時代を画した「シー・ラヴズ・ユー」
とにかく何もかも斬新だった曲
1963年8月発表、ビートルズの通算4作目のシングル「シー・ラヴズ・ユー」。
ジョン・レノンとポール・マッカートニーの共作です。
ボーカルも低いパートをジョンが担当し、高いパートをポールが担当しています。
アレンジはビートルズとジョージ・マーティンが知恵を出し合うので当時にしてはかなり斬新です。
斬新だったのはサウンドだけではありません。
歌詞も当時の音楽界では最先端のものでした。
まず音楽の歌詞では下品とされていた「yeah」という言葉を連呼します。
さらに本質的に斬新だったのは歌詞がまとった文体です。
ラブソングに三人称「She」を使用しました。
「I」と「You」による叙述が基本だったラブソングの常識を打ち破ります。
実際の歌詞を和訳しながら「シー・ラヴズ・ユー」の魅力を見ていきましょう。
語り手がいるラブソング
美しい三声コーラス
She loves you, Yeah, Yeah, Yeah
She loves you, Yeah, Yeah, Yeah
She loves you, Yeah, Yeah, Yeah, Yeah
出典: シー・ラヴズ・ユー/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
あまりにも有名な歌い出しです。
歌詞は和訳するほど難しくはないのですが一応訳出いたします。
「あの娘はお前のことが好きなんだよ
Yeah,yeah,yeah
あの娘はお前のことが好きなんだよ
Yeah,yeah,yeah
あの娘はお前のことが好きなんだよ
Yeah,yeah,yeah,yeah」
この曲は語り手がいます。
歌詞に少しだけ登場する「I」です。
この「I」が男友だちの「You」に色々と語っています。
男友だち同士の親しさを強調するためにこの「You」は「お前」と訳出しました。
「Yeah」は歌詞で使うのは下品とされていた言葉です。
それでも「I」と「You」の親しさを表すのに丁度いいですし、語感も「You」の直後に置くとよく響きます。
短い歌い出しですが「シー・ラヴズ・ユー」という曲の魅力が一箇所に詰まっているのです。
ジョン、ポール、ジョージによる三声コーラスが美しい。
しかしこのコーラスも当時は「五月蝿い」と罵倒されたのでしょう。
そうした旧い時代の意識をビートルズが変えてしまったのです。
2分17秒の曲にドラマがたくさん
ユニークな歌詞
You think you've lost your love
Well I saw her yesterday-yi-yay
It's you she's thinking of
出典: シー・ラヴズ・ユー/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
引用文字数制限の関係のために途中で切れています。
申し訳ございません。
歌詞を和訳しながら解説いたします。
「お前はフラれたと思っているね
オレは昨日彼女を見かけたけれど
あの娘が想っていたのはお前のことだよ」
どうやら「お前」と「あの娘」は喧嘩したようです。
そのために「お前」はもう関係が終わってしまったなんて悲観しています。
落ち込んでいる男友だちを元気づけようとしているのが「オレ」です。
諦めることないよ、なぜって「あの娘」は「お前」のことばかり考えているようだよと教えます。
「シー・ラヴズ・ユー」は僅か2分17秒の曲です。
それでもドラマがたくさんあります。
初期のビートルズはまだ歌詞を文学的な詩へと昇華する力はなかったようです。
おそらく中期ビートルズのジョン・レノンが書いた「イン・マイ・ライフ」から詩への昇華が始まります。
それでもロックンロールの歌詞としては初期の頃から非常にユニークでした。
斬新なサウンドばかりに注目が集まりますが、大衆的な歌詞も初期のビートルズの魅力です。
ふたりの恋を仲介したい
音楽的な響きがある原詩
And she told me what to say-yi-yay
She says she loves you and you know that
Can't be bad
Yes, She loves you and you know you should be glad
出典: シー・ラヴズ・ユー/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
原詩の音の響き具合を読み込んでみてください。
非常に音楽的な響きのある歌詞だと分かっていただけるはずです。
歌詞を和訳しながら解説いたします。
「あの娘はオレにあることをいったよ
あの娘はお前のことが好きなんだってさ
それって悪くないだろ
そうさ、あの娘はお前のことが好きなんだよ
分かるだろ お前は喜ぶべきなんだよ」
「お前」と「あの娘」の仲を何とかとりまとめてあげようと必死な「オレ」です。
「あの娘」の機嫌がなぜこのようにコロコロ変わっているのかはこの後の歌詞で判明します。