺れる頃
あなたには逢えない
甘い香りに泳ぎ疲れて
密やかに浮かぶの影
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
ここで、はっきりと”あなた”という具体的な対象が出てきます。
金木犀の香りが漂う季節に逢えない切なさから、”あなた”への思いを諦める「私」。
幸せな時間を”甘い香り”に重ねて思い続けることに疲れてしまいます。
思い=影だけが、糸の切れた凧のように拠り所を失って、ひらひらと彷徨います。
拒絶する「私」
この身ごと 捨て去って
構わないでよ
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
とても明確でストレートな言葉で、すべてを拒絶する「私」。
自暴自棄になって、自らの命さえも捨ててしまいたいほどに苦しむ様です。
誰にも自分の心に触れて欲しくない、”構わないでよ”と周りから自分を遠ざけます。
でも、そんな気持ちになるのは、心に”あなた”への思いが残っているからでしょう。
まだ叶わない思いを断ち切れないからこそ、苦しむのです。
影が象徴するものとは?
サビの最後に出てくる”影”とは、”あなた”への思いではないでしょうか。
決して公にすることができない秘めた思いだからこそ、”影”なのです。
自分の後ろについてくる影を、断ち切れない”あなた”への思いになぞらえて、表現しているように感じます。
最初のサビでは、まだ未練をたっぷりと纏った思い=影でした。
二回目のサビでは、”あなた”を諦めたことによって、残された影=思いだけが宙ぶらりんと漂います。
まるで、自分の抜け殻が水面に浮かぶように、空を舞うように。