2人でいると何気ない風景も新鮮でお互い安らぎを感じられる存在。

しかし、ふと気づくと2人は子供から大人に変わっているという現実がありました。

もうあの頃には引き返せないという寂しさや切なさを、「寒さ」で表現しているのでしょう。

子供から大人になってしまうタイミングなんて意外とひょっこり現れて結果だけを残し去っていく…。

そんな現実を突きつけられ、「くだらない~」や「まぬけな~」という言葉でごまかしています。

このごまかしには、認めたくない気持ちもう1度体験したいという気持ちが含まれているようですね。

新たに生まれてきたジレンマを抱えつつサビへと突入していきます。

大人になったうれしさと醜い欲望との狭間で

若さ故の欲望

名前をつけてやる 残りの夜が来て
むき出しのでっぱり ごまかせない夜が来て

出典: 名前をつけてやる/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

その時の勢いだけで突き進んでしまった、もう少しゆっくり感じていたかった、そんな気持ちが感じられます。

人生で大切な出来事だったはずなのに、こんなにあっさりと終わってしまって悔しいと感じた夜の途中。

でも、これで僕は大人になったと悟っただろうということが最後の「ごまかせない~」から分かります。

ついさっきまで子供だった僕にこれから起こることに名前をつけて教えてやりたい

そんな気持ちがこみ上げてきて、何とかこの思い出を残したいという素直な気持ちが汲み取れます。

「むきだしの~」は隠語に違いないですが、ここに草野正宗の言葉の巧みさがよく表されているようです。

抽象的に考えてみると、この1度覚えた「むきだしの~」は初めての体験を表現してるのではないでしょうか。

そして、次の夜がやってきてもあの時間を呼び起こそうとしてくるのです。

若いが故の湧き出す欲望に抗えない本能として示されており、この葛藤に苦しめられます。

後からやってくる気持ちは何?

名前をつけてやる本気で考えちゃった
誰よりも立派で 誰よりもバカみたいな

出典: 名前をつけてやる/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

そんな気持ちを若い自分は押し殺すことができません。

やがて心と体が釣り合わなくなってきて、興味本位だっただけなのに、本当に好きになっていく。

しかし本当に好きなのか、勢いだけだったのか、相手はどう思っているのだろうか。

そんなことを一生懸命に考えている自分を自嘲するかのように、「バカ」という言葉が使われていますね。

目に見えないものと現実の狭間で揺れ動きながらも、自分を見失いたくないのでしょう。

そんな気持ちが汲み取れます。

再会を果たすも…

やはり欲望には逆らえず

マンモス広場で8時 わざとらしく声をひそめて
ふくらんだシャツのボタンを ひきちぎるスキなど探しながら

出典: 名前をつけてやる/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

そしてまた2人は出会います。

自分は本気で相手のことは考えていないはず、相手もそうに違いない、そう思っていたかもしれません。

ただの遊びの延長だと思い込みたいのは主人公自身の正直気持ちでしょう。

しかし体は正直で、またあの夜に戻りたい気持ちが勝ってしまいます。

誰もいない公園で待ち合わせ、お互いの秘密を共有するかのように声をひそめて語り合うのです。

そうしていると、抑えられない欲求に負けそうになってしまう、そんな状況でしょうか。

「ふくらんだ~」はまさにその欲望の象徴であり、目をそらさずにはいられない、そんな情景が浮かびます。

広場のやわらかい名前に対して強引さを感じるフレーズ。

この対照的な言葉の操り方が巧妙さを隠し切れません。

名づけた夜はもう戻らない

回転木馬回らず 駅前のくす玉も割れず
無言の合図の上で 最後の日が今日だった

出典: 名前をつけてやる/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

しかし、相手の方が上手で、華麗にかわされてしまったことがうかがえます。

自分が思っていたあの名づけた夜がどんなものだったのかもう1度確かめたいと思っていた主人公。

もう1度あの夜を再現し今度は満足したい、という願望をあれこれ思い描いていたはずです。

回転木馬やくす玉が割れる表現は、また体験できると信じていたのにそれは叶わなかったことの比喩でしょう。

懇願しても再現は不可能だという現実を突きつけられたようですね。

もどかしい自分に葛藤しながらも、結局は何も言えず静かに別れることしかできなかったのが分かります。

そして名前をつけたあの日は2度とは戻らず、まさにそれっきり。

最後の1行からはそんな空しい結末であったことが伝わってきます。

複雑な心境をシンプルに表現している