ここからサビに突入です。
Aメロまでの周りを傍観するような視点から一転し、自身の感情を表す言葉がしきりに登場しています。
1~2行目の表現は、「どこへ行こうと思い出さないことはない」という誰かに対するラブコールのようです。
誰かを愛するということは、常に心の片隅でその人のことを考えるということだと思います。
ここではそれを表しているのではないでしょうか。
3~4行目の表現は、「頭隠して尻隠さず」という諺をオマージュした表現です。
隠そうとしても隠しきれない自身の心の内を表しているように感じられます。
次の5~6行目は、悲しみに打たれても、自分の気持ちを「変えてたまるか」という決意の表現であると感じました。
この歌詞の主人公は、誰かを強く想っていることが分かる部分です。
最後の2行では、内面の象徴である心と、外側の象徴であるおさげを対比させています。
主人公の心の揺れ動きを表しているのでしょう。
Aメロを情景描写的表現だとするならば、サビは力強い内面描写的表現だといえるでしょう。
2番
2番のAメロ
宝箱の中は
素知らぬ顔をして
万引きした物が
光っていた
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
間奏を挟み、2番が始まります。
ここからの歌詞は難解です。
イッキュウさんらしい、感覚的な歌詞だなと感じました。
1番のAメロと同じ対比だと考えれば、ここも他者に対しての批判に感じられます。
心に仕舞ってある大切なもの。
思い出と共に仕舞われているその人にとっての宝物。
その中に、他人のものに関わらず自分のものと誤魔化して存在している宝物。
そんなことが思い浮かびます。
緩くなった正義感に
甘んじて きらきら
誤魔化そうとしている
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
続くパートも、前の4行から続いています。
他人から手に入れた宝物を、自分のものであると正当化しようとしている人。
最初は確固とした自分の意志があったはずなのに、それが段々と崩れていき基準が曖昧になってしまう。
自身を正当化することで、自分を納得させようとしているのです。
Bメロ
ふわふわ
きらきら
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
ここでBメロが挟まります。
ここはただのオノマトペで意味のないものに感じてしまう歌詞です。
しかし、実際はこれがあることによって曲自体の印象を変える効果が生まれていると感じました。
ここの歌詞があることによって、全体としてシリアスな印象を受ける歌詞全体に抜け感を足しています。
ここを経て、次に訪れる2番のサビは、そのギャップによって更にシリアスに感じられる効果がありました。
2番のサビ
何を盗られようが
無くなることはないわ
頭の中はまだまだ溢れ
尽きることはないわ
誕生日はきっと
うまく祝えないわ
全部あげてもまだまだ足りないな
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
ここから、2番のサビです。1番のサビと同様に、自身の感情を表しています。
1~2行目の歌詞は、Aメロと対比させた表現です。
ここは、Aメロに登場するようなずるい人に対しても自分は怯むことがないのだという決意を感じました。
3~4行目もAメロと対比しています。
自分の正義感や感性が疲弊していないということを表しているのでしょう。
5~7行目は、1番のサビにも通じる、大切な人への気持ちを表しています。
誰かの誕生日を祝うということは、その人が自分にとって大切であるということ。
しかし、大切であれば大切であるほど、その人に想いを伝えきれません。
そんなもどかしさが伝わる秀逸な表現です。
イッキュウさんの歌詞は、力強い女性を描いている歌詞が多くあります。
「真っ黒」ではその力強さはそのままに、愛情の深さも感じました。
曲終盤の歌詞
Cメロ
宝箱の中は君の髪がふわふわ
返しようのないものを
盗んだ爪痕を残して
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
ここから、曲は終わりに向かっていきます。
新たなメロディと歌詞が登場しますので、ここからはCメロだといっていいでしょう。
1行目は、歌詞の主人公にとって、「君」という存在が愛おしく、大切なものだということが分かります。
また、2~3行目は、主人公の心が「君」によって盗まれたのだという風に解釈できるのではないでしょうか。
心は、一度あげてしまうと返してもらうことができません。
大切に思った人を嫌いになることはできないからです。
「君」を大切だと思った気持ちが、心に刻まれている様子を表しているのだと考えられます。