唯一無二のギター・ロック・バンド SUPERCAR
エレクトロニカの導入で岐路
SUPERCARは唯一無二のロック・バンドでした。
解散から優に10年以上経つ今でも彼らの業績は乗り越えられていません。
ギター・ロック・バンドから始まり、エレクトロニカへと接近した後期に至るまでの道筋。
バンドの進化と深化に感嘆せざるをえません。
彼らが初めてエレクトロニカを導入したのが3作目の「Futurama」。
それから1年5ヶ月後に発表された2002年の「HIGHVISION」はSUPERCARの最高傑作と呼ばれています。
収録曲の「STORYWRITER」は解散後「交響詩篇エウレカセブン」の挿入歌として使用された名曲。
この曲で歌われる「天にいるストーリーライター」とはいったいなんでしょう?
様々な思想史と絡めて歌詞の意味を探っていきます。
洪水のようなエレクトリック・サウンド
ひとを惹き付けるワンフレーズ
天のストーリーライター
最後 その手で
愛のそのペンで最後―
出典: STORYWRITER/作詞:JUNJI ISHIWATARI 作曲:KOJI NAKAMURA
洪水のように流れ出すエレクトリック・サウンドとギターの応酬で曲が始まります。
サウンド・プロデューサーは砂原良徳(ex.電気グルーヴ)。
歌い出しです。
SUPERCARはサウンド・プロダクションとの兼ね合いから歌詞で多くを語るバンドではありません。
ひとを惹き付けるフレーズに力点を置いて歌詞にします。
最後という言葉が気になる
天のストーリーライター
出典: STORYWRITER/作詞:JUNJI ISHIWATARI 作曲:KOJI NAKAMURA
リスナーにいきなり主題を突きつけます。
天にいるストーリーライター(天上の物語作家)とはいったいどんな存在でしょうか?
詳しく論じるのは後半にいたします。
ここでの「最後」というのはひとの死の瞬間を指すのでしょうか。
もしくは恋人など親しいひととの別れのシーンかもしれません。
いずれにせよ天にいるストーリーライターがひとの「最後」に愛で花を添えるような瞬間を描いています。
SUPERCAR(石渡淳治)の歌詞は元々の情報量が少ないので、緻密に読み解くのは至難です。
音韻を踏む歌詞が見事
最優先されるのは「音」
天に いっせいに開いた手に
いっせいに開いた目に
いっせいに描いた画に
光が射して 未来を裂いて
声が光年をサーフ!!!!
出典: STORYWRITER/作詞:JUNJI ISHIWATARI 作曲:KOJI NAKAMURA
手、目、画。
音韻を踏む歌詞が見事です。
射して、裂いて。
サビでも音韻を踏みます。
SUPERCARの場合、歌詞でなにより優先されるのは「音」なのでしょう。
その分、歌詞の解釈を難しくしています。
宇宙的規模で生命の行き交いがなされているようです。
歌詞はある種の美学への訴えかけが中心に置かれています。