想いをこめた一曲
1980年に発表された「ダンシング・オールナイト」。
この曲の背景からみていきます。
出だしはゆるやかに
既にソロ歌手としてデビューしていたもんたよしのり。
彼が率いるバンド「もんた&ブラザーズ」のデビュー曲がこの「ダンシング・オールナイト」です。
もんた自身が作曲した思い入れの強い曲と推測できます。
発表当初は、出だし好調とは言い難いスタートでした。
しかし、徐々に盛り上がりをみせ、脅威の売り上げ枚数を記録。
もんたよしのりは、この曲で数々の賞を受賞しその地位を不動のものにしました。
コントやコマーシャルでのパロディも有名で、カバーによるテレビコマーシャルも。
国内、海外のアーティストによってカバーされ、長く広い範囲でヒットし続けています。
この歌の魅力
オリジナルヒットからカバーヒット。
テレビコマーシャルで繰り返し起用されるこの曲。
息の長いヒットの裏には何か理由があるはずです。
「ダンシング・オールナイト」の魅力はどんなところにあるのでしょうか。
同じ言葉でも
この曲は、サビと呼ばれる部分の歌詞が全く同じ。
それが、全編で4回繰り返されます。
サビで同じ歌詞が繰り返されることはよくあること。
しかし、大抵の場合は、一部の言葉が異なっていたりするものです。
そんな中、「ダンシング・オールナイト」は全く同じ歌詞の繰り返し。
同じ歌詞なのに、聞いているとそれぞれでの意味が違って感じられるのが味わい深いところです。
よって、聞くたびに違う感動が得られる不思議さ。
一度目に耳にしたときは、曲のノリのよさが残りますが、二度目にはその歌詞の味わい深さが心に染みます。
作詞家のセンスと、歌い手の技術が一体となったことも、ロングヒットの秘訣のひとつといえそうです。
出会いは恋のセオリー通りに
甘いときはずむ心
ひと夜のきらめきにゆれる
キャンドルがうるむ瞳の中で
無邪気に踊ってみせる
ダンシング・オールナイト 言葉にすれば
ダンシング・オールナイト 嘘に染まる
ダンシング・オールナイト このままずっと
ダンシング・オールナイト 瞳を閉じて
出典: ダンシング・オールナイト/作詞:水谷啓二 作曲:もんたよしのり
恋の始まり、それは突然にやってきます。
魅惑的なリズムに乗って、二人の恋がスタートです。
魅了したり...そして、されたり
二人の恋の始まりはナイトシーンから。
ダンスのできるクラブ、それとも生演奏の流れるライブハウスでしょうか。
若者たちが音楽と雰囲気に酔いしれる中で、視線が絡み合います。
見つめ合っただけで、二人の方向が決まってしまう恋。
そんな恋は急速に進んでいくでしょう。
お互いの瞳に吸い寄せられるように、ゆっくりと距離が縮まります。
動物たちが、気に入った相手に対して求愛のダンスを捧げるように。
ここでもまた、相手の心に入り込もうと自然に体を動かします。
ほのかな灯の中で、自分のためだけに踊られるダンス。
ゆっくりと、そして性急に二人の心と体が近づいていきます。
言葉はいらない
恋の始まりに言葉はいりません。
実際には、たくさんの言葉を重ね相手の心をつかもうとしますが。
頭に浮かんで口をつくどの言葉も、本当に自分の言いたいことではないような気がしたりして。
「キレイ」「カッコいい」「素敵」
どんな言葉も、ぴったりではないのです。
真実があるとすれば、その瞳の輝きと鼓動、そして沸き起こる行動だけ。
偶然のように出会えた恋のお相手。
このまま一晩中、一緒に踊っていられたならどんなに幸せなことでしょうか。
言葉では言い表せないほどの思いをもどかしく感じながら。
お互いをもっと知るために、二人の夜はまだ明けそうにありません。