サビからは、一気に切ない、でも力強いブルース調のロックの雰囲気を全面に出して唄い上げます。
「愛しているよ」と言いたいのに、言えない、そんなもどかしい気持ちを抱く主人公正義の心情です。
しかし、それはまるで和義さん自身の心の奥を覗いているようでもあります。
愛を伝える代わりに、「ひとりで真っ暗な夜に、歌を唄う」そんな切ない情景が浮かんできますね。
2行目ではまるで矛盾するような、反対の意味を唄っています。
これは、「愛しているんだ」ということを言葉で伝えられないならば、歌を唄おう。
唄うことで「愛を確かめ合いたい」、そんな気持ちが込められているのではないでしょうか。
サビのあとは、ハーモニカの懐かしい雰囲気の音が響きます。
まさに夜の街に響くロック音楽にピッタリのメロディーですね。
ありのままの自分を受け入れてほしい
オレはオレになりたいだけなんだ ただそれだけなんだ
誰だってそうだろ?
ロックンロールに教わったことは「人と違って自分らしくあれ!」ってことさ
そして「愛と平和」そいつの意味を探している
出典: 月光/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
主人公の本当は他の誰かになるわけでもなく、ありのままの自分自身を受け入れてもらいたい気持ち。
それが、この歌詞には表れていますね。
和義さん本人もきっと「自分のロック」を唄いたいはずです。
そして素直にただ自分の熱い想いを歌詞とメロディーにぶつけている、そんな強い気持ちが溢れています。
本当の自分自身でいたいと思うのは自分だけではなく、誰もがそう思っているのではないだろうか?
そんな想いが伝わってきます。
和義さん自身も洋楽やロックの世界にのめり込むことで人と違うことの良さを突き詰めているはず。
日本では「他の人と違うことをしてはいけない」「出る杭は打たれる」そんな風潮が強いです。
しかし、実際はそれに多くの人が苦しんでいるのでは?という意味が込められているのではないでしょうか。
和義さん自身がロックンロールを通して、自分らしくいることが伝わってくるようです。
そして愛と平和の大切さをひしひしと感じ、それを多くの人に伝えたいという真っ直ぐな願いを感じ取れます。
人生において「価値を見出す」ものは何なのか?
あっちの席でオッサンは言ったよ「オレは百人の女と寝たぜ」
こっちの席じゃ若者が「男の価値はなにで決まるのかな?」
そしたらとなりの女が「そんなの“家族に決まってるでしょう!」
出典: 月光/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
この会話はバーや飲み屋でなされているものでしょうか。
どこかの席では、おじさんが女性関係を自慢しています。
男の価値というのは「何人の女性と関係を持ったか」で決まると思っている男性も多いでしょう。
そこに「男らしさ」という価値を見出している、というメッセージが込められているのかもしれません。
その一方で、若者は「本当の男の価値はなんだろうか?」と疑問を抱いています。
和義さん本人が悩んでいるような意味も込められているかもしれません。
その答えは、隣の女性が「家族」だと言い切ります。
この主題歌のドラマもまさに「家族」について描かれているものです。
ソロ活動をスタートした主人公正義の元に彼の子だと言い張る子供たちがやってくるというあらすじ。
これまで身勝手でワガママに振る舞っていた正義が「家族」という責任や負担を抱えることになるのです。
そして正義は「家族」を通して本当に大切な物を見つけていきます。
ドラマのテーマである「家族」と男の価値は何で決まるか、という課題がリンクしているのかもしれません。
胸の奥に光りだしたものとは一体何なのか?
月も見えない夜に 何かが光りだした
気のせいなんかじゃない 確かに胸の奥の方
出典: 月光/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
1行目の夜とは、人生が真っ暗闇で手探り状態の時のことでしょう。
何が正解で何が間違いか分からずに困り果てていた主人公正義の心情が浮かびます。
1行目の後半で光ったものは、人生の答えのようなものが見つかったという意味ではないでしょうか。
もしくは希望の光が見えたという気持ちの例えでしょう。
そして感じるのは、本当に大切なものが見つかったという喜びの光なのかもしれません。
その光は、まさに正義が探していた人生においての「大切な何か」です。
それは「家族の大切さ」。
これは、もしかして和義さん本人の想いでもあるのかもしれません。
和義さん自身もご結婚されたのち、お子さんを授かり家族の大切さを強く感じるようになったはずです。
そんな家族への熱い思いが、この主人公と重なるように描かれているようですね。
本当に大切な物はやっぱり…?
愛に飢えた人達が列をなす
愛されたいと願う人でどこも順番待ち
それぞれの歌うたいながら 夜を越えてく
出典: 月光/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
愛されたいと願う人は世の中に沢山溢れているのに、それをうまく伝えられなかったり気付いていなかったり。
親に愛されずに育った人や恋人に別れを告げられた人、離婚した人、死別した人など…。
世の中には沢山の別れを経験して傷ついている人達で埋め尽くされています。
そんな寂しくて辛い想いを抱えながら孤独と闘う人達は「愛される」ということを願ってずっと待っています。
列をなして自分の番が来るまで、愛されるまで、待ち続けているような…。
そんな愛に飢えた人達の姿が思い浮かぶような歌詞です。
みんなそれぞれが、自分自身の歌を唄います。
つまり、自分の言葉で愛を伝えようとしてもうまく伝えられず、複雑な気持ちを抱いて長い長い夜を過ごしている。
そんな葛藤に悩まされながら多くの人々が暗闇の中で思い悩む、切ない様子が描かれているようですね。