【es】~Theme of es~
混沌とした時代
この曲はMr.Children8枚目のシングルとして1995年にリリースされました。
この年は阪神淡路大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件、いじめによる自殺など社会を震撼させる様々な出来事が起こった年でした。
【es】リリース前後は「everybody goes~秩序のない現代にドロップキック~」や「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~」と攻撃的で勢いのある曲がリリースされています。
翌年にリリースされたアルバム「深海」は反社会的な内容、重く暗い曲調、後ろ向きなメッセージとこれまでのMr.Childrenの印象とは180度異なる作品となりました。
こういった楽曲が示すように、この頃の桜井和寿は、アイドル的な人気になってしまった音楽面でも、ゴシップ記事などのプライベートな面でも様々な葛藤があったと言われています。
その後1997年にこの【es】が収録されたアルバム「BOLERO」リリースとその後のツアーを経て、Mr.Childrenは活動休止を発表します。
日本社会もMr.Childrenにとっても混沌とした時期にこの【es】~Theme of es~はリリースされています。
【es】Mr.Children in FILM
「Theme of es」=エスのテーマという題名通り、この曲は【es】というMr.Childrenのドキュメンタリー映画のテーマソングとなっています。
この映画は二つのライブツアー映像にロングインタビューを織り交ぜた内容になっており、当時のテレビでは見れないMr.Childrenの魅力が詰まっているものとなっています。
残念ながらVHSのみの販売でDVD化されていませんが、Amazonではまだ取り扱いがありますので再生機器がある方はぜひ!
タイトル「【es】~Theme of es~」の意味
ここではタイトルになっていて、この曲を理解する上で重要な「es」について解説したいと思います。
フロイトによる3つの精神構造
精神分析学の創始者、ジークムント・フロイトの名前は皆さんも聞いたことがあるかもしれません。
フロイトが提唱したものの多くは現在の臨床心理学の基本となったもので、心理学を勉強する人は必ず学ぶものです。
現在の心的外傷やPTSDの概念から、無意識に関する研究も多くされました。
精神的にケアが必要な人を積極的に治療し、様々な治療法も確立したといわれています。
この曲のタイトルはフロイトが提唱した3つの精神構造「自我・エス(イド)・超自我」の中の一つです。
次に詳しく解説してきます。
エス(イド)
「自我・エス(イド)・超自我」という3つの精神構造の1つ。
この曲のタイトル「es」はイドとも呼ばれ、簡単に言うと「無意識」という概念です。
本能のままに行動することを指しています。
また幼少期の抑圧された欲がたまっている場所とも定義されています。
このエス(イド)は後述する自我によってコントロールされています。
自我(エゴ)
自我とはエゴと呼ばれ、日常会話でも浸透していますよね。
あの人は自我が強い、エゴイスト、と言うとネガティブな印象にありますが心理学では全く異なります。
フロイトが提唱した自我とは、エスをコントロールして衝動を抑えたりすることだそう。
「目の前にあるケーキを食べたいけれど、ダイエットのためにやめておこう」
心理学上、この行動は自我が働いていることになります。
超自我
自我に超がつくことで察しがつくかもしれませんが、エス(無意識の衝動)を抑えるだけではなく、道徳的、良心的、模範的であろうとする部分のことです。
「図書館では他の人に迷惑になるから騒がないでおこう」
こういった行動が超自我が働いてることになります。
……少し難しいですか?
「エス・自我・超自我」の並びで左側が動物的本能が強く、右側が理性が強くなります。
この3つのバランスが重要で、どちらか偏って強くなってしまうと精神病傾向にあると言えます。
この曲のタイトル【es】とは、自分の無意識の部分、本能的な部分ということになりますね。