sugoi kawaii JYOCHO』のイントロは約17秒。

その短いイントロだけでも実は3部構成になっています

ギターベースドラムの変拍子ユニゾンパート。

ここだけを取り上げるとZazen Boysのリフに近い雰囲気です。

その後ギターベースのユニゾンパートに入ります。

クラシックピアノで例えると5連トリルとでもいうのでしょう。

タッピングという指で弦をポンとつつく奏法が多用されのですが...。

まずベースでこのフレーズを弾こうと思うこと自体がかなり可愛くないです。

しかし驚くべきはだいじろーのギター奏法。

宇宙コンビニ~JYOCHOの流れを見てきた方はご存知だと思います。

左右の腕を頻繁に入れ替える変則的な奏法

普通はしない、というかだいじろー以外にこんな奏法を用いるギタリストの存在を知りません。

超絶ギタリストと呼ばれる方は数多く存在します。

しかしあのMIYAVIでもこんな変態奏法は思いつかないでしょう

次第にドラムとのユニゾンを始めるギターサウンド

『つづくいのち』のような歌ものでも変わらずこの奏法を用いるだいじろー。

歌を削ぎ落したインスト曲『sugoi kawaii JYOCHO』ではその理由の一端が垣間見えます。

彼の超音速奏法はその後ドラムとのユニゾンを展開するのです

阿吽の呼吸で絶妙な間合いを計りフレーズを織り成す5人。

その中でだいじろーのギターサウンドは次第にリズム隊の1つとして溶け込んでゆきます

するとリスナーの耳に残るのは独立したメロディを奏でるフルートになるのです。

目立ちたいのではなく楽曲の持つ躍動感を表現するために身につけられた技術であることが分かります。

繰り返される“円”のモチーフ

JYOCHO【sugoi kawaii JYOCHO】MVを徹底解説!超絶テクニックに酔いしれろ!の画像

5分割の構図内を目まぐるしく移り変わる演奏風景。

いつしかメンバーの位置関係や音の配置さえも曖昧になってゆきます。

しかし注視すると5人の配置がサークル状にっていること。

そして円の中心に向けて音を鳴らしていることが分かります。

この円環構造がJYOCHOのコンセプトの1つなのです

これまで発表してきた作品のアートワークも全てに円のモチーフが採用されていること

さらにMVでは常に輪になって演奏していることからもそのことはうかがい知れます。

旅の終着点を見たメンバーは?

sugoi kawaii JYOCHO』の中盤。

だいじろーのソロらしきパートを挟み一時のカオスを迎えます。

その後5人の3連トリルのユニゾンを経て美しい旋律へと辿りつくのです。

まるでそのメロディを探す旅をしていたような錯覚を覚える瞬間です

しかしそれもつかの間、再びの3連トリルの連続で楽曲はあっさりと終曲します。

MVの終わる直前、同じ方向を向き上を見上げる5人のメンバー

その目は何かを悟ったようにカッと見開かれます

終わりがあるから始まりがある

JYOCHO【sugoi kawaii JYOCHO】MVを徹底解説!超絶テクニックに酔いしれろ!の画像

このMVの終わり方はJYOCHOの考える“情緒”を視覚化したものだと思われます。

美しい終わりを探し、また繰り返してゆく。

まさしく『美しい終末サイクル』というアルバムタイトルの通りです。

すごく可愛いと称されているのは私たちの儚い命を表現しているのではないでしょうか?

終わりがあるから始まりがあるという死生観は日本人ならではの考え方です。

アルバムの初回盤のアートワークは通常盤を俯瞰した光景が採用されています。

様々な短い光の線が渦となり続いてゆくその光景は...

情緒あふれる世界観

『つづくいのち』でも歌われていた「終わり」と「始まり」の連続性

つづくいのち/JYOCHO

美しい終末を迎えた
それを迎えにきた 命

自由を許されずに
自由を許されている

僕たちは再生を 象り
ほんとうのかたちに あこがれた

波をみて 名前を一つずつ 決めていく

出典: つづくいのち/作詞:中川大二朗 作曲:中川大二朗

『美しい終末サイクル』の収録曲のテーマは全て「終わり」と「始まり」です

リードトラックである『つづくいのち』の歌詞は特に顕著にそのことが綴られています。

生と死、自由と不自由、そして破壊と再生

このような相反する概念が全て円環状に繰り返される様子が美しい旋律で表現されているのです。

聴き込む程に味わいの出るJYOCHOの情緒あふれる世界観。

それをシンプルに表現したのが『sugoi kawaii JYOCHO』のMVなのでした。

最後に