ビートルズの童謡「イエロー・サブマリン」
リンゴのためにポールが書いた曲
1966年8月発表、ビートルズの13作目のオリジナル・シングル曲「イエロー・サブマリン」。
クレジットはいつも通りに「Lennon=McCartney」ですが、作詞作曲はポール・マッカートニーです。
ポール・マッカートニーがリンゴ・スターのために書いた曲になります。
ビートルズの歴史でリンゴ・スターがリード・ボーカルのシングルはこの曲のみです。
発表以来、リンゴ・スターのパブリック・イメージはこの曲の印象から発します。
メンバーの中で人間的な信頼が一番篤いリンゴのために色々な人々がアイディアを尽くしました。
様々な効果音が用いられているのも聴きどころです。
後のプログレッシヴ・ロックのピンク・フロイドなどに先行するような効果音。
童謡のような曲調であってもビートルズがいかに先鋭的であったかが分かります。
子どもの頃の他愛もない遊びの記憶が甦る名曲です。
なぜか超豪華なゲスト陣
みんなが子どもとリンゴのために
In the town where I was born
Lived a man who sailed to sea
And he told us of his life
In the land of submarines
出典: イエロー・サブマリン/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
リンゴ・スターの温厚な性格が覗けるような朴訥とした歌声が印象的です。
ステレオ・バージョンでは右チャンネルにボーカル、コーラスが偏っています。
左チャンネルに伴奏と様々な効果音が収められているのです。
「僕が生まれ育った街には
海を航海した男が住んでいた
男は僕たちに自分の生涯を語った
潜水艦の中の世界のね」
何ともワクワクするような言葉が並びます。
海は男のロマンというような世界観でしょう。
とはいえバッキング・ボーカルにはマリアンヌ・フェイスフルという女性歌手が参加しています。
ローリング・ストーンズのミック・ジャガーの当時の恋人です。
ミック・ジャガーとキース・リチャードが最初に書いた曲はマリアンヌ・フェイスフルが歌います。
「アズ・ティアーズ・ゴーバイ」という名曲です。
またローリング・ストーンズからは初代リーダーのブライアン・ジョーンズが参加しています。
ビートルズとローリング・ストーンズはライバルとはいえ非常に仲が良いです。
ローリング・ストーンズはジョンとポールが提供した「I Wanna Be Your Man」をシングルにしています。
ビートルズの円熟期
不思議な曲を書くポール
So we sailed up to the sun
Till we found a sea of green
And we lived beneath the waves
In our yellow submarine
出典: イエロー・サブマリン/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
リンゴ・スターの歌は少し平坦すぎる印象があります。
それが彼の持ち味なのでしょう。
「そう僕たちは太陽に向かって航海を開始した
紺碧の海を探し出すまでね
僕たちは水面下で暮らしたよ
僕らの黄色い潜水艦の中でね」
「イエロー・サブマリン」はシリアスな曲が並ぶアルバム「リボルバー」では少し浮いた印象があります。
しかし一方でこのような楽曲は音楽的に円熟してきた中期ビートルズでしか鳴らしえなかったとも思います。
初期のビートルズの比較的に単純なロックンロールからは一皮もふた皮も剥けているでしょう。
こうした音楽的成長が次のアルバム「サージェント・ペパーズ」に結晶します。
ロック音楽が芸術にまで高められるのです。
アルバム「ラバー・ソウル」や「リボルバー」は今の音楽シーンの中で最高の時期として評価されます。
初期のビートルズにはない音楽的な深みと、後期のバラバラになってしまったビートルズにはない団結力。
「ラバー・ソウル」「リボルバー」、この2枚が好きだという現役ミュージシャンは非常に多いです。
ただし、「イエロー・サブマリン」は別物と考えられています。
それはおそらく「遊び」の精神が満載であったからでしょう。
ポール・マッカートニーはときどきこうした不思議な作品を書きます。
「ホワイト・アルバム」の「オブラディ・オブラダ」などがその筆頭です。
「イエロー・サブマリン」はメンバーに愛されました。
しかし「オブラディ・オブラダ」の方は「あんな曲はもう二度とやりたくない」と散々な評価です。
ポール・マッカートニーはソロやウィングスの活動の中でもときどき何とも微妙な作品を遺しています。
こうした楽曲を集めて「ワースト・アルバム」が編めるのではと思うのです。
ポールは紛うことなき大天才なのですがどこか悪い癖があるのでしょう。
リンゴ・スターのトレード・マーク
想像だけで書いた潜水艦
We all live in a yellow submarine
Yellow submarine,yellow submarine
We all live in a yellow submarine
Yellow submarine,yellow submarine
出典: イエロー・サブマリン/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
有名なサビのコーラス部分です。
中学生でも分かるであろう原詩ですが一応、訳出いたしました。
「僕たちは全員
黄色い潜水艦の中で生活している
黄色い潜水艦
黄色い潜水艦」
リンゴ・スターは今でもライブでこの歌をレパートリーにしています。
何せリンゴにとってはビートルズ時代に唯一シングルとなった自身がリード・ボーカルの楽曲です。
ビートルズ・ファンもリンゴ・スターにはこの曲を求める人が多いのでしょう。
コーラスには先ほど紹介したマリアンヌ・フェイスフルやブライアン・ジョーンズ。
そしてビートルズのメンバーとエンジニアたちが参加しています。
潜水艦での暮らしというのは中々想像がつきません。
歌詞を書いたポール自身も潜水艦に乗船したことがあるかどうか疑わしいです。
ほぼ想像だけで歌詞を書き上げたのでしょう。