しかしジョージはアルバムに２曲、多くて３曲しか提供させてもらえません。
おまけに映画「レット・イット・ビー」の中でポールにカメラの前で意地悪されて罵られます。
こうしたことが彼にとって大きな不満となりグループ外の音楽家との交流を進めるのです。
エリック・クラプトンがその代表的な人に当たります。
ジョージ・ハリスンとエリック・クラプトンはプライベートでは女性を取り合ったりしているのですが。
しかし盟友関係は長きに渡って持続します。
そしてソロ活動の魅力に取り憑かれて傾斜してゆくのです。
ビートルズの解散の理由はオノ・ヨーコの責任にされるなど俗説が蔓延っていました。
しかしポールによると「ヨーコのせいじゃない。あの頃の僕らは皆、バラバラだった」とのこと。
特にジョージ・ハリスンは何度もバンドを辞めようと決意しています。
ジョンやポールが昔の面影ばかりを彼に見ていて音楽家として逞しく成長するジョージを見誤りました。
ジョージ・ハリスンの圧倒的な才能はビートルズ解散後に大輪の花を咲かせます。
ビートルズの中ではジョージが一番好きという人がいてもまったく驚くことではないのです。
ビートルズ解散後のジョージ
超名作３枚組アルバムなど
ビートルズ解散後のジョージは３枚組のアルバム「オール・シングス・マスト・パス」を発表します。
これがまた怪物的に素晴らしい作品です。
ビートルズ解散後の各メンバーのソロ作品の中でも際立って充実したアルバム。
このアルバムだけはCDや配信ではなくアナログ・レコードの温かい音で聴いて欲しいです。
プロデューサーは巨匠のフィル・スペクター。
フィル・スペクターは「レット・イット・ビー」の仕事が酷評されますがこのアルバムでははまり役です。
売上も絶好調で全英・全米アルバムチャートで７週間１位を記録します。
1972年には世界初のチャリティーコンサートを開催。
「バングラデシュ・コンサート」と呼ばれたライブではエリック・クラプトンやボブ・ディランなどが参加。
コンサート自体は実況ライブ盤も含めて大成功を収めます。
ただし第3世界への肩入れが音楽にも影響し始めるとメディアは酷評を浴びせました。
体調を崩すなどついていないことが続きます。
また大ヒットシングル「My Sweet Lord」が盗作だと権利者に訴えられて敗訴しました。
しかしこの曲は本当に素晴らしい出来なのでリンクへと飛んでぜひ聴いてください。
誰しもが何処かで耳にしたことがあるはずです。
大輪の花を咲かせるジョージ
早すぎた死に涙する
ジョージは様々なアルバムを残して人々の記憶にしがみつきます。
ビートルズ解散後のジョージは水を得た魚のように才能を開花させたのです。
ジョージの元にジョンの訃報が届くとニューヨークへ駆けつけます。
そのときに去来した様々な想いを「All Those Years Ago」というシングル曲に昇華させるのです。
この曲は全米シングル・チャートで最高2位の大ヒットになります。
世界中の音楽家がジョン・レノンの死に触発されて追悼曲を書きましたがこの曲は象徴的な曲です。
何せレコーディング・メンバーが元ビートルズ。
ドラムがリンゴ・スターでコーラスがポールを始めとするウィングスの面々。
MVの出来も良かった記憶があるのですがYouTubeの公式チャンネルにはありませんでした。
ジョージの楽曲の魅力はどれも愛らしい曲調であることです。
ポールはビートルズでもときどきへんてこな曲を書くことがあるのですがジョージはいたって真面目。
インド哲学への傾倒で実験的な作品を発表し続けた顔も持っていますが本人は真面目一本やり。
その後のジョージは1987年のアルバム「クラウド・ナイン」辺りでまた息を吹き返します。
ダークホースは何度倒れても起き上がるのです。
ELOのジェフ・リンとの共同作業が功を奏しました。
シングル「セット・オン・ユー」の大ヒットに恵まれます。
また忘れ難いのがバンド「トラヴェリング・ウィルベリーズ」の結成と大成功です。
このバンドはロイ・オービソン、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ジェフ・リンとジョージが組んだもの。
覆面バンドという設定ですがメンバーがバレバレでプロモーションを展開。
世紀のスーパー・バンドの登場に音楽界が沸き立ちました。
ギタリストかつボーカリストがいっぱいです。
この後、ポールとリンゴともにビートルズ時代の音源発掘などをします。
再発見されたジョンの未発表曲「フリー・アズ・バード」が世界中に感動を呼び起こしました。
ただこの辺りから体調に恵まれなくなったり暴漢に襲われたり不運が続きます。
「喉頭癌」「肺癌」「脳腫瘍」
痛ましい闘病が続きましたが58歳でこの世を去りました。
ジョンの死も衝撃でしたがジョージの訃報も世界中を悲しませます。
亡くなってから改めてその存在の大きさを認識させられました。
また遺した作品が如何に素晴らしいものであったのかを人々は再発見して嘆きます。
あまりに早すぎる死でした。
よくぞ駆け抜けた音楽人生であったとも想います。
第2位 ポール・マッカートニー
ポールとジョン。
この残されたふたりのどちらが天才であったのかという議論は不毛です。
ふたりとも紛うことなき大天才なのですから。
それで第2位をポール・マッカートニーにいたしました。
理由はジョン・レノンの項で詳しく触れます。
厄介なのはふたりとも大天才であるにも関わらず性格までは一致していないことです。
違うものを較べてどちらがいいというのは乱暴なことになります。
「遊び」なので許してください。
保守派の論客を黙らせた「イエスタディ」
ポール・マッカートニーの偉大さ。
あえて書かなくともポップ・ミュージックの歴史に燦然と輝いているのでご理解いただけるはずです。
それでもポール・マッカートニーのビートルズ時代の偉大な功績を端的に挙げます。
騒音呼ばわりされていたビートルズのパブリック・イメージをいとも容易くひっくり返してみせたことです。
今でこそビートルズを騒音だと指摘する人はいません。
しかしデビュー以来、保守派の論客が毎晩ビートルズをやり玉に挙げて批判していました。
「ビートルズ論争」はこの国、日本でも盛ん。
しかしポールが創った繊細な曲によって保守派の論客は沈黙に陥ります。
「イエスタディ」「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」
これらのバラード曲の魅力は主にポールに固有のものです。
クレジットこそジョン・レノンとの連名ですが作詞作曲はほぼポールによるもの。
アレンジでジョージ・マーティンの助力を得ていますが「イエスタディ」は他のメンバーは参加していません。
「ビートルズにもこんなに美しい歌があるよ」
そういい返せば煩い論客たちも黙らざるを得ませんでした。
ただし激しい音楽もポールは得意です。
ビートルズ時代には世界で最初に発表されたヘヴィ・メタルといわれる「ヘルター・スケルター」を書きます。
ポール・マッカートニーの強みは表現の幅の広さです。
またベーシストとしての才能も忘れてはなりません。
リード・ギターならぬ「リード・ベース」という言葉がポールのために生まれます。
歌いながらあれほど複雑なメロディーをベースで奏でる姿は超人的です。
いわゆるルート弾きとはひと味もふた味も違うベース・スタイルはポールの発明でしょう。
またブライアン・エプスタイン亡き後にビートルズを率いたのはポールの人柄あってのもの。
世界で初めてのコンセプト・アルバムの構想を立ち上げてビートルズを芸術の域に引き上げました。
これはポールがビートルズでなしえた最高の業績かもしれません。
いい人はポールだけ
ビートルズが初めて日本の土地を踏んだときに加山雄三が彼らと食事を共にしています。
そのときポールだけが気さくに話しかけてくれたというのです。
日本のスターなど他のメンバーは興味がなかったでしょうが東芝EMIはどうしても加山雄三を送りたかった。
しかし加山雄三はビートルズよりも断然ベンチャーズのファンです。
当時、ベンチャーズのファンはビートルズを聴かないことを信条としていた人が多かったのです。
かくして誰得なのか分からない食事会になります。
ジョンは胡座をかいて食事をして加山雄三に「行儀悪いぞ」と嗜められます。
「いいんだ。オレは今禅の真似をしているんだ」
ジョン・レノンは芸術家然としてそういい切ったといいます。
繰り返しになりますがポールだけが親切にしてくれたことを加山雄三は後年まで大事な思い出にしました。
ポールの人柄というのは超VIPの世界の話でよく分からないのですがジョージをいじめた印象が強いです。
しかしいいところもいっぱいあるのでしょう。
