スピッツ「群青」とは?
「群青」(ぐんじょう)は、2007年8月1日に発売された、スピッツの通算33作目のシングルです。
自分でハモるのではなく、ピーター・ポール&マリーのような3声の曲をやってみたいと常々思っていたというボーカル兼ギターの草野さん。
その願いが叶ったのがこの曲ということですね。
そして、ピーター・ポール&マリーは1960年代のアメリカのフォークグループで、
ピーターヤーロウ、ノエル・ポール・ストゥーキー、マリー・トラヴァースの男声2女声1のトリオですが、「群青」も同じ構成です。
同じ構成です...とサラッとお伝えしてみたものの、ゲストとして迎えたメンバーがすごいんです。
草野さんの声を包み込むようなゲストボーカルの声!声の主はあの人とあの人?!
ゲストとしてバッキングボーカルに入ったのはなんと、スキマスイッチのボーカルの大橋卓弥さんと、
この3年後、「トイレの神様」で大ヒットを記録することとなるシンガーソングライターの植村花菜さんなんです。
もともと交流があったからではないかと言われているこのコラボレーションですが、知らなかった方はこの豪華さに驚いたのではないでしょうか。
次はそんな「群青」のMVを見ていきましょう。
スピッツ「群青」のMVに〇〇が出演!
MVのストーリーは、川辺で退屈そうにしているスピッツのメンバー4人の姿からスタートします。
退屈すぎたのかついに拗ねたように体を丸めて寝てしまった草野さんの傍にドラムの崎山さんとベースの田村さんが二羽のウサギを放ち、眠りについたことで、
4人は夢の中でウサギの格好をした2人組とフリスビーや、バーベキューなどをして遊ぶという内容です。
そして、ウサギの2人組を演じているのはなんとお笑い芸人のアンガールズの2人なんです。
途中、湖に落ちたフリスビーを拾いに行った山根さんの足を草野さんが拭いてあげるシーンが、個人的には優しさが溢れている気がして好きです。
また、王冠をつけた4人の演奏シーン、ウサギと遊ぶシーンに加え、草野さんとアンガールズが3人でダンスするシーンも。
二羽のウサギが意味するものとは...?
スピッツ「群青」の歌詞解釈
タイトルになっている「群青」という色が何を意味するのか、また、MVに登場したウサギの意味も歌詞解釈の後結論を出すので、
ぜひ最後までお付き合いください。
失くしてしまうところだった大切なものを思い出した
語れるほどの夢とか 小さくなった誇りさえ
失くしてしまうとこだった 君はなぜだろう 暖かい
優しかった時の 心取り戻せ 嘘つきと呼ばれていいから
鳥を追いかけて 裸足で駆け出す 青く染まっていくよ
出典: 群青/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
子供の頃は何の根拠もなく持っていた夢や誇りが、大人になるにつれて、他人との関わりや失敗、後悔の中でだんだんと小さくなり、失ってしまうということ。
これは多くの人にとってそうではないでしょうか。
しかし、この曲の主人公である「僕」は「君」という存在に出会い、その心のあたたかさに触れたことによって、失くさずに済んだのでした。
そして、もう一度社会に揉まれる前の優しかったはずの自分の心を取り戻そうとするというストーリーを読み取れる歌詞ですね。
人に優しくあろうとすることで、嘘つきと呼ばれることもあるかもしれませんが、それでも、裸足で駆け回る子供のように、一心に自分らしくあろうと人生の再出発をするのでした。
取り戻そうとしているのが、大人になるにつれて失うような「夢」や「誇り」、そして「優しかった時の心」ということ、また、「暖かい」という歌詞から、「君」は大人よりも体温が高い、子供なのではないかと考えられます。
子供の「君」に触れ、その「暖かい」体温を感じた時、体温だけでなく、大人になるにつれて心の温度も下がってしまっているような気がして、自分が大切なものを失いかけていたことに気づいたのでしょう。
そして、もう一度自分の大切なものを追いかける決意をした「僕」の心はどう変わっていくのでしょうか。
続きの歌詞も見ていきましょう。
今すぐ海が見たい!自分の心に素直に
どれほど遠いのか知らんけど 今すぐ海を見たいのだ
明日とか未来のことを 好きになりたいな少しでも
こだまするように その名前を叫ぶ ころんで起き上がる愚かな
僕はここにいる すでにもう奇跡 花が咲いているよ
出典: 群青/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
童心に帰った「僕」は自分の願望に素直になっていきます。
「今すぐ海を見たい」ということも、大人になると、仕事の休みを取らなければならなかったり距離や時間を考えたりしてしまいますが、
ここでは「どれほど遠いのか知らんけど」と全く気にしていない自由な姿が伺えます。
時にそうやって自分の欲求に素直に向き合うことで、今までは考えるのも不安だった未来も好きになろうとするのでした。
確かに、子供の頃は、厳しい親の元で育った人は共感できないかもしれませんが、
好きなものを好きと言って、したいようにしていたという人も多いのではないでしょうか。
子供の頃はそうやって自分の気持ちや願望に素直だったからこそ、
自分が自分であるという誇りや自分の好きなことの延長線上にある夢を持っていられたのです。
だからこそ「僕」は、「海が見たい」という自分の欲求に素直になることで、少しでもその頃の気持ちに戻ろうとしているのですね。
「その名前」は、きっと、子供の頃に自分が好きだったものの名前でしょう。
転んでも起き上がる愚かな「その名前」。
足早にかけていき、転んでもあっという間に起き上がる、頭がいいとは言えない生き物は、もしかしたらウサギなのではないでしょうか。
子供の頃に飼っていたウサギは思い出せば自分を子供時代の心に戻すものであり、今はもういないウサギのことを考えると、
「僕はここにいる」ということが「すでにもう奇跡」だと感じられるのでした。
独断と偏見による解釈ですがこの解釈が正しいとしたら、MVのウサギは草野さんの心を童心に帰すものであり、
子供の頃の心を取り戻そうというこの曲にぴったりということですね。
「花が咲いている」という小さなことにも感じられる感動。
そんな子供のような小さな感動の積み重ねが毎日に新鮮さを与え、明日を好きになるきっかけとなっていくのでしょう。