「冬にあった出来事は全部『去年』のことばかり。
もう春が来てるんですよ。
そろそろいいんじゃないですか。
……恋をしてみませんか」
そんな風に、歌が優しく傷心の彼女を誘い出しているとても優しい曲ですね。
キャンディーズの声が柔らかいベールとなって彼女を包んでくれているようです。
当時この歌になぐさめられたのは女性だけじゃなく男性も多かったんじゃないでしょうか。
この曲は大ヒットしてたくさんの人に受け入れられました。
でもヒットしてしまったがために何十年も経ってからトラブルに巻き込まれてしまったんです。
放送禁止の時期があった?
ファンの利益を守る戦い
実は2012年から3年ほど、「春一番」が世間から姿を消した時期がありました。
この曲を作詞・作曲した穂口(ほぐち)氏と日本音楽著作権協会(JASRAC)でトラブルがあったからです。
穂口氏が40年以上身を置いたJASRACを離れることになり「春一番」はJASRACの管理から外れました。
その次のシングル「夏が来た!」も穂口氏の作品だったので、同じく管理は穂口氏がすることに。
そのことで大手カラオケ業者がこの2曲のカラオケ配信を中止してしまいました。
そもそも、何故この2曲を穂口氏が管理することになったのでしょうか。
CDから配信の時代へ
2000年を過ぎると徐々にCDは売れなくなり、音楽業界は翳(かげ)りを見せていました。
それでも業界は「原盤権(マスター音源を管理する権利)」を主張し時代の移り変わりに気付きません。
ですが穂口氏はこれからは配信で収益を得ていく方法を考えるべきだと訴えていたのです。
例えばYouTubeは動画再生回数を上げて収益を得るシステムがあります。
それを利用して音楽を楽しむ手段を広げていくべきだとの考えだったようです。
ですが業界は、「原盤権」を理由にキャンディーズのとあるYouTube動画を削除しました。
その動画には闘病の末に亡くなったスーちゃんへのコメントが多く寄せられていたのです。
穂口氏はファンから寄せられたコメントまで削除した日本レコード協会の暴挙が許せませんでした。
そこで穂口氏は「春一番」「夏が来た!」を一旦自己で管理することにしたのです。
その後、裁判を重ねて2015年には2曲の管理の移行先も決まりました。
今では「春一番」「夏が来た!」のカラオケ配信も再開しています。
穂口氏が思いをつづったブログ記事もありますので気になった方はこちらもご覧下さい。
あのアーティストがカバー
ゆずはライブ演奏も
確かに路上アーティストは足を止めてもらうために懐メロをよく歌っていますよね。
ゆずにとって思い出の1曲なのでしょう。
キャンディーズの曲ならではのハーモニーがゆずらしくアレンジされています。
一部歌詞が変えられているのもライブならではのお楽しみですね。
ゆずの「春一番」は「歌時記~ふたりのビッグ(エッグ)ショー篇~」に収録されていますよ。
人気声優版キャンディーズ
2009年に放送されたアニメ「そらのおとしもの」。
このアニメのED曲は出演声優さんが毎回違う懐メロを歌う、いうものでした。
その中に「春一番」も採用されています。
歌っていたのは早見沙織さん、野水伊織さん、美名さんの3人。
キャンディーズと同じ3人なのは原曲へのリスペクトでしょうか。
エッジの効いたギターのイントロに可愛らしい声という不思議な曲になっています。
アルバムには「岬めぐり」「初恋」なども収録されていてノスタルジックな1枚です。
あの若旦那はCMでカバー
そして湘南乃風の若旦那も「春一番」をカバーしていました。
CMを改めて見ると「そういえば見たことある!」と思いだす方も多いのではないでしょうか。
初めての一人暮らしで、友人に引越しを手伝ってもらうという内容です。
一人暮らしの解放感と少しの寂しさを噛み締める青年を向井理さんが演じています。
友人たちが帰りの車の中で叫ぶように歌っている姿にグッときました。
若旦那のパンチの効いた歌い方は「春ですよ~」という優しい原曲とは違いますね。
「春だぞ、おら、寝てんじゃねぇ!」と布団から引きずり出されそうな勢いです。笑