東京都渋谷区道玄坂下
渡りきるスクランブル
もう感動はない
アフターとビフォーとが同じな日々
「ここで変われるかも」って
期待はとうにない
出典: fallin'/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
『fallin'』は「都会」をテーマにした曲です。
主人公はどうやら、都会に慣れ切ってしまい、その魅力が分からないようです。
「アフターとビフォア」というフレーズから察するに、主人公は社会人。
以前は期待を抱いて東京に来た主人公。
渋谷にある有名なスクランブル交差点にも、心躍ったのでしょう。
今ではまったく平坦な日々に嫌気がさしています。
Bメロ
慣れてくんだ
どんな音、顔、景色にだって
そうこうして日々は2パターンに分かれてく
出典: fallin'/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
どうやら主人公は、東京出身ではないみたいですね。
東京がどんなに素晴らしいところかと思っていた主人公。
いざ東京で暮らしてみると、殺風景な日々を送る毎日になってしまいました。
歌詞にもあるように、それは「慣れ」が原因です。
人間は、はじめて見たり感じたりしたものに、非常な感動を覚えます。
料理も例外ではありませんね。
例えば「高級ステーキ」をはじめて食べた人がいるとしましょう。
念願叶ってステーキを食べた主人公。
その肉の柔らかさとソースのまろやかさに感動します。
ところが、その人が毎日「高級ステーキ」を食べられるとしたらどうでしょう。
はじめの数日は飽きないかもしれません。
しかし何週間も同じものを食べることは、いくら「高級ステーキ」だって無理があります。
人間は「慣れる」動物だからです。
最後の「2パターンに分かれてく」とはどういう意味なのでしょうか?
おそらく「明」と「暗」。
「光」と「影」かもしれません。
二項対立するものごとであることは確かです。
主人公の生活は今、「影」に覆われてしまっているようです。
サビ
フォーリンラブ
「辛い」か「つまらない」かが
並ぶ日々へたまに少し来る幸せの為に
こんな世界を愛せるか
出典: fallin'/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
平坦な毎日を過ごしている主人公。
その主人公には恋人がいます。
もしくは「片思い」している相手がいます。
その恋人と会って話をしたり遊びに行ったりするのが、主人公のせめてもの救い。
この世界を「辛い」と「つまらない」とに分別する主人公。
Bメロの「2パターン」とは「辛い」か「つまらない」かだったのですね。
「こんな世界を愛せるか」と、吐き捨てるように呟きます。
主人公はなぜ、こんな風に世界を捉えるのでしょうか?
そこには現代が抱える「闇」が関わってきます。
現代は、ネットワークやSNSの台頭により、人間関係が希薄なものになっています。
便利になった分、そうした弊害が生まれているのです。
主人公の年齢は分かりませんが、歌詞にはおそらく作者の岡林さんが自己投影されています。
そう考えると、主人公の年齢は20代。
20代はちょうど、IT革命やSNSの乱立の真っただ中に生きている世代です。
彼らも、人間関係が希薄なものになっている自覚はあるのでしょう。
おそらく岡林さんもそう感じているのだと思います。
だからこそ、人間関係は大切にしたい。
それでも頭の中にいる「何か」が邪魔をする。
斜に構えることしかできなくなってしまう。
『fallin'』はそうしたジレンマをダイレクトに表現しています。
2番Aメロ
東京都世田谷区下北沢
自信なくすだけの一歩となった
立ちはだかる壁で出来ちゃった部屋は
叶えたい願いを逃がさなくなった
出典: fallin'/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
ここからはMVのように、主人公も男性に変わるのでしょう。
それは「東京都世田谷区下北沢」というフレーズで明らかにされます。
1番の歌詞に登場する主人公は女性だったのですね。
さて、主人公は下北沢で暮らす男性です。
社会人になったばかりなのでしょうか?
「はじめの一歩」で挫けてしまった主人公。
主人公が住む部屋には、主人公の想念が詰まっています。
何としても「叶えたい願い」を、強く念じる主人公。
その念が部屋に流れています。
2番Bメロ
「どうすれば」で熱くなった頭、冷やしたら
触ってみな、壁の厚さに気付くから
出典: fallin'/作詞:岡林健勝 作曲:岡林健勝
「どうすれば」がカッコ表記になっていますね。
これは主人公が実際に言ったセリフなのでしょう。
主人公は何かに悩んでいます。
それで頭と心が「どうすれば」という言葉で一杯になってしまったのです。
頭を冷やすために「壁」に触れる主人公。
ここでいう「壁」とは、文字通りのそれなのか、または何かの例えなのか分かりません。
どちらにしてもその厚さは、かなり厚いようです...。
男一人悩んでいても、壁の厚さに比べれば大したことはない、という意味なのでしょう。