突如シングルカットされた「Too Proud」
デビュー作と同じ意味を持つタイトルを冠したアルバム「初恋」を2018年にリリースした宇多田ヒカル。
「初恋」は全曲が冒険心に溢れたあらゆる意味でクリエイティビティに富んだ作品です。
にもかかわらずシングルカットは3曲のみでいずれも配信限定。
こうしたプロモーションからもいかに全曲を通して聴いてほしい作品なのかが伝わります。
しかし12年ぶりの国内ツアー初日である2018年11月6日に突如リミックスを含む「Too Proud」を配信。
タイアップなしの新人ラッパーとのコラボ曲をなぜシングルカットしたのでしょう?
コラボ相手のラッパー「Jevon」とは?
「Too Proud」について解説する前にコラボ相手のJevon(ジェイボン)についておさらいを。
Javonはブラジル・ジャマイカ・フィリピンにルーツを持つイギリス人ラッパーです。
本国イギリスでもまだ知る人ぞ知る存在のニューカマー。
2018年現在で24歳のJavonはグライムというイギリスのストリート音楽に出自を持つようです。
近年「Redemption」という曲が評価され徐々に頭角を現しつつあります。
ハッキリいって私を含め「Too Proud」で初めて名前を目にした方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
意外なところでは向井太一を迎えた「Promises」という曲をリリースしたばかりです。
ロンドン在住で生粋の音楽ファンの宇多田ヒカルだからこそ見つけたダイヤの原石なのでしょう。
それではさっそく「Too Proud」の歌詞を解説いたします。
「Too Proud」の歌詞に迫る【前編 宇多田ヒカルパート】
イントロ、すでに始まってしまった物語
I don't know・・・ what do you think?
知らないよ、貴方はどう思う?
I guess I'm not saying what I really think
思ってることを全部言ってるわけじゃないし
What if I did?
もし言ったら?
I don't wanna be rejected
否定されたくないしな
Well, I guess I reject you all the time
まあ、私も拒否してるわけだけどね
出典: Too Proud featuring Jevon/作詞:宇多田ヒカル,Jevon Ellis 作曲:宇多田ヒカル,Jevon Ellis,小袋成彬
もしかしたらお気づきでない方もいるかもしれません。
イントロの裏側にはギリギリ聴き取れる程度の音量でセリフが録音されているのです。
その内容、前半はこんなセリフが収められています。
電話で会話しているのでしょうか?
セリフは男女の声が重なって聴こえます。
実はイントロのセリフは「Too Proud」において重要な意味を持つ歌詞の一部なのです。
セリフは続きます。
So what am I saying?
何が言いたいかって?
What if we pretend that one of us will die tomorrow?
もしも2人の内どちらかが明日死ぬと仮定したら?
Or that we're strangers
もしくは私たちがまだ出会ってなかったら?
Would that change things?
それで何か変わるのかな?
出典: Too Proud featuring Jevon/作詞:宇多田ヒカル,Jevon Ellis 作曲:宇多田ヒカル,Jevon Ellis,小袋成彬
相手は恋人なのでしょう。
この会話、自分がしていると思ったらゾッとしますね。
前半の会話で「否定」「拒否」と言っているのは男女の関係のことです。
宇多田ヒカルさんがどこかで語っていましたのでネタばらしします。
「Too Proud」は夫婦・恋人間における倦怠期、特に肉体的接触の嫌悪についての歌なのです。
一つ屋根の下で暮らすのはいいけど「身体には触れないで」と言われたらどう思いますか?
すぐそばにある触れられない案件
「おやすみ」のあと向けられる背を
見て思い出す動物園の動物
寝食を共にし始めて何年
触れられない案件
己を慰める術の
日に日に増していくことよ
踊る阿呆に見る阿呆
たまには踊らにゃ損損
出典: Too Proud featuring Jevon/作詞:宇多田ヒカル,Jevon Ellis 作曲:宇多田ヒカル,Jevon Ellis,小袋成彬
二人は夫婦なのでしょう。
「おやすみ」
背を向けながら眠りにつく2人。
一緒に暮らしてもう何年たつんだっけ?
いつからこうなっちゃったんだろうな...。
夫婦間の倦怠期は他人からは分からないものです。
さらに気軽に相談できる内容でもありません。
夫婦や恋人は元々は赤の他人です。
親子間のような血のつながりがあるわけではない。
だからこそ深刻な問題に発展するケースが多いそうです。