夢、キズナ、命、幸せといった言葉からも、自分の生きざまを歌っているようです。
やはり、主人公と君のやり取りは自分の中の葛藤を表現していると考えられるでしょう。
やがて惨い悲しみが 僕ら進む未来を
覆い隠していくんだ
出典: 叫べ/作詞:沼倉愛美 作曲:WEST GROUND
憎しみの次は悲しみが敵です。
もうお分かりでしょう。
敵の正体は負の感情です。
憎しみや悲しみは生きていく上で避けては通れません。
負けてしまいそうになる君は弱い自分です。
『叫べ』の主人公はそんな自分を守り、寄り添い、叱咤しています。
超えられない怒りの渦と
抱きしめられない崩壊
そんなのキライ ズルイ 見せないで
(Please take the magic)
最後には化物になってしまったっていい
だって君の絶望食らってやれる
(I don’t want to hurt you))
育っていく衝動を解放してしまえ
さぁ 叫べ
出典: 叫べ/作詞:沼倉愛美 作曲:WEST GROUND
さて、自分への言葉と考えながら2回目のサビです。
怒りや絶望に飲まれてしまってもいいと言います。
抗わなくていいみたいです。
むしろ、育てて解放してしまえと言っています。
大丈夫なのでしょうか?
いつか後悔しない日が来るなら
祈るよりほら声をあげろ 今
叫べ この嘆きを
叫べ この痛みを
叫べ この怒りを
叫べ 僕はここにいるんだ!
出典: 叫べ/作詞:沼倉愛美 作曲:WEST GROUND
曲の最後に何度も叫べと歌います。
負の感情を叫べ、そして自分自身の存在を叫べと。
ここにきて「叫ぶ」という行為が「祈ること」と対比されています。
「祈る」は思考の活動です。
対して「叫ぶ」は声を発するという肉体的活動と言えます。
『叫べ』には言葉通りの意味だけでなく、「アクションを起こせ」という意味があるのでしょう。
そこに負の感情が混ざっていたとしてもです。
後悔しないためにはそんな叫びが必要と歌っています。
そこには清濁合わせ持つというニュアンスがあるでしょう。
大人になった自分が弱い自分(君)を救うために叫べと言い続けています。
抱きしめ 生きよう 嘘ばかりでも
信じて 選ぶよ 君という夢
出典: 叫べ/作詞:沼倉愛美 作曲:WEST GROUND
ラストの歌詞は大人と子供の対比とも取れます。
歌詞の序盤でも登場した「嘘」という言葉は大人の世界の象徴。
その後の「夢」という言葉は対照的に使われています。
君=夢という締めくくりです。
つまり君とは、弱い自分の比喩であると同時に、若さの比喩でもあります。
この構図が成り立つことによって『叫べ』で沼倉愛美の表現したことがわかるはずです。
それは自分自身と言えるでしょう。
決して早くはないソロデビューを飾った沼倉愛美です。
当然、新人声優のソロデビューと同じではありません。
沼倉愛美はもういい大人だからです。
ただ、歌や声優といったかつて夢だったものに対する純粋な気持ちは今もあるのでしょう。
自分と向き合った結果が、歌詞に集約されていると言えます。
歌詞を体現したMVが美しい!
MVは美しい大人な映像世界と言えるでしょう。
衣装はモノトーンの落ち着いた色合いです。
しかし、レースのロンググローブなど、細部まで上品なスタイリングとなっています。
また、屋外のシーンはすべて夜です。
沼倉愛美自身のシルエット(影)が浮かび上がる場面もあります。
上記の歌詞の解釈を考えると、光と闇のコントラストを美しく捉えたMVと言えるでしょう。
映像だけ見ると冷た暗い色使いですが、沼倉愛美の声のパワーを引き立たてているとも言えます。
カップリング曲も聞きごたえあり!
『言の庭』
『HEY!』
もうひとつのカップリング曲『HEY!』はノリの良いライブ向きの曲です。
エッジの効いたギターサウンドが冒頭から気分を盛り上げてくれます。
ベースも飛び跳ねるようで心地良いです。
ぜひ聞いてみてください。