「Don’t Look Back In Anger」という福音
OASIS屈指の名曲
1995年10月2日発表、OASISのセカンド・アルバム「モーニング・グローリー」。
このアルバムに収録されて翌年にシングルカットされた楽曲「Don’t Look Back In Anger」。
世界中でメガヒットしたアルバムの中でも屈指の名曲として讃えられています。
イギリスの名門インディーズ・レーベル「CREATION」の最期の徒花であるOASIS。
彼らの短い活動履歴の中でも特に思い出深い歌になりました。
ボーカルをソングライターのノエル・ギャラガーが務めているのも印象的です。
素朴でぶっきらぼうな歌い口が人々の心を掴みます。
OASISのボーカリスト・リアム・ギャラガーとの兄弟喧嘩も話題になりました。
この曲の意味をすべて汲み取るのはとても難しいことだと知られています。
それでも人々の記憶に長い間染み付いている歴史に遺る1曲です。
なぜ人々はこの歌を歌うのか
2017年、OASISの故郷であるマンチェスターで行われたアリアナ・グランデのコンサート。
このコンサートでの自爆テロは多くの犠牲者を出す凄惨な事件になりました。
テロへの抗議の追悼式で観客が自然に口ずさんだのがこの「Don’t Look Back In Anger」です。
「怒りの感情で過去を振り返ったらいけない」
このフレーズがテロに抗する人々の共感を生みます。
楽曲の発表から20年以上過ぎてもなお人々は自然にこの歌を思い出したのです。
歌の力とは何だろう、音楽にできることはなんだろう、日々をどう生きよう。
何よりも怒りの感情に幽閉されない生活を築いてゆきたい。
私たちはこの歌を口ずさみながらそんなことを考えるのです。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
いい遊び場を探す
もっと思うように生きたい
Slip inside the eye of your mind
Don't you know you might find
A better place to play
出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher
「君の心の眼を奥の方に向けてゆくと
きっと見つけられるはずだって君も分かっているだろう
遊ぶためにはもっといい感じの場所をさ」
ノエル・ギャラガーの無骨な歌声が心に響きます。
決して巧いボーカルではありませんし、OASISのボーカリストはリアム・ギャラガーです。
それでもソングライターのノエル・ギャラガーが歌うからこそ説得力を増す内容になっています。
この曲に登場するのは語り手の僕と友人あるいは兄弟である君。
そして謎の彼女・サリーです。
僕と君は緊張感を持ちつつも親密な関係。
君はリスナーのことでもあるのでしょう。
僕は君に直接語りかけるように歌うのです。
童心に帰ったように遊び場の話をします。
「幼い頃の記憶に眼をやってご覧よ、もっといい遊び場があったよな」
このラインを要約するとこうなります。
遊び場とはいえ大人になってから生きる領域の話になるはずです。
もっと自分の思い通りにできる世界を探そうぜというようなニュアンスを感じることができます。
また、非常に面白いのがここで敢えて「子供」の頃の記憶を引き出して思い出させているところでしょう。
子供の頃の記憶なんて大人になるとついつい忘れてしまい、常識や世間の目などが気になるものです。
しかし、それらは結局一種のペルソナといいますか、後天的に身につけた大人の仮面に過ぎません。
その仮面を外せるような場所。
もっといえば「本来の自分」を出せる場所に帰ろうぜといっているのではないでしょうか。
なぜ君は落ち着いているのだろう
You said that you'd never been
But all the things that you've seen
Are gonna fade away
出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher
「君はこれまで決してなかったといっていたね
でも君が見てきたものすべてが
ゆっくり消え去ってゆくだろうな」
ノエル・ギャラガーの性格ですから君ではなく「お前」くらいの乱雑な訳でも構いません。
頭ごなしに物事を否定してしまう癖がある君に一言いってやるみたいなニュアンスを感じましょう。
理想の遊び場なんてなかったのだという君。
そんなイマジネーションではこれまでの記憶がすべて消え去るよと僕は君に忠告します。
まるで今までの人生が無駄であったかのようです。
消極的な性格の君に僕は少し苛立ちを感じているのかもしれません。
ただ過去を振り返る際の君の冷静な心持ちはすでに歌い出しのこのラインからうかがえるものです。
君のこうした落ち着いた態度が後に大きな意味をもたらします。
先を見ていきましょう。
ここから分かるのは「君」という人間の自己肯定感の低さとそれを励ます主人公の構造ではないでしょうか。
ここから「君」という人間がどれだけ寒々しく暗い人生を送ってきたのかが想像されると同時に、現代社会の心の闇が見えます。
最初のフレーズと併せて考えると、相手の人はおそらく周囲の期待する「君」に合わせて自分を偽っていたのかもしれません。
ベッドからの革命とは何か
ギャラガー兄弟のジョン・レノン愛
So I start a revolution from my bed
Cos you said the brains I have went to my head
出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher