日本国内では歴代興行収入ランキング第4位を記録し、世界でも「千と千尋の神隠し」を越して日本映画史上最高の大ヒットを記録した、新海誠監督作品「君の名は。」。
その劇中音楽を担当し、その名をさらに広めたRADWIMPS。
そんなRADWIMPSが、6枚目のアルバムとしてリリースした「絶体絶命」の収録曲の中から今回は「グラウンドゼロ」と言う楽曲に焦点を当てて紹介していきたいと思います!
6thアルバム「絶体絶命」
まず5枚目のアルバム「アルトコロニーの定理」から約2年ぶり、2011年3月9日にリリースされたアルバムRADWIMPSの「絶体絶命」とは、どんなアルバムなのかと言うところから探っていきたいと思います。
普通、「絶体絶命」とはどうやっても逃げられない状況で心も体も追い詰められた状態のことを指します。
ですが、ボーカル兼ギターを担当しさらにRADWIMPSの全曲を作詞作曲ともに手掛ける野田洋次郎さんの考える「絶体絶命」とはそうではないようです。
では「絶体絶命」と言う言葉に野田洋次郎さんはどのような意味を込められたんでしょうか?
糸色-Itoshiki-の設立
6枚目のアルバム「絶体絶命」のリリースから2日後の2011年3月11日に東北大震災が起こりました。その際、RADWIMPSは糸色-Itoshiki-と言う名前で義援金を募る活動を始めます。
それは、野田洋次郎さんが「絶対絶命」と言うアルバムタイトルに込めた想いでもありました。
絶体の絶を部首と分けて書くと、糸色と書きます。これを野田洋次郎さんは「いとしき」と読みました。
野田洋次郎さんはアルバムタイトルの「絶体絶命」とは「愛しき体、愛しき命」と言う意味だったと話しています。
それは野田洋次郎さんが5枚目のアルバムまでに描いてきた「死生感」や「奇跡」、「命の行く末」と言う命題の集大成でもあったのです。
「グラウンドゼロ」とは
「グラウンドゼロ」とは核兵器の爆心地を指し、核実験の爆撃地を「グラウンドゼロ」と呼ぶそうです。
しかしその悲しい意味と同時にこのタイトルにある「グラウンドゼロ」とは「子宮」と言うもののメタファー表現でもありそうですよね。
生と死は隣りあわせ。
つまり、作詞作曲を手掛けた野田洋次郎さんにとって「グラウンドゼロ」とは命を始められる場所であり、命を無慈悲に終わらせる場所でもあると言う特別な意味が隠されていそうです。
「愛しき体、愛しき命」。野田洋次郎さんがこのアルバムに込めた想いがたった一曲のタイトルからもひしひしと伝わってきます。
この曲にPVはないようです。もしもと考えてみても、想像がつかないですよね。
生きることの不条理さ
立ち止まるなんて無理だよ この星の上に生きてる限り
だって猛スピードでこの星は 僕の体を運んでるんだよ
出典: グラウンドゼロ/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
この楽曲の主人公・僕とは野田洋次郎さん自身のことだとした上で、歌詞を考察していこうと思います。
どうやら野田洋次郎さんは勝手に受けた「生」と言うものに対して嫌悪感を抱いているようです。
それは意図せず生まれ、意図せず訪れる死。意識下の外で流れて行く時間の身勝手さに苛立っているように思えます。
また、自分を年齢的にも進ませてしまい、いつの間にか子供の頃のようには戻れなくなることに対して駄々を捏ねてるようにも見えますよね。
先の見えない今が怖いから、自分で時を止めてしまいたい。
そんな呟きからこの曲は始まります。
「希望」と「絶望」
どれだけ後ろ向きに歩いてみても 未来に
向かってってしまうんだ 希望を持たされてしまうんだ
出典: グラウンドゼロ/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
「希望を持たされる」とはどういう意味なのでしょうか?
それは、周囲からの「期待」や「慰め」と言う言葉に置き換えると紐解きやすくなるのではないでしょうか。
私たちは落ち込んだ時、ずっと落ち込み続けることは難しいのではないかと思います。
もう駄目だ、と思っても家族や周囲の友人が何か言葉をくれたり新たな気持ちを吹き込んでくれたりもしますよね。
それでもう一回頑張ってみようかなと思うけど、結局やっぱり駄目だと落ち込むことを繰り返してしまったりします。
絶望と希望は表裏一体で、生きていく上でそれは逃れられないものなんですよね。
つまり絶望と同じ位希望も生きている内は絶えないもので、希望があるからには絶望が来る。
絶望があるからには希望が来てしまう。それならもう何もいらないのに勝手に寄越しておいて振り回すのはもうやめてくれと野田洋次郎さんは歌っています。
誰との会話?
「ねぇもういいかい?」「いやまだだよ」
「じゃあもういいかい?」「もうしつこいよ」
出典: グラウンドゼロ/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
RADWIMPSの楽曲では度々このような不思議な会話が歌詞の中に見られます。
これは誰と会話をしているのでしょうか?
どうやら会話の内容は命を終わらせていいか?駄目だよと言い合いをしているようです。
では命に関する会話をするような相手って誰なんでしょう?
神様?でも神様にしてはちょっと馴れ馴れしい気がしますよね。
では誰となると、残るは一人。
野田洋次郎さん自身の心ではないでしょうか。