出会いさえも切なくて
それが2人の始まりだから
忘れられへんのなら
もう会わんほうがええよね
どうせうちら流されただけやもんね
出典: 大阪恋時雨/作詞:半崎美子 作曲:半崎美子
恋であればせめて出会いだけでも輝いた思い出があるはず。
その出会いさえも幸せとは無縁だったことを歌詞は教えてくれます。
流れるならまだしも意志とは関係なく「流される」。
大阪の街の象徴でもある川が2人を巡り合わせたのでしょうか。
傍からは望まれない出会いをしてしまった2人。それを「どうせ」と突き放してみます。
自分でもそんなことはとっくに分かっている、けれど出会ってしまったのです。
でも始まりが不幸な恋がすぐに終わる訳ではありません。
今心の中にいるのは幸せとはいえない出会いをした相手だけです。
絶対に消すことが出来ないくらいに好きになっているのに、素直に口には出せない。
顔を見ると悲しくなる相手と会わなければ泣かなくて済むのに…。
今この時だけでも
決まりきった言葉は聞きあきてしもたわ
なんやかんやいうても出口のない2人やから
出典: 大阪恋時雨/作詞:半崎美子 作曲:半崎美子
ここでは2人が昼間太陽の下を堂々と歩けない関係であることを匂わせます。
始まった恋が目指す2人にとっての最終ゴールは日常を一緒に心置きなく過ごすことでしょう。
今の生活を変えればそれが叶うのかもしれません。
それをするには大きな犠牲が伴うのでしょう。結論の無い堂々巡りの会話が続きます。
この先のために倫を踏み外す勇気は2人には似合いません。
だから2人は冷たい雨の中にいる恋に耐えられるのでしょうか。
この後はその心の中をすくい取るように歌詞を綴っていきます。
心を歌うシンガーソングライターの半崎美子さんの歌詞に注目していきましょう。
理由なんて要らない…
もしかして涙に理由は要らないのかもしれません。
泣きたいから泣く…あんたの前ではそれを許してほしいのです。
やっぱり泣いてしまうから…
あんたがそばにおるだけで
なんで泣けるんやろう
嬉しくも悲しくもないんやけど
出典: 大阪恋時雨/作詞:半崎美子 作曲:半崎美子
何を話すわけでもなくただ隣にいてくれるだけの時間。
そんな時に涙が出るのです。その涙の理由を歌詞はこのように綴ります。
あんたに会っている時は「嬉しい」「悲しい」そのどちらでも無い。
ここには胸を締め付けられるような思いがあります。
本当は笑って過ごしたいけれど後ろめたさがそれを止めるのでしょう。
悲しみを訴えたくてもそれでは嫌われてしまうかもしれない。
感情を表に出さないために必死で抑えた心の隙間から涙がこぼれます。
本当なら泣きたければ理由なんて考えずに泣けばいいのです。
でもそれが出来なくてまた泣いてしまいます。
素直になれない…それが自分だから
あんたのおらん毎日が日常やった頃に
戻れへんむなしさが 涙になるんやろうか
出典: 大阪恋時雨/作詞:半崎美子 作曲:半崎美子
歌詞は切ない謎解きを突きつけます。
出会う前の「あなたがいなかった時間」。
今と比べれば平凡で何となく過ぎていく時間だったのでしょう。
辛くて涙を流すことも今より少なかったはず、今より少しだけ幸せだったのかもしれません。
出会う前に戻ることができない「むなしさ」には複雑な思いが見え隠れします。
出会わなければ、心が締め付けられるような苦しみを味わうことはなかった。
でも今はその辛さと同時にあなたを一途に思い続ける心で生かされています。
出会ってしまったことで知った苦しさと幸せ。それが存在しない世界は心も空っぽです。
空しい心を抱えたまま生きていく自分を想像するのも辛いのでしょう。
今のままで良いとは思えなくても、戻ることも進むことも無い恋にまた涙が流れます。