tricotがメジャーデビュー
tricotは2010年から活動を続けているロックバンドです。
彼らのサウンドの中で特筆すべき持ち味が、変拍子。
変拍子とは、簡単にいうと3拍子や4拍子以外の変則的な拍子のことを指します。
彼女たちの楽曲ではポップスではあまり用いられない拍子や、変則的な曲展開が頻繁に行われるのです。
ブレイク(楽曲中で演奏を一時停止する手法)なども巧みに操り、その高い音楽性は海外でも評価されています。
2020年となった今年。
彼女たちが活動を続けてきて10周年のアニバーサリーイヤー。
そんな祝うべき年に、彼女たちがついにメジャーデビューを果たしました。
「真っ黒」
歌詞を解釈
そんな彼らのメジャー1stアルバムとなった『真っ黒』。
その最後に収録されているのが、今回ご紹介する表題曲「真っ黒」です。
サウンドに注目されることの多いtricotですが、今回はその歌詞に注目し、考察していこうと思います。
感覚的であり、抽象的でもある中嶋イッキュウさんの歌詞。
「真っ黒」の歌詞を考察することで、どのような風景が見えてくるのでしょうか。
MVを紹介
歌詞を考察していく前に、まずMVを見ていただきましょう。
MVというのは、そのバンドの世界観を表現するためのものといっても過言ではありません。
同アルバムから公開されたMV「真っ白」では、白を基調としていました。
しかし、今回は一転して、タイトル通り黒を基調とした世界観が広がっています。
前編、tricotの演奏シーンによって構成されるこのMV。
彼女たちの存在感と、覚悟が見てとれる作品です。
このMVをまだ未視聴の方はぜひ、ご覧になってみてください。
1番
1番のAメロ
行列の中には
素知らぬ顔をして
万引きした者が
混ざっていた
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
歌い出しの4行は、社会のことを表す表現に感じられます。
列というのが社会を表すのだとして、素知らぬ顔をしているのは誰なのでしょうか。
具体的に何を盗んだのかを考えてみても、答えは見つけにくいものです。
私は、他人の手柄や功績といったものが思い浮かびました。
目に見えないものを悪気のない様子を装って奪うような人。
そして、そんな存在が紛れ込んでいる社会。
そんな場面が目に浮かびます。
疎くなった感性に
甘んじて ふわふわ
流されようとしている
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot
この3行も、歌い出しの描写から繋がっていると考えて良いでしょう。
初めは善良だった人間が社会に疲弊し、いつの間にかラクをするために他人の手柄を横取りする。
そんな一場面が思い浮かびました。
社会に揉まれることで、感受性が豊かなままではいられなくなる人もいます。
そんな人を表しているかのようです。
でもそれは、仕方のないことかもしれません。
社会の荒波では、若い頃と同じようにはいかないのです。
1番のサビ
どこに隠れようが
思い出さぬもんか
頭隠しても振った尾っぽは
居場所を知らすのさ
雨に降られようが
明日が変わるもんか
心隠しても結ったおさげは
視界を揺らすのさ
出典: 真っ黒/作詞:中嶋イッキュウ 作曲:tricot