「ミラクル・ラブ」とふたりの歴史
1991年10月30日発表、牧瀬里穂のデビュー・シングル「Miracle Love」。
竹内まりやが書き下ろした楽曲で、1992年にはセルフ・カヴァー曲も発表されました。
セルフ・カヴァーした際にタイトルをカタカナ表記に改めます。
この曲は2019年にAbemaTVで放映された橋本環奈主演のドラマ「1ページの恋」の主題歌にもなりました。
長らくアルバムには未収録でしたが「Denim」のボーナス・ディスクと企画盤「Turntable」で聴けます。
楽曲の世界観はまさに竹内まりやワールド全開のラブソングです。
奇跡の愛に恵まれたふたりを祝福するような幸せのオーラが漂うサウンドになっています。
この記事は主に歌詞について紐解くものです。
ふたりの愛がどのようにして芽生えて発展したか、そのドラマを追ってみましょう。
この曲で描かれるような自然な愛の姿こそ「ミラクル・ラブ」なのだと感じられるはずです。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
こんな愛は奇跡
異性の友人からの発展
こんな近くにいたのにどうして
気づかなかったの 今まで私
ないものねだりの 恋人探しは
これでおしまいね あなたがいるから
昨日とまるで違う二人に
女神さえ苦笑いしてる
出典: ミラクル・ラブ/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや
歌い出しの歌詞になります。
1990年代初頭らしいデジタル・サウンドでのアレンジが印象的です。
登場人物は語り手の私と愛するあなたになります。
このふたりが愛を確認し合ったのはこの日です。
それまで私はあなたのことを気のおけない異性の友人としてしか意識していません。
わたしは恋愛についていつも高望みをしていた女性でした。
異性を求めていても相応のプライドがあるために中々恋人を作ることができません。
そうした恋の悩みを始終、あなたというよき友人に相談していたのでしょう。
恋についての悩みは同性よりも異性の友人の方が相談しやすいです。
異性の方が求めている理想の相手の気持ちまで分かるという利点があります。
同性同士の恋愛相談はどうしても愚痴になりやすい側面もあるでしょう。
どうしてそうなるのかは不思議ですが「男ってやつはさあ」みたいなニュアンスの会話になりやすいです。
その点で異性の友人に相談するときに「男というのは」などと語り出すのは気が引けるでしょう。
その分、建設的で具体的なアドバイスを求めることができるようになるものです。
あなたの片想いが実る日
ところが私が恋愛相談していた相手のあなたの方はかねてより密かな思いを胸に抱いていました。
「いい相手がいないのだけれど」という私の相談をあなたはどんな気持ちで聞いていたのでしょうか。
あなたは私の話を聞きながら片想いをしていたことになります。
そういう経緯を想像するとあなたの心にあったであろう伝えきれない思いというものを切なく思えるのです。
異性との間で友人関係は成り立つのかという議論をしたがる人もいるでしょう。
かなりの人が男女の間に友人関係は成立しないと思っています。
もちろん異性の友人だっていっぱいいるという人もいるでしょう。
この議論の答えは人それぞれ性格にばらつきがあるものですから万人に共通の正答などないです。
「ミラクル・ラブ」ではいい友人関係が成立しているかのように思えました。
ただ、結局はやはりこのふたりも恋愛関係に発展してゆきます。
愛を司る女神はその意外性に思わず苦笑したことでしょう。
思いがけない愛の誕生というものは本当にあるのです。
愛は生活圏内にある
目と目が合ったら Miracle
運命の不思議な兆し
こうしてたどりついたのは奇跡
赤い糸で結ばれてたの
出典: ミラクル・ラブ/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや
私はあなたときちんとアイコンタクトをした際にその愛に気が付きます。
あなたがしっかりと私のことを思ってくれているのだと知るのです。
出会いなんてどこにあるのだろうと遠くを探していた私がいました。
一体、運命の出会いなんてあるのかしらとあなたに相談していたかもしれません。
そして今日になって一気に目を醒ましました。
運命を遠くに探していたけれども、生活圏内にいる友人こそがその相手だと気付くのです。
この気付きの瞬間にあなたの片想いは報われます。
おそらくこれまでの私は愛を観念としてしか捉えていなかったのです。
愛のカタチというものを勝手に理想化していたのでしょう。
そのために実際の愛に視線が合わずにいたというのが実情ではないでしょうか。
しかし今日になって視線の先、つまり目の前にある愛に気付くことができました。
傍に愛があったことを私は奇跡だと歌います。
しかし一面では私はようやくありふれた愛に接することができたと考えることもできるのです。
ありふれた愛というのは大事なことでしょう。
理想の中で観念化された虚構の愛ではありません。
目の前で確かめられるひどく現実的な愛だけが本当に私たちを癒やしてくれるものです。
そのことに気付けたことが奇跡だと私は歌います。
赤い糸をたどっていたら馴染みのあなたがそこにいてくれたこと。
人生は巧くできた物語の舞台であることを教えられました。
「忘れもの」の正体は
申し訳ない思いを抱えて
いつも悩みを打ち明けてたのに
あなたの痛みは 知らずにいたの
本当の優しさ 言葉じゃ見えない
忘れものはほら すぐ目の前よ
ひそかに私だけを待ってた
その背中とてもいとしくて
出典: ミラクル・ラブ/作詞:竹内まりや 作曲:竹内まりや
私もこのときにあなたが心を痛めながらも自分の話しを聞いてくれたのだと悟ります。
あなたがどのように愛を伝えたのかは歌詞の中には明示されていません。
先ほどまでに見たアイコンタクトの中だけですべてを悟ったのかもしれないです。
いずれにしても私はこの段階になって一種の申し訳なさを感じてしまったことでしょう。
自分の話しはしていても相手の気持ちについて尋ねたことはなかったのですから罪悪感だって芽生えます。
しかし一方でふたりが愛を通わせられたことに感謝しているのです。
また日頃から私を支えてくれていたあなたの存在にいま一度目を啓きました。
この先の私の人生において、もうあなたをないがしろにするようなことは起きないでしょう。
私にとってあなたはこれまでもかけがえのない人でした。
しかしより密接なパートナーになれたことで、もう永遠の愛でさえ誓える相手にめぐり逢った気分です。
あなたが私をずっとその優しさで守ってくれていたのだと、しっかり気付くことができました。