夏の憂鬱
あゝもう行かなくちゃ 秋が来るから...
出典: 夏の憂鬱[time to say good-bye]/作詞:HYDE 作曲:KEN
前へ進む強い決意ではないでしょう。
後ろ髪を引かれるような思いと切なさ、寂しさ。
時には君との美しい思い出に酔いしれ…
しかし時は待ってはくれません。
迷いも後悔も残っているけれど、いつまでもここに居ることはできないのです。
君が居た夏、君という夏は終わりを迎えようとしています。
秘めていた心の叫び
失った多くのものたち
そして眠りを失くした
そして貴方を失くした
そしてつばさを失くした ah
そして光を失くした
出典: 夏の憂鬱[time to say good-bye]/作詞:HYDE 作曲:KEN
冒頭でも歌われていたように、突然の別れから眠りを失いました。
これまで“君”と表現されていた女性が“貴方”と呼ばれています。
“貴方”とは、主に尊重する相手に対して使われていますね。
それだけ尊い存在だったのです。
貴方と居た時間。
全てが満たされ、自分も悠然と空を飛ぶ鳥のようだった…
貴方の存在が、自分に翼を与えてくれた。
翼を失い、墜落した自分は堕天使も同然でしょう。
そして夏の太陽にも似た貴方を失ったことで、自分を照らしていた光さえも見失ってしまいました。
光さえ失ってしまったが故、前どころか周囲さえ見ることができません。
そこはまさに暗闇の中。
貴方がすべてだった
すべて愛していたのに
すべて壊れてしまった oh
何を信じて歩けばいいの?
僕に降りつもる夏の憂鬱
出典: 夏の憂鬱[time to say good-bye]/作詞:HYDE 作曲:KEN
“自分も悪かった”
本意ではない別れを迎えた時、頭ではそう思うこともあります。
しかし、辛くとも向き合わなければいけない現実に心が悲鳴をあげることだってあります。
まさにHYDEの歌声は悲鳴そのものでしょう。
貴方の心も仕草も容姿も全てを愛していたつもりだった。
しかしこの愛の形は貴方には届いていなかった。
自分の何がいけなかったのか。
貴方との未来や思い出が砕け散ってしまったことで自分も崩壊してしまったように見えます。
内心では自分の愛が裏切られてしまった思いもあるのではないでしょうか。
信用する対象を求めていることからそう受け止めることもできます。
まだまだ夏の憂鬱の中で彷徨っています。
重すぎるほどの愛
一方的な強い愛情
ノスタルジックな光景が浮かびますが、主人公の感情は現在進行形とも取れます。
強すぎた愛情と、全てを捧げてしまったせいで生きる意欲も消失しかけています。
虚無感に苛まれるほど全身全霊で愛していたのでしょう。
しかし“彼女を失った自分”について描かれている部分が多く見られます。
まだ彼女の思いを理解するところに達していないのです。
自分の気持ちを整理できず失恋直後の絶望感を引きずっているのではないでしょうか。
別れに至った理由よりも彼女の居ない現実が何よりも耐え難いのです。
さいごに
L'Arc〜en〜Cielが表現する愛
現実離れした美しい情景にナルシシスティックな愛。
L'Arc〜en〜Ciel極初期のノスタルジックな雰囲気と現代的な表現が合わさった楽曲でしょう。
視覚的にも聴覚的にもL'Arc〜en〜Cielしか生み出すことのできない楽曲の代表格と筆者は思っています。
VHSだった当時の映像も、DVDで観ることができるのでぜひチェックしてみてください。
OTOKAKEには他にもL'Arc〜en〜Cielの楽曲について知ることのできる記事がたくさんありますよ。