ここでもまだ引き続き、例の記憶を辿っているようですね。
絹はとても上質で、滑らかな肌触りが特徴的な繊維です。
そんな絹でも絡んでしまうとは、一体どういうことでしょうか。
これももちろん比喩表現なのですが、リボンは思考回路のことを表現しています。
つまり本質は単純明快なことなのに、なぜか答えを導き出すことができずにいるのでしょう。
そんな状況ながら必死に何かを見出そうと、引用部分2行目にあるとおり思考に没頭しています。
枯れてゆくメロディ
空を仰いでる霞み出す空を
此処じゃ鼻歌もモノクロに変わる
出典: 造花が笑う/作詞:オオキノブオ 作曲:ACIDMAN
いま主人公がいるのは、スッキリしない空の下。
いや、正確に表現すると、先ほどまでは晴れていたのでしょう。
それが急にモヤモヤと、スッキリしない空模様に変わってしまったのです。
そんな世界では鮮やかなメロディだって、白黒で心に響かない音の羅列になってしまう。
これはつまり、人の心模様を表現しているのでしょう。
純粋な心で聴けば美しく感じられるメロディだとしても、邪念があれば意味をなさない…。
ご機嫌な時についつい出てしまうような鼻歌だって、調子が悪ければただの雑音なのです。
まるで唐突な表現のようにも感じられますが、直前に引用した歌詞からつなげて考えることもできますね。
思考回路が絡まっているからこそ、美しいメロディを聴き入れる余裕もない…ということでしょうか。
あの日のことを想う
零れ落ちる涙
懐かしき日 あの暁
涙落ちるただサラサラと
染み渡る夜にふとくらむ
出典: 造花が笑う/作詞:オオキノブオ 作曲:ACIDMAN
1行目に登場する暁とは、太陽が昇る直前のほの暗い頃を意味する言葉です。
夜中~早朝に切り替わる、そのくらいの時間帯を想像すれば間違いないでしょう。
普通なら眠っていてもおかしくはないそんな時間に、涙を流していた誰か。
悲しくて眠れなかったのか、だれにも気にされずに泣ける絶好のチャンスなのか…。
自分1人だけポツンと存在しているかのような、不思議な感覚に包まれているのでしょう。
自分が感じていること、考えていることが世界いっぱいに広がって、それに浸れるような気さえしています。
ここで懐かしんでいる過去のある日は、きっと先ほど触れられていた夢と関係があるのではないでしょうか。
つまり、いまは感情のない「あの人」が自然に笑っていたかもしれない過去のこと。
主人公はそんな日のことを思い出しながら、その懐かしさや儚さに涙しているのかもしれません。
戻りたい…
何かが咲いて 何か無くした
進むなかれと 響くなかれと
おぼろげ夢の晴れた日に帰ろう 帰ろう
出典: 造花が笑う/作詞:オオキノブオ 作曲:ACIDMAN
ここではポジティブとネガティブ、両極端な言葉が並んでいます。
これはやはり、「あの人」のことを表していると考えられます。
「あの人」が咲かせた何か…それは歌詞に登場しないため、いったい何なのか特定することができません。
ただ1つ確実なことは、それを手に入れたがために「あの人」は感情を失った可能性がある、ということ。
そう、ネガティブな方は、「あの人」が笑わなくなったことなのです。
そして引用部分2行目。
感情を失っただけでもう重症だとは思いますが、主人公はそれ以上悪い方向へいかないようにと願っているようです。
この状態がこれ以上悪化しないように…この状態が本人にも周囲にも影響しないように…。
そんなことを願っているに違いありません。
戻りたいのは何故?
そして引用部分最後の1文。
ここで綴られている「夢」とは、前半に登場した「おぼろげ」な夢のことではないでしょうか。
歌詞を思い出してみてください。
あの夢の中では、いまは無感情になってしまった「あの人」が笑っていましたね。
きっと主人公にとって、それは喜ばしい事実なのでしょう。
だからこそ願うのです。「あの人」が笑えていたあの頃に戻りたい、と…。